表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪物勇者   作者: Toooji
26/57

第二十五章 魂の色


男は黙っていた。


目の前には大量のノーム。


右を見てもノーム。


左を見てもノーム。


頭の上にもノーム。


いつの間に乗ったのか分からない。


「変な仮面!」

「変な顔!」

「怖い顔!」

「でも面白い!」


「石投げ返した!」

「勇気ある!」


「馬もいる!」

「賢そう!」


馬が鼻を鳴らす。


すると数匹のノームが馬のたてがみにぶら下がった。


馬は嫌そうな顔をしたが振り払わない。


「懐いた!」

「懐いた!」

「奇跡!」


案内役が呟く。


「なんでだよ……」


男は周囲を見回した。


「真名石はどこだ」


静かになった。


ノーム達が一斉にこちらを見る。


そして。


「真名石だって」

「真名石だって」


「聞いた?」

「聞いた聞いた」


また騒がしくなった。


男は少しだけ後悔した。


賢者の方が話が早かった。


その時。


一番年老いたらしいノームが前へ出てきた。


白い髭。


杖。


他のノームより少しだけ大きい。


「静かにせんか」


一言で全員が黙る。


長老らしかった。


長老ノームは男を見上げる。


じっと。


いつまでも見ている。


男も黙って見返した。


しばらくして。


長老が言った。


「ふむ」


さらに見つめる。


・・・・・・


「ほう」


また黙る。


・・・・・・


「なるほど」


男は少し苛立った。


「何だ」


長老は杖で男を指した。


「お前さん」


「変じゃな」


ノーム達が一斉に笑った。


「変!」

「変!」

「すごく変!」


案内役も頷いた。


「それは知ってる」


男は眉をひそめる。


長老は笑わない。


「魂の話じゃ」


空気が変わった。


男は何も言わない。


長老は続けた。


「普通の魂ではない」


「人でもない」


「魔族でもない」


「怪物でもない」


男は仮面の奥で目を細めた。


長老は杖を向ける。


「半分は勇者じゃ」


「半分は魔王じゃ」


案内役が息を呑む。


男だけは動じなかった。


賢者にも似たような事を言われていた。


長老は頷く。


「なるほどの」


「だから死なんのか」


「だから臭かったのか」


男が固まる。


ノーム達が爆笑した。


「臭かった!」

「めちゃくちゃ臭かった!」

「賢者が洗った!」

「水の玉!」

「ぶくぶく!」


案内役まで吹き出した。


男は黙っていた。


仮面の下で唇を噛む。


二度と思い出したくない。


恥ずかしい過去。


「いやすまん。」


「魔王臭いということじゃ。」


長老は咳払いをした。


「真名石が欲しい理由は分かる」


男は頷く。


「魔王のチャームを防ぐためだ」


「そうじゃろうな」


長老は杖をつく。


「だが真名石は誰にでも渡す物ではない」


「試す」


男は短く答える。


「構わん」


ノーム達がざわついた。


「即答!」

「即答した!」

「面白い!」


長老は少し笑った。


「よかろう」


杖が床を叩く。


ゴォォォ……


洞窟の奥から振動が響いた。


岩壁が割れる。


隠し通路が現れた。


暗い。


先が見えない。


冷たい風だけが流れている。


長老はその先を指した。


「真名石はあの奥」


「だが簡単には辿り着けん」


「何故だ」


長老は意味深に笑う。


「真名石は魂を映す」


「心を映す」


「過去も映す」


男は黙る。


長老は続けた。


「お前さんが本当に欲しいのは」


「魔王を倒す力か?」


「それとも――」


そこで言葉を切った。


洞窟の奥から冷たい風が吹く。


まるで誰かの囁きのように。


男の脳裏に浮かぶ。


銀の髪。


泣きそうな瞳。


そして。


『この怪物!』


あの日の言葉。


胸の奥が痛んだ。


長老は静かに言う。


「自分で確かめるがよい」


男は顔を上げた。


長老は不思議そうに笑う。


「昔、東より兆し現る」


「そう語ったエルフがおった」


「その時は意味が分からなんだ」


「今なら少し分かる」


長老は杖を奥へ向ける。


「行ってこい」


「真名石が待っておる」


男は無言で頷いた。


長い旅の果て。


ようやく辿り着いた場所。


しかし本当の試練は。


これからだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ