リュウの逃亡
その翌日だった。ルカが目覚めると、リュウとケインの姿がなかった。ルカはてっきり畑に出ているのかと思い、外に出たが、そこにも二人の姿はない。ルカは村中を探し回ったが、二人は見つからなかった。
ルカは広い家やの中で一人きりになった。リースが亡くなった時もそうだった。ルカはこの家に一人で居るのが嫌だった。その為、ルカはこの家を出たのだ。
ルカは途方に暮れていた。その時だった。扉を乱暴に叩く音が聞こえた。そして扉が開いて中から大勢の男が土足で入り込む。それは、ルカをずっと追っていた魔女狩りの集団だったのだ。
「ようやく見つけた、ルカよ。神の命の元迎えに来た。」
男の一人がそう言った。そして、ルカは神に身を捧げるという名目で白いドレスを着せられ、魔女狩りの本拠地の町に連れて行かれたのだ。
その頃、リュウはケインを抱えて見知らぬ町を歩いていた。
リュウはルカに気付かれないように真夜中に出掛けた。そして、吸血鬼退治をしながら得た僅かな情報を手掛かりにこの町に辿り着いたのだ。
実を言うとリュウは、退治屋の仕事中にルカが魔女狩りの対象である事を偶然聞いたのだ。それに加えて、ルカから吸血鬼の気配を感じた。
リュウは自らの手でルカを人間のうちに殺そうとも考えたが、それが出来ずに逃げてしまったのだ。ケインには母親には二度と会えないだろうという事だけ伝えた。
その町で出会ったのが行方知らずだったルカの父親ジェイムズだった。彼は二人がルカの家族である事を知ると自分の部屋に匿ってくれた。
噂によると魔女狩りは既にルカの居場所を嗅ぎつけている。見つかるのも時間の問題だろう。リュウは、ルカにはもう二度と会えないだろうと悟った。
ジェイムズが何故ルカの元から消えたのか、それは吸血鬼の子供を育てるのが怖かったからだ。リースの娘であるルナと結婚して子供が出来たのは良かったが、その妻と子供に吸血鬼の血が流れているというのを知ると、二人に恐怖を感じたのだ。そこで、身篭っている妻を置いて逃げてしまったのだ。
産まれようとしている子供を放棄するのは許されない。だが、ジェイムズはルカを育てる勇気が無かったのだ。それは、今のリュウの境遇に似ていた。そして、ジェイムズは片親になったケインを一緒に育てると約束した。
その後リュウはもうあの家には戻らなかった。ルカを探そうともしなかった。愛する人の死に目に会えないのは辛かったが、それ以上に自分が処刑されるかもしれないと考え怖くなったのだ。ケインは両親が吸血鬼退治をしていた事も、祖父が自分母親を捨てたのも知らない。ケインはそれを聞こうともしなかった。聞いたところで自分がどうにか出来る問題ではなさそうだったからだ。




