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怪物勇者   作者: Toooji
25/57

第二十四章 笑う洞窟


翌朝。


男は反乱軍の砦の外に立っていた。


空は快晴。


山脈の風は冷たい。


馬は朝から機嫌が良かった。


反乱軍の者から貰った干し果実を美味そうに食べている。


「お前は順応が早いな」


男が呟く。


馬は気にも留めない。


すると岩の上で誰かが待っていた。


若い魔族だった。


頭に小さな角が二本。


細身の体。


弓を背負っている。


男を見るなり露骨に嫌そうな顔をした。


「お前か」


「案内役だ」


短く答える。


若い魔族はため息をついた。


「なんで俺なんだよ・・・」


どうやら不本意らしい。


男は気にしなかった。


「行くぞ」


若い魔族はぶつぶつ文句を言いながら歩き出す。


「あーあ・・・」


「絶対面倒なことになる・・・」


「洞窟なんて行きたくねぇ・・・」


「頭領も人使い荒いんだよな・・・」


ずっと喋っている。


賑やかな男だった。


山道を進みながら、男は尋ねる。


「真名石を見たことはあるのか」


若い魔族は首を振った。


「ない」


「じゃあ何故そんなに嫌がる」


若い魔族は即答した。


「ノームがいるからだ」


男は眉をひそめた。


「強いのか」


「いや」


「面倒くさい」


男は意味が分からなかった。


----


数時間後。


大山脈の中腹。


黒い岩壁にぽっかり開いた洞窟。


入り口は意外なほど普通だった。


怪物の気配も無い。


魔物の痕跡も無い。


遠い昔に放棄された鉱山だった。


「ここだ」


案内役が言う。


男は洞窟を見上げた。


薄暗い。


奥が見えない。


冷たい風だけが流れている。


「真名石はこの奥か」


「多分な」


「多分?」


「ノーム次第だ」


男は少しだけ嫌な予感がした。


洞窟へ入って数十分。


異変は突然起きた。


コツン。


男の頭に小石が当たる。


「……?」


振り返る。


誰もいない。


コツン。


今度は肩。


コツン。


次は仮面。


男は辺りを見渡す。


誰もいない。


すると。


「ぷっ」


笑い声が聞こえた。


男と案内役が同時に振り返る。


誰もいない。


「始まった……」


案内役が頭を抱える。


「何がだ」


「ノームだ」


コツン。


今度は案内役の額。


「痛っ!」


どこからともなく笑い声が聞こえる。


「ひゃひゃひゃひゃ!」


「出てこい!」


男が言う。


「無理だ、姿が見えない」


その瞬間だった。


ゴン。


今度は案内役の後頭部。


「いっっっ!」


男は少し考えた。


そして地面に落ちていた小石を拾う。


「返すか?」


案内役が叫ぶ。


「絶対やめろ!!」


遅かった。


男は全力で投げ返していた。


ゴガァン!!


洞窟の奥で凄まじい音が響く。


静寂。


数秒後。


洞窟中から爆笑が響いた。


「ぎゃははははは!!」

「やり返した!!」

「面白い!!」


案内役は絶望した。


「終わった……」


すると。


ゴゴゴゴゴ……


洞窟の壁が動き始める。


岩が割れる。


そこから。


三十センチほどの小人達が次々と現れた。


石のような肌。


長い髭。


丸い鼻。


全員が腹を抱えて笑っている。


男は初めてノームを見た。


一匹が男を指差す。


「気に入った!」

「石を投げ返す奴!」

「久しぶりだ!」

「変な仮面!」

「顔も変!」


男は黙った。


案内役は思った。


嫌な予感しかしない。


だが。


その予感は正しかった。


ノーム達は男の周りを取り囲む。


まるで新しい玩具を見つけた子供のように。


真名石への道は。


思っていたより遥かに騒がしいものになりそうだった。

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