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怪物勇者   作者: Toooji
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第二十三章 反乱軍の砦


男は魔族の後について歩いていた。


大山脈の麓。


切り立った岩壁が続く険しい地形。


外から見ればただの崖にしか見えない。


しかし先導していた魔族の戦士が大岩を押すと、隙間が現れた。


隠し通路だった。


「入れ」


男は馬の手綱を引きながら中へ進む。


通路の奥には広い空洞があった。


篝火が灯されている。


武器を研ぐ者。


鎧を修理する者。


見張りをする者。


数は百を超えていた。


老若男女様々である。


魔族だけではない。


獣人もいた。


角を持つ者もいる。


人間に近い姿の者もいる。


しかし全員に共通するものがあった。


目だ。


誰もが強い意志を宿していた。


男は思う。


魔王の支配下では見なかった目だと。


「おい」


反乱軍の一人が近寄ってくる。


男の馬を見て目を丸くした。


「随分と立派な馬だな」


馬は鼻を鳴らした。


すると別の者が近寄ってくる。


干し果物を差し出した。


馬は迷わず食べる。


周囲から笑いが起きた。


「賢そうだ」


「見る目があるな」


「俺には噛みついたぞ」


「それはお前が嫌われてるだけだ」


久しぶりだった。


誰かが笑っている光景を見るのは。


やがて奥から大柄な魔族が現れる。


周囲の空気が変わった。


皆が道を開く。


頭領だった。


灰色の髪。


片目を失っている。


左腕は肘から先が無い。


無数の傷。


それでもなお巨大な体躯を誇っていた。


男は本能的に理解する。


強い。


この中で一番。


頭領は男の前で立ち止まった。


「聞いた」


低い声だった。


「魔王を殺しに来たそうだな」


男は頷く。


頭領はしばらく黙っていた。


そして言った。


「ならお前は俺達の同志だ」


その言葉に周囲が静まり返る。


同志。


男はその言葉に違和感を覚えた。


長い間、一人だった。


誰かと並んで歩くことなど考えたこともなかった。


頭領は続ける。


「俺の息子は魔王に殺された」


静かな声だった。


「娘はチャームで壊された」


誰も口を挟まない。


「妻は自ら命を絶った」


篝火が揺れる。 


「だから俺は戦う」


男は黙って聞いていた。


頭領は男を見る。


「お前は?」


男は少し考えた。


だが答えは簡単だった。


「約束だ」


「約束?」


「守れなかった約束を果たしたい」


頭領は笑った。


「なるほど」


「それなら俺達は似た者同士だ」


そう言って大きな手を差し出した。


男は一瞬だけ迷う。


それから握り返した。


力強い手だった。


その夜。


男は反乱軍の砦で食事を取ることになった。


干し肉。


黒パンらしきもの。


煮込み。


豪華ではない。


だが温かかった。


食事をしながら周囲の話を聞く。


反乱軍の目的は一つ。


魔王を倒すこと。


しかし現実は厳しかった。


幻魔王国には数万の魔族。


怪物。


魔物。


正面から戦えば勝ち目は無い。


だから今は力を蓄えている。


そして。


頭領はある話を切り出した。


「遠い未来、東より兆し現る」


「むかし、賢者から聞いた」


男が顔を上げる。


「真名石を探しているそうだな」


男は頷いた。


「それが無ければ魔王に勝てない」


頭領は火を見つめる。


「なら行くしかない」


「だが簡単ではないぞ」


「知っている」


「いや、お前は知らん」


頭領は苦笑した。


「真名石の洞窟へ向かった者は何人もいる」


「手に入れた者はほとんどいない」


男は眉をひそめた。


怪物か。


それとも魔物か。


だが頭領は首を振った。


「敵はもっと厄介だ」


「洞窟の主は怒りっぽい」


「そして、とてつもなく暇なんだ」


周囲から笑い声が起きた。


男だけが意味が分からず黙っていた。


頭領は笑う。


「明日わかる」


「案内役を付けてやる」


「運が良ければ真名石は手に入る」


「悪ければ……」


そこで言葉を切った。


誰も続きを言わない。


だが男は気にしなかった。


今さら死など恐くない。


恐ろしいのは。


魔王を倒せず終わることだけだった。


篝火の火が小さく揺れる。


長い旅路の果て。


男はようやく見つけた。


同じ方向を見ている者達を。


そして明日から。


真名石を巡る新たな戦いが始まる。

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