比喩でなくセカイ系な主人公
何はともあれひとまず落ち着こう。俺はちょっぴりだけコマンドプロンプトの機能を発動した。
カッコ良さげに指パッチンを一つ。鳴らなかった、カッコ悪すぎてかなしい──ええい呼び出し、起動、編集、入力、実行っと。
その瞬間、味もしゃしゃりもない電脳空間が一気に変化する。山形家の居間。勝手知ったる俺ちゃん家のリビングがそっくりそのままこの空間に現れたのである。
これに素っ頓狂な声をあげたのが神奈川さんだ。驚かせてしまって申しわけないけど、そんな姿までイケメンなのはさすがに度が過ぎていると思うんですよ、フツメン的意見として!
「────うおおお!? こ、これは、空間が変化した!?」
「っ……落ち着け神奈川。これは、コマンドプロンプトとしての機能の発露だな。自らの手で自らの権能を、因果律管理機構本体としての機能を発揮なさったのだ」
『は、早すぎる……! 私達精霊知能じゃ、ここまでの速度でこんな規模の実行は……!』
「他ならぬ俺自身の本体のことだし、俺だけはそのへん早くなきゃ駄目だしなあ。精霊知能にここまでのことは求められないよ、さすがに」
狼狽する神奈川さんを落ち着かせるヴァールも、次いであまりの速度での実行に慄くステラも驚愕を隠せない様子だ。
精霊知能たる自分達も普段から、まあやらなくもない作業だろう一連の行為を、彼女らと比べてもあまりに早く成したことにビックリしてるんだろう。
そう。今の業というか機能はシステム領域のモノなら全員が備えている技法だ。特定の名称はないけど、まあコード入力とかコード実行とかって言い方が一番ニュアンスとしては適切かな?
やってることは至極単純。"システム・コマンドプロンプトを呼び出してコードを入力。実行することで様々な因果律にまつわる事象を引き起こす"のだ。
この、システム・コマンドプロンプトってのは今ここにいる俺であって俺ではない。
俺の本体……この世界の因果律そのものと、ソレに干渉できるシステムツールのことを指す。要は山形公平とはまた別の形での端末を呼び出し、それを使って精霊知能達は日頃お仕事に励んでくれているんだね。
前に話した気もするけど、結局現世の山形公平も言ってしまえばコマンドプロンプトのアバターのようなものだ。受肉とは異なり転生という形で肉体を得たけれど、覚醒したからにはまあ本質的には大差ない。
つまり接続先、本体は別にあるのだ。当然ね。それこそがシステム・コマンドプロンプト。因果律管理機構そのものであり、世界そのものであり、そしてワールドプロセッサや精霊知能達が自分達の使命を果たすために用いているツールでもあるわけなのだ。
「──というわけで言ってしまえば今、俺は俺自身の本来の機能を用いたんです。だから精霊知能達よりはるかに早く演算して実行できるのも当然っちゃ当然なんですね、なんせ自分の手足を動かすのとまったく同じなんですから」
「は、はあ……」
「ま、そのへんは神奈川さんもミュトスも追々覚えていけばいいですよ。とりあえずソファなり椅子なりに座ってもらって。ほらリーベ達も。ワールドプロセッサ、お前もどうぞ」
「ふふ。ええ、ありがたく」
このへんの仕組みを、やはり知識としては持っているだろうけどまだ理解してない神奈川さんに軽く説明しつつ着席を促す。
もちろんワールドプロセッサもだ。俺と互いに向き合う形でリビングのテーブル席に座る。俺の隣にヴァール、ワールドプロセッサの隣にシャーリヒッタ。
そんでもってリーベ、神奈川さん、ミュトスはソファだ。それぞれ思い思いの位置だね。
これで始められるかな。俺は本題にはいることにした。
「さて……さっそくだけどワールドプロセッサ。お前とは世間話をしに来たわけじゃない。諸々、確認しておくことや共有しておくべきことがあってそれらについて話すために来たんだ」
「分かっています。委員会のことやインターフェイサーについてのこと。それにミュトスの内にいる、三界機構についてでしょう? 特に委員会については、それなりに重要度の高い話だと私も認識しています」
「さすがにな。ふむ……とはいえ、何から話すべきか」
まあお互い理解は当然し合っていて、今回ここに来たのは主に三つ、話すことがあるためだ。
委員会のこと。インターフェイサーのこと。そして三界機構のこと──このうち最も重要なのは委員会についてで、後者二つはそれこそ世間話程度の確認になるけどね。
しかしながら話す内容の順番については少し、迷うところだ。いきなり委員会の話からしても良いんだが、それについても内容が内容だ、先に軽い話から済ませておいても良い気がする。
軽く考えていると、おずおずとミュトスが挙手してきた。なんじゃーらほーい?
「あ、あのう。差出口を挟んですみません、三界機構さん達がちょっと、アレコレ騒ぎ出してましてー」
「うん? 三界機構が、何を?」
「えーっと、"委員会についての話なら私達も顕現させて混ぜてー"って。"我々も連中の正体もう分かってるからアレコレ話せるよー"とも仰ってます」
「…………さすがにワールドプロセッサなだけはありますね。すでに理解していましたか。あのモノ達の正体と、現状どうなってしまっているのかについて」
思わぬ提案。そして告白。
三界機構たる異世界のワールドプロセッサだった三体達もまた、すでに俺やこの世界のワールドプロセッサと同じ考えを抱いているみたいだ。
すなわち、委員会の正体と現状。
それについて話し合いたいと、ミュトスの内から顕現したいと。そう言ってきているのだ。
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