2-03 - ひさしぶりだね! -
2-03 - ひさしぶりだね! -
こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン15歳です。
ここは私のお家の地下にある研究室・・・周りには大きな魔道具が置かれていてその中央には魔法陣が描かれています。
これを組み上げるのに半年かかったのです!。
「なるほど考えたな・・・生身の身体を転移させるんじゃなくて幻影を送るのか?」
魔道具同士を繋いでいる太いケーブルを触りながら博士が興味深そうに周囲を眺めています。
「魔導ラディーオが大成功したから次は音声だけじゃなくて映像の送受信を考えてたの、これはその設計をしてる時に閃いたのです!」
「水晶で映した物をここに送って・・・こいつで魔素に変換か?、それから・・・光を背にして白い壁に復元、よく出来てるな!」
「博士ぇ、凄いのです、この設備を見ただけで分かるんだ?」
「嬢ちゃんの設計思想は魔導ラディーオ開発の時に詳しく説明して貰ったからな・・・復元した映像をニホンに転移魔法陣を使って送れば・・・」
「そう!、向こうで私の姿が見えるようになるの!」
「音声は魔導ラディーオの機構そのままか?」
「うん、そうだよ、向こうの声は魔道具を使わずに魔法陣だけで拾えるようにしたの」
「これだけの物を一人で構築するのは大変だっただろ、俺の設計理論とはまるで違うから手伝えって言われても無理だっただろうがな・・・」
「博士は最近忙しそうだったから邪魔したら悪いかなって・・・」
そう、私が博士に弟子入りしてからちょうど7年、今から半年前に私と博士が一緒に作り上げた空間転移魔法陣が遂に完成したのです!。
時間を遡る時空転移魔法陣も同時に完成していたのですが危険だと国王陛下が判断してこちらの技術的な内容は非公開に・・・。
それでも空間転移の魔法陣が公表された時には大陸中が大騒ぎになったのです!。
最初は皆半信半疑でした、でも王城にある玉座の間で陛下や大臣達が見守る中、博士が魔法陣を描き私がお城の外から転移して来ると悲鳴にも似た歓声が響き渡りました。
陛下はすぐにこの偉業を大陸の国々に公表、不可能と思われていた転移魔法がローゼリア王国で開発された事実は全世界を震撼させたのです!。
博士は狂人から一転、天才魔導士と呼ばれるようになり、共同開発者の私の名前も公開されました。
一躍時の人となった博士は最近まで魔導士学会や式典に呼ばれて大忙しだったのです。
この半年間、私は博士のお手伝いをしつつ日本への帰還計画を練っていました、もちろん博士にも私の計画を伝えています。
空間転移魔法陣は術者が「行った事のある場所」に転移する魔法、それなら私が前世で生活していた日本にも行けるんじゃないかと思ったのです。
実は魔法陣の完成直後、私が日本へ行こうとしていたら博士に止められました。
「待て嬢ちゃん!、ニホンは本当にここと同じ環境なのか?、直接行くのは危険だぞ」
「空気があって水もあるから同じじゃないの?」
「その空気と水が同じなのかって話だ」
「前世で私が読んでた異世界漫画や小説の主人公は自由に行き来してたけど・・・」
「言ってる意味が分からん!、とにかく落ち着いて慎重になれ、向こうに転移した瞬間身体が溶けたり燃えたりするのは嫌だろう?」
「じゃぁ私は日本に行けないのです?・・・」
フルフル・・・
「泣くな、ちゃんと検証して同じかどうか、生身で行っても安全か確かめろ」
「検証?、向こうのものをこっちに持ってきて調べればいいの?」
「向こうにある未知のやばい病気がこっちに入ってきたら大惨事だぞ」
「じゃぁどうするのです?」
「時間をかけて検証するしかないだろう、俺は今忙しいが落ち着いたら相談に乗ってやるから少し待て」
「・・・うん」
「勝手に一人で行くんじゃないぞ」
「・・・うん」
「分かってるだろうが前世で死ぬ運命を変えるんじゃないぞ、歴史が変わってこっちの世界にも影響が出る」
「・・・うん」
こうして私は一人で日本と接触する魔道具を構築し始めました。
「こっちの「物質」を向こうに送るのは危険・・・それなら実体の無い魔素で構成されてる魔法陣を送って私の声と姿を・・・」
「声だけだとお父さん達が驚くかも?「心霊現象!」ってなったら困るし」
「声は実績のある魔導ラディーオを使えばいいとして・・・姿はどうしよう、テレビの原理なんてよく知らないよ」
設計に30日、実験で70日、機材を買って構築するのに100日かけてようやく試作の魔道具が完成、今日博士をお家に呼んで見て貰ったのです。
・・・
「いいんじゃないか、これで向こうの人間と会話出来るから先に石ころでも送って様子を見るか?」
「石ころ1つで向こうの世界滅びないよね?」
「・・・」
「いや何か言ってよ!」
「聖女に知り合いが居るからそいつに頼んで徹底的に浄化させるか?、病原体や異物は浄化で対応出来るだろ」
「博士ぇ、聖女様に知り合い居るの?」
「おぅ、色々と役に立つ奴だから今度紹介してやろう」
「やっと日本に帰れるんだぁ、長かったのです・・・」
「そうだな・・・だがいい思い出だ、試作段階の転移魔法陣は傑作だったよな」
博士が遠い目をして言いました。
試作転移魔法陣・・・あれは大失敗だったのです!。
「博士ぇ!、あれは私まだ怒ってるのです!、研究所の皆に裸を見られたの・・・」
そう、あれは1年前・・・転移魔法陣が殆ど完成してあとは生き物で実験しようとした時の事・・・。
・・・
・・・
「小動物は大丈夫だったから次はいよいよ人間だな」
「うん、私が転移してみようか?」
「いや、まだ危険だから明日奴隷を借りて来よう」
翌日博士はムキムキマッチョな奴隷さんを連れて来ました。
「やるぞ」
「うん」
ぱあっ!
しゅっ
とすっ!
少し離れた場所に魔法陣が輝き、マッチョ奴隷さんは問題なく転移しました。
「やった、成功だ!」
「おめでとう博士ぇ!」
「嬢ちゃんが協力してくれたから完成出来た、ありがとうよ!」
がしっ!
試作転移魔法陣が完成して、私と博士は抱き合って号泣しました。
・・・事件はその翌日起きたのです。
ざわざわ・・・
わいわい・・・
「何だろうな?、研究所員を中庭なんかに呼び出して」
「所長がまた何かやるんだろ」
「まさか転移魔法陣が完成したのか?」
「ありえねぇだろ、ってかまだ諦めてないのかよ」
「皆、忙しいところ集まって貰ってありがとう、これを見てくれ!」
ぱあっ!
「おい、何だよあの魔法陣、凄ぇ大規模で複雑だぞ」
ぴしっ・・・ぴしぴしっ・・・じじじじ・・・
ごごごご・・・
ぺかぁ!
「うわ眩しっ!」
しゅたっ!
「ようやく転移魔法陣が完成したのだっ!・・・あれ?」
「え・・・わぁぁ!、何で私全裸なの!」
ざわざわ・・・
「おい、所長が弟子を裸に剥いてるぞ!」
「俺はいつかやると思ってた・・・」
「衛兵呼んだ方がいいか?」
「ってか、今何も無いところから突然現れたぜ!」
「転移魔法陣って言ってたな・・・まさか本当に完成したのかよ!」
「だが転移したら全裸になるんだろ、いくら便利でも俺はやりたくねぇ!」
「ぐすっ・・・博士ぇ!、酷いのです!」
・・・
・・・
「なるほど、服は転移対象物と認識しないのか・・・改善が必要だな」
「・・・」
「小動物や奴隷は問題なかったから油断した、奴隷は全裸が基本だからな!」
「・・・」
「嬢ちゃんすまなかった、機嫌直してくれ・・・」
「ぐすっ・・・全裸で転移なんて私はターミネーターじゃないのです!」
「たぁみ・・・何だって?」
「何でもないのです!」
こうして博士のうっかりミスで私は研究所の皆に全裸を披露してしまったのです!。
・・・
「魔道具起動!、空間転移魔法陣準備完了っ!」
私は魔道具にぐるりと囲まれた魔法陣の上に立ち、魔道具に魔力を流しました、博士は研究室の隅で私の様子を見守っています。
いよいよ日本に私の映像を送るのです!、家に誰か居るといいな・・・。
ぱっ!
正面にある壁に私の前世のお家が映し出されて・・・。
「え・・・何で廃墟?」
映し出されたのは崩れかけた壁と朽ちた畳、どうやら私の実家の居間っぽいのですが完全に廃墟でした。
「時代設定はどうなってるんだ?」
「こっちの時間と同じ、向こうの時間経過は分からないよ」
「空間転移魔法陣に時空転移を組み合わせて嬢ちゃんが死んだすぐ後に戻ってみるか?」
「うん、そうする」
私は空間転移魔法陣に時空転移魔法陣を重ねます、時代設定は・・・向こうの時間の流れが分からないし余裕を見て私が死んだ3日後くらいにしましょう。
ぱあっ!
「あ、お父さんだ、一人で泣いてたみたい・・・」
「成功だな」
「うん、じゃぁ今度は私の姿を向こうへ投影するね」
ぱあっ!
「声は聞こえてるかな・・・おーい、お父さーん!・・・反応ないし!」
「ゴーストだと思ってるんじゃないのか?」
「お父さーん、幽霊じゃないよ!、私の声が聞こえたら返事してー」
「・・・反応ないな」
・・・
「あははー、私バカだ、日本語で喋らなきゃ通じないよね・・・」
私は呆然としているお父さんの目を見て笑顔で話しかけました。
「久しぶりだね!、お父さん!」
読んでいただきありがとうございます!。
面白いと思った人は下のお星さまやいいねをポチリと押してもらえると作者が喜びます・・・。




