1-03 - こおりのれいじょう -(挿絵あり)
1-03 - こおりのれいじょう -
「わぁぁ!、博士のところにパンツを忘れてきたのです!」
「研究室でお漏らしでもされたのですかお嬢様・・・」
「うん、ちょっとね・・・気にしないで、明日回収してくるから」
それに気付いたのはお夕飯の後、メイドのリディアさんがお風呂の着替えを持って来てくれた時・・・夕方お父様が迎えに来て干してあるのを忘れそのまま帰ってしまったのです。
「お風呂に入って来るのです」
ざぱぁ・・・
「・・・今日も疲れたぁ」
ここはお屋敷のお風呂場・・・元々は使用人達が使う広い共同浴場なのですがこの時間は私たち家族が入ります。
普通の貴族はお部屋の横に浴槽があって、そこで使用人に身体を洗ってもらうのが常識らしいのですが、前世の記憶がある私は幼い頃から断固拒否、だって他人に洗ってもらうのは恥ずかしいのです。
なので私だけ無理を言って共同浴場を使わせて貰っていたのです、でもそれを見た両親が広いお風呂に入る気持ちよさに気付いて真似をするように・・・今では家族全員、自分で身体を洗うようになりました。
使用人用とは言っても大貴族のお屋敷にある浴場なので小規模な室内プールくらいの広さがある大理石っぽい石で出来た豪華なお風呂です。
・・・
・・・
ガチャ・・・
「ひぃ・・・」
「あ・・・お姉ちゃんごめん、入ってるの気付かなかった」
弟のコナンザが入って来ました、最近人前ではお姉様って言うようになったのに2人の時はまだお姉ちゃんか・・・ふふふ、可愛い奴め。
「いいよ、一緒に入ろ、お姉ちゃんが洗ってあげよう」
「・・・うん」
ざぱぁ・・・
ごしごし・・・
「コナンザ、あまり身体おっきくならないね」
「うん」
「ほら前を向いて」
「わぁぁ!・・・前はいいよ!」
「遠慮しないで、ほらほらお姉ちゃんの言う事を聞くのだぁ!」
わきわき・・・
「いやぁぁ!」
ちゃぷ・・・
「うっく・・・ぐすっ・・・」
「何で泣くの、そんなに泣き虫だとお姉ちゃん心配だぞ」
「ごめんなさい・・・」
「こうしてると私達、鏡を見てるみたいにそっくりだね、私は傷だらけだけど・・・」
「・・・お姉ちゃん」
「さて、もう出ようか」
「うん」
ざぱぁ・・・
ふきふき
「ちゃんと髪を乾かして寝るんだよー」
「うん、おやすみなさい、お姉ちゃん」
コナンザの身体を拭きローブを着せた後、私も自分のお部屋に戻ります。
お部屋の姿見の前でローブを脱ぐと鏡に映っているのは10歳くらいの女の子、私は魔力量が多いから普通の人間より成長が遅く寿命が長いのです。
「うん、可愛くない・・・」
色素の薄い肌、白に近い銀髪、青に近い灰色の瞳、血色の悪い薄い唇という見ているだけで寒そうな配色、それから鋭い目つき。
自分でもドン引きするくらい顔が怖いです、顔の造りは美少女といってもいいくらい整ってるのに悪役顔で何もかも台無しなのです。
人見知りで家族以外と殆ど喋らない事が災いして私は貴族達の間で「氷の令嬢」と呼ばれています。
とある事件に巻き込まれて背中の右肩から左の腰にかけてと左足、左腕、左の顔に大きな刀傷、普段は眼帯で隠している片方の目は赤く濁ってほとんど見えていません。
「へくちっ・・・」
くしゃみをしたら鼻水が垂れましたぁ!。
「早く服を着ないと風邪をひいちゃう・・・」
メイドさんが用意してくれた服は子供用のパジャマ、私とお母様が共同で設立したファッションブランド「リーゼ」の人気商品です。
パジャマだけでなく私が普段着ている服や下着は全部お母様の手作りなのです、裁縫や刺繍が得意なお母様は私が考えたデザインを伝えるとすぐに作ってくれます。
お母様のお洋服は屋敷のメイドさん達にとても好評で・・・10歳の時に私はお母様にお洋服を量産して販売するファッションブランドを作ったらどうかな・・・って提案しました。
元々お裁縫が大好きだったお母様は目を輝かせて私の提案に飛び付いたのです、幼い頃からお洋服のお店を持つのが夢だったお母様は貴族の娘としてお父様と結婚し夢は諦めていたのだそう。
私はお母様の背中を押し、お父様にも掛け合って資金を捻出させました。
久しぶりのおねだりにお母様を溺愛するお父様はとても張り切って王都の一等地に大きなお店を購入、洋服を作る工場を郊外に建てさせました・・・うちのお父様は行動力が凄いのです。
そして・・・繊細なデザインと質の良さが貴族や裕福な平民に受け入れられて「リーゼ」は開店早々爆発的な人気になりました。
「リゼたん!、うちの領地に2号店作る事が決まったの!、うふふ、もっともっとお店を増やしてこの大陸中に「リーゼ」を作るの!」
そう言って子供のようにはしゃぐお母様、お店を始める前はあまり笑わない人だったけれど今のお母様はよく笑い生き生きとしています。
・・・この「リーゼ」が僅か2年程でエテルナ大陸にある全ての国に支店を展開する事になるとは、当時10歳だった私には予想もしてなかったのです。
「さて、もう遅いし寝ましょうか・・・」
私がベッドに入ろうとしていると・・・。
コンコン・・・
お部屋の扉を誰かがノックしています。
ガチャ・・・
扉を開けると泣いているコナンザが立っていました。
「・・・お姉ちゃん・・・ぐすっ・・・」
「どうしたのコナンザ・・・早く寝ないと明日また寝坊するよ」
「怖い夢を見たの・・・」
「仕方ないなぁ・・・じゃぁ一緒に寝ようか」
「うん・・・」
・・・
「お姉ちゃん、ぎゅってして・・・」
「はいはい」
ぎゅぅ・・・
「んぅ・・・お姉ちゃん、いい匂い」
「んふふ、コナンザは可愛いなぁ」
・・・
「おやすみコナンザ・・・」
「おやすみなさい、お姉ちゃん」
「明日は忘れずに博士のところに行ってパンツを回収しなきゃ・・・」
「・・・え?、パンツ?」
「何でもないよ!」
リーゼロッテさん(事件前)
リーゼロッテさん(事件後)
リーゼロッテさん(事件後+眼帯)
読んでいただきありがとうございます!。
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