2-08 - ぼくのはなしをきいてくれ! -
2-08 - ぼくのはなしをきいてくれ! -
こんにちは、拙者の名は田中太郎でござる。
理世たんが魔法陣から出てきて7日が経った。
今日もまた魔法陣から出てきた理世たんはこちらの水質検査の結果を眺めて・・・。
「同じかぁ・・・ちょっとつまんないなぁ」
などと不穏な事を呟いた後、今は拙者がおすすめしたアニメをネットフリフリで見ているでござる。
理世たんはあれから家族旅行で行った事のある山の展望台に異世界から持ち込んだ水の入った器を置いてきたでござる。
拙者は言われた通り水質検査を専門にやっている会社を調べてその水を検査するよう依頼したのでござるが意外にもあっさりと引き受けてくれた。
結果は特に異常のない普通の水で不純物も無いそうでござった、向こうの水はこちらと同じようでござるな。
ただ・・・何故か水が入っていた器についてしつこく聞かれたでござる!。
それにしても検査会社の人には悪いことをしたでござる、一歩間違えたら髪の毛が全部抜けたり肌が焼け爛れるところでござったのに・・・この秘密は拙者が墓場まで持って行くでござるよ、すまぬ担当の鈴木氏!。
「あははー、おもしろーい!」
ネットフリフリを見終わった娘が叫んでいるでござる、聞くところによると向こうの世界は娯楽が本か演劇くらいしか無いそうでゲーム好きの理世たんには退屈だったようでござる。
「ところでお父さん」
「なんでござろう」
「次はいよいよ有機物だねー、何が起きるかなぁー」
娘が危ない科学者みたいな恐ろしい事を満面の笑顔で言ってきたでござる!。
「今度は穀物や果物みたいなのを3種類くらい、あと普通の人間の血と他の生き物の血を送ろうと思うの、どこかにDNA検査や血液分析してくれるところ知らないかなぁ、やばい結果が出ても他に漏らさないところが望ましい」
また無茶な事を言ってきたでござるな・・・。
「その前に地球の食べ物を送ってもらおうかなぁ、まずはリンゴかオレンジみたいなのある?、それをアルコールで消毒してもらって、魔法陣の上に置いて欲しい」
「それは理世たんの住んでる世界が危ないのではござらんか?」
「いい加減面倒くさくなったの!、地球の食べ物をこっちの無人島にでも転送して、そこでまず動物に食べてもらうでしょ、5日くらい様子見て次は奴隷借りてきてそいつに食べさせる、死ななかったらオッケーって感じかな」
今度は人権団体が大騒ぎしそうな事を言い始めたでござる!。
「向こうには奴隷もいるのでござるか?」
「居るよー、でも子供の頃からやっちゃダメって教わってるのに凶悪犯罪を4回もやらかした連中だから全然問題ないよ、3回までは許してもらってたし次やったら奴隷になるの分かっててまた人殺しや強盗した連中だから」
「・・・なら問題ないでござるな」
あれ、拙者も娘に影響されてきてるでござるかな。
「親父!、ちょっと!」
隣の部屋から顔を出して息子の龍之介が呼んでいる、今の理世たんとの話を聞いていたようでござるが・・・何でござろうか?。
娘は座敷で「龍之介ー、私に内緒で何喋ってるのー」などと叫んでるでござる。
「親父、血液検査の件はちょっと心当たりがあるから2〜3日待ってくれ、そのかわり交換条件でお姉ちゃんには・・・」
「・・・それはいい考えでござるな」
拙者は娘の居る座敷に戻って言ったでござる。
「血液検査の件、龍之介に心当たりがあるらしいでござるよ」
はじめまして、僕の名前は田中龍之介。
ここからは僕が親父に代わって話そう。
お姉ちゃんと話した翌日、僕はお祖父ちゃんのジャズ喫茶に集まった所属バンド・・・ケイオスDGのメンバー3人に言った。
「急に集まってもらって悪かった・・・姉の葬式にも来てくれてありがとう、今日は少し話があるんだ」
ずずー・・・
「本当になんて言ったらいいか・・・龍之介さん大丈夫?」
アイスコーヒーを飲みながらベース担当の犬飼苺が言った。
・・・
「龍之介君、あまり面識はなかったがお姉さんの件は気の毒だったな、あんな酷い殺され方を・・・・くそ!・・・すまん、また涙が!」
クリームソーダを飲みながらドラム担当の犬飼十真斗が言った。
もっもっ・・・
「・・・理世姉ちゃん・・・うぉぉぉ!」
アイスを食いながら幼馴染でギターの山田敬雄が叫んだ、ちなみにこいつはお姉ちゃんと面識がある・・・というか僕たち姉弟とは幼少期からの付き合いだ。
そんな3人の様子を見ながら僕はできる限りの笑顔で言った。
「みんな驚かないで聞いてくれ、お姉ちゃんが生まれ変わって帰ってきたんだよ!」
「ごふぅ!、げふっ!、えふっ!・・・龍之介さん?」
犬飼苺がコーヒーを鼻から吹き出して咽せた。
「・・・」
犬飼十真斗が口に含んだクリームソーダをだばぁー・・・と垂らして呆然としている。
「・・・龍ちゃん、辛いのは分かるが宗教はダメだぞ、やめておけ、親友として俺にできる事があれば何でも言ってくれ」
アイスを食うのを止めた山田敬雄が真面目な顔をして僕に言った。
ちょっと待て・・・何か誤解されてるようだ!。
「いや違うんだ、異世界で生まれ変わって魔法陣を使ってうちの座敷に・・・」
がたっ!
「苺、タクシー呼べ!、叔父貴の病院に連れて行く!」
犬飼十真斗が立ち上がって言った。
「うんっ!」
犬飼苺がポケットからスマホを取り出してどこかに連絡している。
「龍之介君!、俺の親戚に腕のいい精神科医が居る、今から行こう!、心配しないで俺に任せておけ、酷くなる前に気付いて良かった、さぁ行こう!」
犬飼十真斗が遠慮がちに僕の右腕を掴んだ。
がしっ!
「すまん龍ちゃん!、気付いてやれなかった!、俺は親友失格だ!、お前・・・そんなになるまで・・・畜生ぉ!」
山田敬雄が逃げられないように僕の左腕を掴んで言った。
「いや待て!、違うんだ!、僕はおかしくなってない!」
「みんな最初はおかしくないって言うんだよ、でも落ち着いて聞いてくれ、治療は早ければ早いほど良い、病院に行って俺の叔父貴に悩んでる事を全部話せば少しは楽になるだろう」
犬飼十真斗が僕の肩を掴んで優しく言った。
・・・(ニコッ)
犬飼苺が生暖かい笑顔で何度も頷いている・・・。
「頼む!、僕の話を聞いてくれ!」
読んでいただきありがとうございます!。
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