三界機構(ぬいぐるみのすがた)
三界機構の提案。委員会の本丸たるモノ達について、自分達も把握したからそれについて話し合いたいという主張。
それに対して俺もワールドプロセッサも、即座にミュトスへと返事をしていた。
「もちろん構わないよ。元より三界機構とはこのタイミングで直に顔合わせするつもりだったしな」
「それに今や残滓とは言え、同胞たるモノ達の智慧も借りられるのは僥倖でしょう。神の権能を取り戻した今、ミュトスもこの領域内においてならば三界機構を顕現させられましょう」
「はい、ばっちりてっちりえびちりたいちり! 問題なくお呼びできますよ、御三方を!」
「冬だし魚鍋ってのも良いよなァ」
なんかお腹空いてるのかな? と言いたくなるようなミュトスのノリはともかく、提案自体は願ってもない話だ。
何しろ今や意識だけとはいえかつては私達と同様の全能存在たるワールドプロセッサだったモノ達だ。その智慧は健在だろうし、だからこそすでに委員会について俺が推測してるのと同じだろう答えに辿り着いているんだろうし。
となれば否やはない。ワールドプロセッサも同様にうなずく。ミュトスはすでにウーロゴスをすべて回収していて、システム領域内でなら三界機構を顕現させることもできる。
というわけでさっそくだがお呼びいただこうじゃないか。かつてのワールドプロセッサ達、かつての三界機構達を。
「それではよござんす、こほん──精霊知能ミュトスの名において願い奉ります。どうぞここに仮初の肉体を得て、仮初の現出をなさりませ三界機構は魔天、断獄、災海の御三方!! はぁーなむなむなむなむ」
『────よーやっとこの時が来たわね。ま、そもそもあり得るはずもなかった奇跡だから文句なんてないけど』
『まったくだ……よくよくお人好しだらけの世界だぜ、この世界はよ』
『しかして感謝は欠かせぬな。我々はだからこそこうしてここにいられるのだから』
両手を合わせ、すりすりと擦り合わせながら南無南無言いつつ力を発動するミュトス。ノリは軽いが放つ権能、それに伴い現出する事象は洒落にならないものがある!
そして聞こえてくるその声、ミュトスの周りに浮かぶ三つの光の玉。間違いなくあの時、あの最終決戦で聞いた声だ。
すなわちソレこそ三界機構。邪悪なる思念によって喰われ消滅した三つの異世界、それぞれを運営していた世界維持機構の成れの果て。
魔天。断獄。災海。かつての三つのワールドプロセッサが、わずか残った魂のひとかけらに意志だけを宿して今、ここに現れていた。
そしてかりそめの肉体を、ほんの一時だけ成立するアバターを構成する。
赤いラインが入った白い肉体、鳥のような龍のような魔天。
象とも虎とも、はたまたライオンともつかない四足の獣を模した断獄。
そして鮫の頭を持つ蛸、そう表現するしかない災海。
──いずれもずんぐりむっくりとした、枕サイズのぬいぐるみみたいな姿でだ。
フォルムこそ決戦時のソレと同じだが、ずいぶんスケールダウンしたというか、可愛らしくなったなあ。
『はっ! しょせん欠片だけのガラクタどもに合わせたナリとしちゃお似合いじゃないか。永年僕の便利なペットでしかなかったやつらが今さらのこのこと……よくツラを出せたもんだよ、恥知らずとはこのことだろうね、まさしく!』
脳内でアルマが昂ぶってるけど、いくつもの世界を股にかけた正真正銘の恥知らずが自分のことを棚に上げ過ぎである。
たしかにぬいぐるみとしての顕現なんてのは、俺的にも少し驚くものではあったけどな。それでも魂ひとかけらだけなことを考えると別段おかしくないし嘲笑うべきことでもないのは言うまでもなく考えるまでもない。
お前こそツラを出す機会なんて今後億年単位でないと思っとけよ。なんて軽くアルマを嗜めつつ、俺はそのぬいぐるみフォルムの三界機構達へと向き直る。ワールドプロセッサ、精霊知能達もだ。
もはや魂になんの力も感じられない、それでもたしかにかつてのワールドプロセッサだったモノ達へ……最大限の敬意とともに、語りかける。
「はじめまして、ではないにしてもこうして落ち着いたコンタクトは初めてだな。知ってると思うがこの世界のコマンドプロンプトだ、よろしく頼む」
「同様にこの世界におけるワールドプロセッサです。私の場合は以前、崩壊したあなた達をミュトスに組み込む際にお会いしていますね。お久しぶりというほどのこともありませんが、お久しぶりです」
『はいはいやっほー。便宜上三界機構としての呼び名で通しておくからこう名乗るわね、魔天よ。ようやく会えたわね、コマプロ』
『前はとにかく世話になりっぱなしだったな、コマプロ! 断獄だ、よろしくな』
『災海だ。コマプロと話すのは我の世界でもなかったがゆえ少し愉しみだ。よろしく』
「お、おう。コマプロ言うな」
ノリ軽っ。そしてしれっと俺のことを略して呼んでくるあたり、なんともスチャラカ感漂うぬいぐるみ達である。
コマプロは止めてほしいんだけどなー、ワールドプロセッサをワープロと呼んでしまいそう的な意味で。まあ別にいいっちゃいいけどもさ、この三体ならさあ。
フリフリと寸胴の身体を揺らして、手を振ったり差し伸べたり頭を下げたりしている龍だかライオンだか鮫だかの姿。
俺は正直なところ若干戸惑いつつも、それらに応えた。
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