1-12 - せばすちゃん -
1-12 - せばすちゃん -
こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン12歳です。
今日は博士の所で魔術じゃなくて一般教養のお勉強です・・・私は魔法ばかり勉強してたから一般教科が遅れているのです。
博士も専門じゃないから適当だけど、学校に行ってる子が使っている教科書を読み分からない箇所を質問しながら進めています。
「えと・・・この大陸の住民は、全員生まれてすぐに役場に行って瞳水晶に手を当て・・・一人一人異なる魔紋を国に登録、それと同時に、「慈悲の3つ星」と言われる星を割り当てられる・・・」
「そうだな、瞳水晶を使って国籍や住民登録を一括でやってくれる便利な仕組みだ、この星の意味は知ってるか?」
作業机に向かって怪しい魔道具を組み立てながら博士が私に説明してくれます、ちなみに瞳水晶というのは大昔に建国の大魔導士様が開発し国が量産している謎の魔導具です。
「うん、お父様から教わったの、重大な罪を犯すと星が1個ずつ減って、3回目で全部無くなるの、無くなった状態で更に犯罪を重ねると奴隷落ち?」
「そうだな、あれは役場で水晶に手を翳すと星の数が派手に表示されるから犯罪歴があるとすぐにバレる」
「博士ぇ、重大な犯罪って言うけど線引きはどうやってるのです?」
「その辺は法律家になる奴が詳しく勉強するやつだな、待ってろ」
博士が椅子から立ち上がり書棚の奥にある古い本を出して来ました。
「刑事罰の種類を書いてる本だ、これを読んでおけ」
「うん」
「単なる喧嘩・・・人を殴ったり怪我をさせたくらいじゃ星は減らない、もちろん訴えられて裁判で負けると治療費や慰謝料、罰金は取られるがな」
「・・・」
「軽犯罪を10回繰り返して有罪になると重犯罪1回と見做されて星が1個減る、正当防衛や決闘を除く殺人は状況にもよるが殆どの場合星が減る、もちろん強盗や強姦も減るぞ」
「正当防衛って?、盗賊に襲われて返り討ちとか?」
「相手が犯罪者の場合は殺人に数えられない、討伐依頼が出てる奴や指名手配されてるなら逆に報奨金が出る」
「命が軽いなぁ・・・」
でもこの大陸は奴隷落ちする恐怖で住民を脅してるから治安がとても良いのです。
「奴隷になると首輪を嵌められて魔力が使えなくなるし一度奴隷になると平民に戻る事は無い、奴隷は見た事あるよな」
「子供は10歳になるまでに一度は奴隷見学があるよね、その時に商会で力仕事させられてるの見たよ」
「人間扱いされてないしあれを見たら誰だって奴隷になりたくないと思うだろ、ちなみに重犯罪を4回重ねる前・・・星が3つ無くなった時点で奴隷の首輪は装着できる、一般人にはあまり知られてないが魔導具師の間では常識だから覚えておけ」
「あの首輪は外れないの?」
「一度嵌めたら外れないようになってる、古代遺跡から出土した首輪を元に建国の大魔導士が改造を施して量産出来るようにしたらしい、付けられた人間の魔力と強く結び付くから無理に外しても首輪を身体から離した瞬間死ぬようになってるな」
「わぁ・・・」
「さて、出生届と役場での手続きはこれくらい覚えていれば良いだろ、分からなければ役場で聞いたらその都度教えてくれる」
「うん」
「明日は俺の研究を手伝ってもらうとして、明後日は休んでもいいし、ここに来たらハンターギルドや商用ギルドの事について教えてやろう、これもギルドに行って聞けば済む事だから完璧に覚えなくてもいいぞ」
「別に休まなくていいよ、ありがとう博士、じゃぁまた明日」
「あぁ・・・お疲れ」
そしてまた博士は作業机に向かって魔導具を組み立て始めました、私は勉強道具を片付けてお父様が迎えに来たらそのままお家に帰ります。
・・・
コンコン・・・がちゃ
「リゼたん、帰るよー」
「あ、お父様!、ちょうど終わった所だよ」
・・・
「おかえりなさいませ旦那様、お嬢様」
お屋敷に帰るといつものようにセバスチャンさんが出迎えてくれました。
「あぁ、戻ったよ」
「ただいまなのです!」
・・・
とてとて・・・
ガチャ・・・バタン・・・
「・・・疲れたのです」
「お疲れ様ですお嬢様」
「ぴゃぁ!」
お部屋に戻った私の背後にいつの間にかセバスチャンさんが居て、とてもいい声で話しかけてきました!。
セバスチャンさんは私が「じぃじ」と呼んで懐いていた初老の執事さんの息子で、代々うちに執事として仕えてくれている下級貴族アッツーシー家の長男です。
「急に後ろから現れないで欲しいのです!」
「・・・」
いや何か言ってよ!。
笑顔だけど目が笑ってないから見つめられると怖いのです!。
この前は寝起きでおしっこに行きたくなっている時に突然声をかけられたからびっくりして・・・お漏らしをしてしまったのです!。
寝起きを襲うとは卑怯なのです!、気配を消して後ろに立たないでって何度も言ってるのに!。
それに・・・私がお着替えしてる時も扉に鍵をかけている筈なのにいつの間にか背後に居て・・・。
「よくお似合いですお嬢様」
などと言って私を脅かすのです!。
ある日我慢の限界を超えてお父様に文句を言いました。
「あの執事長さん怖い、鍵をかけても私のお部屋の中に入ってくるの・・・」
「大丈夫、彼は無害だから居ても気にしないでいいよ」
「お着替えを見られたら気にするのです!」
「リゼたんのお着替えやお風呂ならマリアンヌとコナンザも一緒に覗いてるじゃないか」
お父様がとんでもない事を言いました!、私のお着替えは見せ物じゃないのです、それに・・・。
「何でお父様がそんな事知ってるのです?」
執事長さんが怖いのはそれだけじゃないのです、彼のプライベートなお部屋は地下にあってそこで寝起きしています。
いつも寝起きに驚かされるから一度くらいは驚かせてやろうと早朝に執事長さんのお部屋に行ったら・・・お部屋に棺桶が置いてあってそこから出てきたのです!。
ギィ・・・
「おや、おはようございますお嬢様 (ニコッ)」
「ひぃ・・・」
怖かったのです!、漏らさなかった私を褒めて欲しいです!。
私は身の危険を感じて再びお父様に文句を言いました。
「あの執事長さん変だよ、棺桶から出てきたし・・・油断してると血を吸われそう」
「ははは、彼は朝に弱いんだよ、気にしないでいいよ」
・・・仕方ないのです、でもいつか私が正体を暴いて灰にしてやるのです!。
前の執事長だったじぃじは健康そうに見えたのに持病の痔が悪化したらしく、田舎の領地で狩りや釣りをして余生を過ごすと言って執事のお仕事を辞めてしまいました。
じぃじにはとても可愛がって貰っていて、私は昔から薬草や調薬について教わっていました、じぃじがこのお屋敷を後にする少し前に・・・。
「お嬢様はとても優秀でいらっしゃるのでじぃじが教える事はもう何もありません、この本を差し上げましょう、ここに我が一族が長い時間をかけて編み出した暗殺・・・いえ調薬技術の全てが書かれています、どうか大切にしてくださいね」
と言って一冊の大きな本をくれたのです。
本の中には今まで教えてもらった薬草の知識やお薬を作る手順が詳しく書かれていました、一族という事はじぃじの息子であるセバスチャンさんにも貰った事を言っておかなきゃ・・・と思ってこの本を見せたのです。
「私は調薬や毒についての才能が無いようで暗器を使う方が得意なのですよ、一族の知識は弟が全て受け継いでおります、この本は写しですのでお嬢様が保管下さい」
「よく分からないのですが、私が持っていてもいいのです?」
「はい、今まで一度も一族以外に伝えていない秘術も入っております、親父殿はよほどお嬢様が大切なのでしょうね・・・危険な内容もありますのでどうかこの本は他の人間に見せない様お願いします」
などと訳の分からない事を言われたのです・・・。
コンコン・・・
「お嬢様、お夕食の準備が出来ました」
セバスチャンさんが呼びに来てくれました。
「はーい、お腹すいたぁ、今日の夕食は何かなー」
読んでいただきありがとうございます!。
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