1-11 - わたしのせいだ !-
1-11 - わたしのせいだ !-
「では私はこれで・・・」
「うん、トリエラさんいつもありがとう、お疲れ様」
「いえ、姫様をお守りするのが仕事ですので」
バタン・・・
「ふぅ、リゼちゃんとのお茶会楽しかったなぁ・・・あのクソ野郎のせいで憂鬱だった気分が少し晴れたかも」
こんにちは、リィンフェルド・フェリス・ローゼリア 13歳です。
今日の午後から始めたお茶会が終わった後もリゼちゃんとは私の部屋で楽しくお喋りをしていました。
夕方になってリゼちゃんが帰り、夕食と入浴を済ませた今の私は完全な自由時間、あとは眠るだけです。
ベッドに横になった私はリゼちゃんとお友達になってからの事を思い返しています。
リゼちゃんは馬鹿でダメダメな私を励まし叱ってくれる唯一のお友達・・・私はリゼちゃんに一生かかっても返せない恩があるのです。
それは私がわがままを言わなければ起きなかった事件・・・「呪いの刃」でリゼちゃんが重傷を負ったのは私のせいなのです。
始まりはヴィンスお兄様の為の夜会で襲撃が起きた2年前に遡ります。
ヴィンスお兄様の婚約者を選ぶ目的の夜会だから両親やマナサマーお兄様も最初の挨拶に顔を出す程度、私は特に参加しなくてもいいと言われていたのでその時間は自室でお菓子を食べながら本を読んでいました。
「リゼちゃんは今日一人で参加かなぁ?、寂しがってないといいけど・・・」
「心配でしたら少しだけ様子を見てきます?」
後ろで立っていた専属護衛のトリエラさんが私に言いました。
「私が参加してあげたら喜ぶだろうけど、あの子も私の他にお友達を作らなきゃ・・・今回はリゼちゃん一人で頑張ってもらいましょう!」
「姫様が参加されないのは群がって来る貴族令嬢や令息を相手するのが面倒臭いからでは?」
「ふふっ、それもあるかもしれないねー」
・・・ざわざわっ!
夜会も半分終わった頃、廊下が突然騒がしくなりました。
「何かあったのかな?」
私はトリエラさんに話しかけます。
「さぁ?、確かに騒がしいですね、ちょっと見てきましょうか」
コンコンッ!
「はぁい、どうぞー」
バタン!
そんな会話をしているともう一人の専属護衛騎士、ムッツリーノさんが顔色を変えてお部屋に入ってきました。
「姫様!、夜会で襲撃がありました!、まだ刺客が城内に潜んでいるかもしれません!、部屋から出ないでください!」
「え・・・リゼちゃんは?」
最初に思ったのは参加している筈のリゼちゃんの事でした、私はムッツリーノさんに尋ねます。
「私も襲撃があって怪我人が大勢出ているとの報告しか受けておりません、姫様の安全を確保する為に情報が入ってすぐこちらに参りました」
「それじゃぁ、リゼちゃんが怪我をしてるかもしれないの?」
私がお部屋を出て夜会の会場に向かおうとしたらムッツリーノさんに止められました。
「絶対にダメです!、部屋にお戻りください!」
「でも・・・あの怖がりなリゼちゃんが怪我をして泣いてるかもしれないんだよ!」
「姫様ダメですっ!」
トリエラさんにも止められました!。
ささっ!
だっ!
「姫様っ!」
私は2人の隙をついて廊下に駆け出しました・・・ムッツリーノさんが慌てて私を追いかけてきます。
・・・これが私の1つ目の「過ち」です、後に私はこの馬鹿な行動を一生後悔する事になります。
「はぁ・・・はぁ・・・」
・・・
「・・・っ!」
全力疾走して到着した会場は酷い状態でした、血を流して大勢の子供達が泣いています、そして大人達や騎士さんも何人か倒れていて動きません。
刺客・・・でしょうか、黒い服を着た人達が首を斬られて死んでいます。
「嫌ぁぁぁ!」
初めて人が死んでいるところを見た私は叫び声をあげて倒れてしまいました。
目が覚めると私はお部屋のベッドに寝かされていました、隣にはお母様が居て心配そうに私を見ています。
「・・・ごめんなさい」
お母様は何も言わずに頭を撫でてくれました。
後で分かったのですがリゼちゃんは夜会を欠席していて無事だったようです。
全部私の思い込みで起きた空回り、ムッツリーノさんの言う事を聞いてお部屋で大人しくしていればよかったのです、私って何でこんなに馬鹿なんだろう・・・。
次の日から私は怖くてお部屋の外に出られなくなりました。
夜眠る時目を閉じると血まみれの光景が浮かんできます、お部屋の隅の暗いところやベッドの下、廊下の向こうが怖いでのす。
これが2つ目の私の「過ち」です・・・。
事件から10日が過ぎ、亡くなった人達の追悼式も終わった頃、部屋に閉じこもっている私を心配してリゼちゃんがお見舞いに来てくれました。
私は嬉しくて、リゼちゃんとお部屋で沢山お話をしました。
ずっとお部屋に閉じ篭っていたけれどリゼちゃんと一緒なら怖くない、たまにはお庭でお茶でもしようと思ってメイドさんに準備をお願いしました。
「まだ外は騒がしいから今日はお部屋でお話ししない?」
リゼちゃんは確かにそう言いました、でも私は久しぶりに外の空気が吸いたくなったのです。
・・・これが3つ目の私の「過ち」です。
実は2日ほど前から騎士達の独身寮で食中毒が発生していて大勢の若い騎士さんがお休みしていたのです。
トリエラさんも被害に遭って、前日は「姫様、下痢がやばいです」と言いながら真っ青な顔で頻繁に席を外していたのですが今日になって遂に寝込んでしまいました。
リゼちゃんは男の人が苦手なのでこの日は不慣れな女性騎士さんが交代で警護してくれていたのです・・・でもこの食中毒事件も犯人側に仕組まれていたらしいのです。
ちょうど時間を告げる鐘が鳴っていた時、女性騎士さんが交代の引き継ぎをしていました。
普通ならもう一人私の側に居てくれるのですが例の食中毒で人数が少ない事もあって誰もいませんでした。
「リィンちゃん!」
楽しく私とお話ししていたリゼちゃんが突然私に抱きついてきたのです。
「ぐっ・・・・」
「きゃぁぁ!」
私の後ろに刃物を持った男の人が居ました、叫び声を聞いて交代していた騎士さんが駆け寄ってきます。
リゼちゃんは私をテーブルの下に押し込み、自分の身体を盾にして刃物を防いでくれています。
男の人が怖い筈なのにどうして・・・白いワンピースを着たリゼちゃんの背中が血で真っ赤になっていました。
怖くなってテーブルの外に出ようとする私をリゼちゃんが押さえ付けます。
「ダメ!、リィンちゃん出てこないで!」
リゼちゃんは刃物で斬られて顔の左半分が血で赤く染まっていました、それでも私を庇って覆い被さるように抱き付いています。
ざくっ!、ざくっ!
「わぁぁん!、痛いよぉ!」
まだ刺され続けているのか、何かを突き刺す嫌な音とリゼちゃんの泣き声が聞こえて・・・。
ざしゅっ!
「ぐぁぁぁ!」
ようやく到着した騎士さんが2人がかりで抵抗する犯人を斬り付けました。
どさっ・・・
「姫様!、大丈夫ですか!」
私がテーブルから出るとリゼちゃんが急に苦しみ始めます。
「ぎゃぁぁぁ!、痛ぁい!」
血まみれで転げ回るリゼちゃんを見た私は・・・意識を失いました。
・・・
あれから数日が経ち、私はまだ自室に閉じ篭って泣いています。
リゼちゃんは衰弱しながら死んでいくと言われている「呪いの刃」で斬られたそうです。
少し傷付けられただけでも発狂する人が居るくらい激しい痛みが続く呪いは対処方法がまだ見つかっていません。
毎晩怖い夢を見ます、顔半分を真っ赤な血で染めたリゼちゃんが私の前にやって来て・・・。
「見て、リィンちゃん・・・私、こんな顔になっちゃった、痛いの・・・リィンちゃんのせいで・・・」
・・・そう呟くのです。
「私のせいだ・・・私が馬鹿だから、お部屋にひき篭ってたから・・・お庭でお茶しようって言ったから・・・」
・・・
事件から40日が経ちました、私はまだお部屋に引きこもっています。
コンコン・・・
「はい・・・」
お部屋の扉がノックされました、トリエラさんがお食事を持ってきてくれたのかな?、そう思って返事をすると・・・。
ギィ・・・
足音と、コツン、コツンと床を叩く音・・・私がお布団を被って丸まっているベッドの前で音が止まりました。
「だーれだ?」
誰かに抱きつかれましたぁ!、ふわりと漂う爽やかな柑橘系の香りがします、この香りは・・・。
「・・・リゼちゃん?」
私はお布団から顔を出しました。
「リィンちゃん久しぶりっ!、どうしたのお布団に丸まって?」
左目に眼帯をしたリゼちゃんが微笑みながら私の顔を覗き込んでいました、眼帯で隠せない左の頬には赤黒い傷が・・・。
「わぁぁぁん!、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
また私はお布団に丸まります。
「私の顔怖いよねー、前から悪人顔だったけど傷が付いて余計に凄みが出たみたいなんだぁ、リィンちゃんが怖いなら次は紙袋を頭から被って来るね!」
私はお布団から飛び出してリゼちゃんに抱きつきました!。
がんっ!
「ぐぇふっ!」
私が抱きついた勢いでリゼちゃんが倒れ後頭部を強打しました、床を転げ回って痛そうです。
ごろごろっ・・・
「ぎゃぁぁ、痛いのです!、いきなり何するの!、リィンちゃんみたいに馬鹿になったらどうするのです!」
いつの間に私のお部屋に集まったのか、お父様、お母様、マナサマーお兄様が居て私達を生暖かい目で見ています。
私は涙が止まらなくて・・・仕方ないからまた明日来るねと言ってリゼちゃんはお部屋を出て行きました。
リゼちゃんが居なくなって・・・ようやく泣き止んだ私はお母様に不安を打ち明けました。
「私のせいでリゼちゃんがこんな事になって・・・許して貰えるかな?」
「リゼちゃんは凄く貴女の事を心配していましたよ、今日もお話しして元気になって貰うんだって張り切ってたのに・・・」
「・・・」
お父様の話だとリゼちゃんは本当に死にかけたらしいです、っていうか普通なら間違いなく死んでいた筈の重傷・・・。
でもリゼちゃんは普通の人に比べて魔力量が凄くあるから助かったし、他の被害者の治療に役立つ論文まで発表して高く評価されたそうです。
「私が引きこもってる間にリゼちゃんがそんな事をしてたなんて・・・」
横で話を聞いていたお父様が深刻そうなお顔で私に言いました。
「リィンたんに相談なのだが・・・」
国としては今回のリゼちゃんの偉業に対し爵位を与える必要があるようです。
「リゼちゃんが開発した「魔導ラディーオ」の時には嫌がって受け取らなかったと思うけど・・・」
「優れた魔道具の開発だけでも叙爵に値する、それに加えて今回は王女の命を救い価値ある論文の発表だ、どうしても受け取って貰わないと他の貴族に示しがつかない・・・どう思う?」
「・・・たぶんリゼちゃんは泣いて嫌がると思う」
私が率直に答えると・・・。
「そうだろうな、彼女の性格も考えて無理強いはしたくないし・・・困ったな」
お父様が頭を抱えてしまいました。
・・・
・・・
・・・
「あの時は翌日本当に紙袋を被ったリゼちゃんが現れて二人で笑っちゃった・・・結局爵位はシェルダンのおじさまが預かるって事になったんだっけ?」
あれから2年・・・リゼちゃんはまだ杖無しでは上手く歩けません、左足を何度も刺されて骨まで見えていたのだとか?。
呪いで刻まれた傷は激しく痛む筈なのに私にはいつも笑顔で話し掛けてくれます。
凄く後悔して、嫌な記憶だけど・・・あの事件だってリゼちゃんと一緒に過ごした大事な思い出です。
「いつか・・・恩を返したいなぁ」
ふとベッドの横を見ると魔導時計の日付が変わっていました。
「早く寝ないと明日は朝早くからダンスの先生が来るんだった!」
私はお布団を被り目を閉じました・・・。
読んでいただきありがとうございます!。
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