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『緋色の傭兵団の物語』「ゲルマニア編」  作者: 嵗(sai)
第五部:旧帝都再興編(承)

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第五部 第1章:廃都の調律と「教育隊長」の誕生

第五部:旧帝都再興編(承)


「集う異分子、成る『有機体』。裏社会も冒険者も飲み込み、組織は巨大な力を宿して盤上へ。」


スラムの住民、狩人、そして北方の「冒険者」をも教育し、兵站から遊撃隊までを備えた、人間の体のように機能する理想的な軍隊を構築します。


かつてゲルマニアの心臓と呼ばれた神聖ロマヌス帝国の廃墟、旧帝都。ここに俺たち「緋色の傭兵団」が拠点を置いてから、三ヶ月が経過した。


現状はどうか? 可もなく不可もなし、だと思ったか。 旧帝都一帯の掌握という意味では、控えめに言っても「極めて順調」だ。だが、その裏側にあるのは泥臭い交渉と、俺たちの存在を認めさせるための「力」の証明だった。


まず、傭兵ギルドだ。


俺はあの戦場に翻った「白地に赤の×印」、すなわち「鉄鎖傭兵団」との決戦に使われた宣戦布告の旗を、ギルドの受付テーブルの上にごとりと放り出した。ゲルマニアにおいて、この旗は勝利の何よりの証拠だ。


「勝っただと……? あの鉄鎖に? 相手は五十人はいたはずだぞ。馬鹿な、たった七人の新参者に壊滅させられたなどと!」 ギルド長は目を剥いて叫んだ。巷では噂が千里を走っているというのに、この事態を正確に把握していないとは、ギルドの機能も相当に錆びついているらしい。


実のところ、ゲルマニアの傭兵ギルドは「五色の傭兵群団」が互いを牽制し、俺たちのような「独立系」が好き勝手できないようにするための検門所に過ぎない。特に旧帝都は「死んだ街」として戦略的価値を見限られていたため、情報の空白地帯となっていたのだ。


「というわけで、鉄鎖には勝ちました。今日からここは俺たちのシマだ」 俺が笑顔で告げると、ギルド長は「どういうわけだ!」と顔を真っ赤にした。


「旧帝都の治安は俺たちが見ます。商業ギルドとも話はつけてあります。代わりの団が必要なら、今すぐ呼べますか? ……呼べませんよね、鉄鎖はもういないんだから」 笑顔を消し、真顔で追い詰めると、ギルド長は「ぐぬぬぬ……」と唸りながらも「わ、わかった」と力なく答えた。ひとまずは言質を取ったわけだ。


一方、商業ギルドにはオットーさんが向かった。 驚いたことに、オットーさんはギルド証を所持していた。彼は老獪な商人の顔を使い、鉄鎖という「寄生虫」がいなくなった好機を逃さなかった。


「緋色の傭兵団がここを守る。だから、将来への投資として出資しろ」 そんな内容を、彼は商人特有の婉曲かつ逃げ道のない言い回しで提案した。会談は四時間に及んだが、商業ギルド長も心の中では「渡りに船」だと思っていたはずだ。


これまで鉄鎖に高額な上納金を払いながらも、「命までは取らないぜ、通行料をよこしな」などと嘲笑われてきた商人たちにとって、バックに群団を持たないが実力だけは八倍の敵を凌駕する俺たちは、管理しやすい理想的な「番犬」に見えただろう。オットーさんは各護衛対象に値段をつけ、不履行時の罰則を細かく設けた、極めて合理的な契約を勝ち取ってきた。


そして、街の住民たちとの関係。


これについてはクリスの功績が大きかった。市場、露店、食堂、教会……。街を歩けば女性が振り返るその美貌を武器に、彼はあちこちに出没した。 「この野菜、あなたのように美しい。いただいていいですか?」 きらりと光る笑顔で忖度し、美貌を称え、収穫を顕彰し、説話に賛辞を贈る。三日目には彼が通りかかるだけで歓声が上がるほどの人気ぶりだった。


だが、夜に拠点で報告するクリスは、冷徹な無表情に戻っていた。


「……不本意です。役割として演じているだけですから」 そう言って、彼は慣れない愛想笑いで痛む胃を押さえ、胃薬を流し込んでいた。 本来のクリスは極度の人間嫌いで口数が少ない。ヤミルが「なんで酒場に行かないんだ?」とからかっても、「……むさくるしい」と一蹴するだけだ。だが、その裏表の激しい活動のおかげで、俺たちは住民たちの愚痴や不満、隠された噂話を正確に把握できるようになった。


さらに、俺はクリスとマルコに命じて、街の孤児院から二十人ほどの子供たちを引き取らせた。


元気なもの、反抗的なもの、聡明なもの。彼らに服と食事、そして清潔な寝床を与え、俺の組織論に基づいた教育を開始した。 午前中は、読み書きと計算、そして基礎的な運動だ。


「できねぇじゃねぇ! やれ!」 マルコの怒声が訓練場に響く。マルコには、単なる武力ではなく「教え、導くこと」の重要性を説き、教育隊長という役職を預けた。


午後は団の下働き――掃除、洗濯、伝令などで「働かざる者食うべからず」を叩き込み、夜にはゲルマニアの歴史や英雄譚を読み聞かせさせた。 俺は、彼らに必ずしも傭兵になってほしいわけじゃない。孤児だからと未来を諦めず、読み書き計算という武器を手に、自分の機会は自分で掴んでほしいのだ。


最初は子供相手に本気で喧嘩していたマルコだったが、一ヶ月も経つと、一緒に汗を流し、同じ釜の飯を食い、楽しそうに笑うようになっていた。


「なんで? なんでそうなるの?」 聡明なガキの執拗な質問に頭を抱えながらも、マルコは確実に「教える側の責任」というものを身につけ始めている。


「頑張れよ、教育隊長」 俺は窓の外で子供たちに追いかけ回されているマルコを見下ろし、小さく笑った。廃墟に過ぎなかった旧帝都に、新しい組織の「鼓動」が確かに響き始めていた。


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