いつか、世界の果てさえ乗り越えて
委員会が何者か。その問いについては現状、フワッとした物言いで定義するのがギリギリのラインだ。
すなわち巣立ちにおいて絶対的に必要なモノ達。失われればソレらは戻らず、ゆえに排除することはできないモノ。
本来この時点の世界では発生し得ないモノ。それがなぜか発生して大ダンジョン時代に干渉している、と。
その程度のざっくり開示に留めておくべきなんだね。それ以上深掘りすると、再三言うようにシステム領域が手出しできなくなるからさ。
「なんで手出しできなくなるか。なんてこの場にいる誰もが理解しているだろうけど、一応神奈川さんとミュトスには改めて伝えておきますね。精霊知能になったとはいえ元が人間と概念存在ですし」
「た、助かります」
「ひえぇ! あ、あんまりその、知るとまずい系の話はミュトスちゃん聞きたくないかもかなーって、たはは……く、口は固いほうですけどほら、お酒を飲んでる時の自分ほど信用ならないものはないですし!」
「えぇ……? いや、話してまずい系の話はしないけどもさ。もうちょい自分を信じなよ……」
怖ぁ……神奈川さんはともかくミュトスがすごく不安になること言ってる。酒が絡んだ時に口を割らないか危惧してるのか、この子。どんだけ酒主体の生活送るつもりなんだろう。
しかし、この子は別に酒飲みまくっても口が軽くなる感じでもないんだけどなあ、山形家に居候してた時から酩酊してても言動はしっかりしてたし。
そのへん、ミュトスの自認的にはどうか知らんけど俺は問題ないかなって思うんだけどね。そもそも、言い触らしてまずいところまでは話すつもりないし。話したらそれこそ本末転倒、現時点をもって委員会に対して手出しできなくなることにもなりかねない。
リーベはじめ精霊知能達が呆れも含んだジト目でミュトスを横目に見るなか、俺はこほんと咳払い一つして、簡単ながら説明することにした。
委員会の正体にこれ以上深掘りできない、核心的な理由についてである。
「ざっくり言うと、委員会ってのが巣立ちに必要なモノであるのなら、その相手をすべきなのは現世存在のみ。とりわけ現状、最も可能性を備えている知的生命体たる地球人類だけなんですよ。人類が巣立つにあたって課せられるいくつもの試練、壁、あるいはハードル。それらのうちの一つなわけですから」
「巣立ち、ですか。ステラの記録にもあります。世界の究極目標にして、現世存在も概念領域もシステム領域でさえもすべてはそのために在ると」
「ええ、まあ。世界から飛び立ち、次なるナニカを生み出し繋げるモノ、世界の先へと向かういわば超越者。それを産み出すために必要なプロセスです……委員会はそのプロセスの一部に組み込まれた、プログラムである可能性が高い」
ここで軽く触れる巣立ちの概要だけれど、本当にざっくりだよ? ──要は今あるこの世界の外側、波動の海にさえ漕ぎ出して次なるナニカ、ドコカ、ダレカと出会うアナタ。
それを産み出し送り出す、プロセスそのものを指すんだよね。
いつか、世界すべてを受け継いで次なるステージへ向かってくれるまったく新たなるモノ。それを産み出すためにあらゆる世界はあるのだ。
でもってそこへと向かうにあたり、その世界において定められた一定の文明度、進行度を迎えた現世存在が進化する権利を与えられる。
巣立ちに際して課せられるいくつもの試練を受けて、それらと相対して超克して超越していく、チャンスを得られるのだ。
そして、その試練として用意されているモノの一つが委員会の中枢メンバーである可能性が高い。
だからこそ、彼らを打倒するのであればそれは現世存在、それも今の段階でなく本来至るべきフェーズへと至った者達が行うべきなのだ。
「断言しますが、大ダンジョン時代における人類はまったくそのフェーズに辿り着いていません。そもそも巣立ちに関する事象が発生する段階にすら至ってないんですから、委員会みたいなのが出てきて悪さしてる現状がもうおかしいんです」
「な、なるほど。それでエラーが起きていると」
「はい。第三者の意図的なトラブルでもなく、偶発的なバグでもない──あえて言うならまったく別なところで起きた事件が、バタフライエフェクト的に波及して本来関係のない部分にまで及んだ異変。まさしくエラーですね」
「すなわち邪悪なる思念の侵攻、およびそれを受けてのオペレータ計画とアドミニストレータ計画によって現世地球に生じた大ダンジョン時代。これらが遠因となってなんらかの異常を引き起こし、結果として発生したモノこそが委員会の中枢なのではないか……ということです」
ワールドプロセッサが説明を続けてくれたけど、つまりはそういうことだ。いつものことながら大体ぜんぶ邪悪なる思念が悪いアレである。
500年前からの世界侵攻。そして150年前の大侵食によって追い詰められたこの世界は、流入してきた異世界のスーパーパワーさえ利用して一大反攻作戦を展開した。オペレータ計画とアドミニストレータ計画の二つだ。
結果としてそれらはうまくいって今に至るんだけども……おそらくはその副産物だろう、エラーも静かに誰も知られないままに発生した。
本来今出てくるわけもないような、巣立ちを審査する役割を持った存在が起動したのだ。それこそが委員会である。
そう、推測の段階ながら仮説が立ってしまうのだ。
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