世界の危機をどうにかした結果、余波で人類が詰みかけている話
「そろそろ演算なしにもリーベちゃん、想像ついちゃいそうですねー……これ本当に確定されたらまずいやつですよー。なんでこんなことに」
「ひとえに邪悪なる思念への対処のため、大ダンジョン時代を構築したことがトリガーだろうな。それそのものは仕方がないことではあったが、しかし」
「まさか、だなァ……何が引っかかったか知らねえし、やつらがどのフェーズの連中かも分からねえがよ。とにかくこの件はこうなりゃ本当に口出し無用だぜ、オレらは」
俺とワールドプロセッサ、そして三界機構達のやりとりを耳にして、近くのソファやら椅子に座っている精霊知能達もやはり気づいたようだった。
委員会の正体、その本質的な部分である。具体的にどういったモノであるかは分からないにせよ、ソレらが本来あるべき形、意義であるか。どのタイミングで現れるべきだったのか。
それらを半ば、確信したんだね。
で、こうなると彼女らも精霊知能ゆえ、これがもはや自分達が言及すべきでない、本当に手に余る事態だと把握した。
即座に以降の言及を控える旨を表し、またそれにうなずいたのだ。
即座の判断、さすがだよ。これには三界機構のぬいぐるみめいた連中も感心したように揺れている。
そして俺とワールドプロセッサに、彼女らの性能の高さを讃えてくれたのだ。
『さすが、自制的だし聡明ね。私の世界もあの子供による侵攻があった時点で精霊知能は発生したけど、ここまで物わかりの良い子達じゃなかったもの。世界ごとの差異かしら、はたまた文明度や進行度がそのあたりにも影響するのかも?』
『基となるワールドプロセッサの性質じゃねぇか? 俺んとこの精霊知能は俺に似て、とにかく真っすぐ行ってあのクソガキだろうと殴りつけてやろうって戦士ばかりだったしな。おう災海、オメーさんとこはどうだったよ』
『我のところの精霊知能は素晴らしかったぞ? 何しろ発生した瞬間に邪悪なる思念に対抗すべく共食いを始めた。食われる前に食ってしまおうという合理的な対処法を選んだのだな。おお、素晴らしい』
「えぇ……?」
『やっぱ災海んとこだけは毛色違うわねえ……』
精霊知能、というかシステム領域の自我獲得機能それ自体は世界共通に搭載されているエマージェンシー機能だ。
外敵による世界の危機を察知した時点でオートで発動し、あらゆるプログラムが魂と精神を獲得してより能動的に、かつ有機的に事態へ対処できるようになっている。
なので三界機構達の世界にも精霊知能はいたんだけれど……興味深い話で、世界ごとに精霊知能の色合いも異なるみたいだな。
いやにしても災海世界はなんかおかしい気がしてならないけど。魔天もドン引きしてるし、断獄も目を逸らしているし。怖ぁ……
『出たよイカレトンチキ災海世界。公平、そいつの紳士ぶった態度は素だろうが中身は相当なキワモノだからな言っとくけど。巣立ちそっちのけで概念存在と現世存在が互いのすべてをかけて殺し合って、システム領域さえそこに嬉々として関与していたわけの分からない世界だ。はっきり言って悪趣味だし、僕としてもとんだゲテモノ食わされた気持ちだったよ』
脳内のアルマさんまで似たような声色で申告してくる。災海世界、やはり概念存在が目茶苦茶幅を利かせていたんだな。
神奈川さんとステラの聖剣からしてそんなことだろうとは思っていたけど、さらにシステム領域もそれに加担していたってのは予想以上だ。
どんな運営をしようが俺には文句をつける筋合いはないんだけれど、なんかおっかないよなあ。
まあ、そもそもアルマにそのへんとやかく言う資格はないってのもあるけど。うちのワールドプロセッサが、静かに淡々と口を開いた。
「精霊知能についてはともかく。おそらくはこれにて共通の見解が得られましたね……彼らはそういうことです。本来ならば今このタイミングで現出するはずのないモノ、なんらかのエラーによって進行度に齟齬が生じた結果のモノ。それゆえ我々は彼らに対し、排除する方向でことを進める選択肢を持ち得ません」
「ああ、まあな。委員会の中核だろうモノ達をたとえばやっつけたとして、今後1000年くらいはそれで問題もないだろうけどそれ以後は確実に支障が出る。これもギリギリの話だけど、アイツらは再生可能な"星の端末機構"とか"ソラのトバリ"じゃないはずだし」
『そのへんだったら代替え制だから消し飛ばして終いにできるだろうし、同意見だぜコマプロ。委員会の連中はおそらく星や宇宙由来じゃねえんだ、迂闊な排除は後々詰むぜ』
『いや、まあ、端末機構もトバリも厳密に言えばあまり代替えはよろしくないだろうがな? あくまであちらは機構として成立している分、代替えが効くだけであるのは把握しておくべきだぞ』
星の端末機構。ソラのトバリ。いきなりなんのこっちゃ抹茶に紅茶って言葉が出てきたが、まあ言っちゃうと推定される委員会の正体達の同類だ。
細かくは言わないけど要は巣立ちにまつわる最重要ファクター達だね。こっちは仮に消し飛ばしても仕組みさえ生きていれば復活するんだけど、委員会はおそらくそうではない。
そのへん、当然詳しい断獄や災海も釘を差してくる程度には重要な話だ──委員会のモノ達は殺せば死ぬ。そして死んだら代替が利かない。
つまり彼らを排除した時点で、この世界の究極目標たる巣立ちの達成に大きすぎる穴が空くのだ。それゆえにワールドプロセッサも俺も、委員会に対して極端な行動を取るわけにはいかないんだね。
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