41.推しのライブ参戦準備は、万端です
とうとう明日はライブ当日だ。
そして、今日は……。
席順発表の日!!
15時に電子チケットが表示される。
そこに席番が書いてある。
仕事の休憩中。
私はスマホを握り締め、アプリを開く。
閉じた目を恐る恐る開いた。
横から葵さんが、息を呑んで覗き込む。
――スタンド席 一階
無情な文字が並んでいた。
「……スタンド席……」
私の声が力なく落ちる。
ふぅっと葵さんが息を吐く。
「ま、ファンクラブ当選とは言え、そんなもんよね」
そこには諦めが混じっている。
はぁっと息を大きく吐き、私はテーブルに頭を突っ伏した。
「行けるだけ、マシかぁ……」
私は力なく呟く。
にこっと葵さんが笑う。
「スタンドとは言え一階だし、天井よりはマシだよ」
そう言って手をひらひらとさせ、休憩からあがっていった。
ひとり残された私は、少しだけ口を尖らす。
「今回も……豆粒かぁ」
それから、この前の奏の言葉を思い出す。
『席運悪かったら、次は本気で歌ってやるよ?』
ホントに歌ってくれるのかなぁ……なぁんて思ってみたりして。
……ダメだ、ダメだ。
首を振る。
私の心臓が保たない……。
はぁ。
もう一度、私は溜め息を吐いた。
「ただいまー」
仕事を終え、家に帰る。
玄関に入るなり、奏が声をかけてくる。
「席、どうだった?」
私は眉尻を下げて報告する。
「スタンド」
奏は困ったように笑う。
「ホント席運悪いんだな」
私はトボトボとリビングへ向かう。
「いい人の方が少ないのよ」
「……そうなんだ」
奏は意外そうに呟いた。
そりゃあね、演る側はそんなこと、気にもしないでしょうけど。
観る側からしたら死活問題なのよ。
「明後日の席はまた、明日わかんだろ?」
励ますように奏は座り込んだ私の膝をポンポンっと叩く。
「うん、そう」
私はそんな奏を見下ろす。
「明後日はいい席かもしんねぇだろ?」
「そうね」
そう言われても私の顔は浮かない。
そんな私が気になったのか、奏はテーブルに登ると、両手をパーカーのポケットに突っ込んで、仁王立ちになった。
「……ライブ前に、歌聞くか?」
「へ?」
にやっと笑う奏。
「新曲」
私は慌てて首と手を振る。
「それはっ!!ダメッ」
奏はおかしそうに笑った。
「夕莉ならそう言うと思った」
そこで私は気づく。
励ましてくれたのか……。
ふっと私は笑う。
「ありがと」
私がお礼を言うと、奏はふいっと顔を逸らす。
照れてる……。
か、可愛い……。
叫びたい衝動を私は必死で抑える。
「明日、楽しもうぜ」
顔を逸らしたまま、奏は言った。
「うん、そうね」
私は笑顔で奏に返す。
そう、私の問題は席運だけではない。
奏をバレずに連れて行く、という大問題があるのだ。
テーブルの上の椅子に脚を組んで座る奏を見ながら、私は少しだけ、笑った。




