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43話 ユキユキを守る為に

 夕食が始まる前に、ユキユキを呼び止める。


「ユキユキ、今夜は一緒に眠らないか?」


「いいウサ? 私、昨日も独占しちゃったウサよ」


「あんなことがあったばかりのお前を一人にしたくない……という私の我が儘だ。嫌なら……」


 嫌ならば構わないと言おうとしたらユキユキは慌てて否定する。


「嫌じゃないウサ! えっと、じゃあ、いーっぱい良し良しってしてくれるウサ?」


「勿論だ。他にもあれば何でも言って欲しい、全力で甘やかしてやる」


「えへへ……嬉しいウサ。ありがと御主人様。じゃあじゃあ、今日もいっぱい、嫌なことを忘れるくらい愛してください」


 上目遣いで甘えるようなユキユキに勿論と頷いた。


「そろそろ夕飯も出来上がるだろう、今日はリアがシチューを作ってくれたんだ」


「一緒に街に来ないと思ったら、料理をしてたウサね。リアは一時でも御主人様と離れるのは嫌がると思ってたウサよ」


「初めの頃はそうだったな。風呂でもベッドでも何処だろうと付いてきていた。……今もあまり変わっていないが」


 思い出すと笑えてくる。本当に、何処にでも付いてきたのでヴァンよりも親子らしいと言われてしまったこともあるくらいだ。


「……迷惑じゃなかったウサ?」


「不思議と迷惑とは思わなかったな。私を慕ってくれているのが分かったし、私も一人の男だ。あそこまで真っ直ぐな好意を向けられるのは嬉しかった」


「じゃあじゃあ、私がやっても喜んでくれるウサ?」


「当然だ。ユキユキはゴア老人に自分のことを何と説明したんだ?」


「それは……嫁、ウサ……」


「こんなに可愛い嫁に尽くされて喜ばない男などいるはずがないだろう。さあ、そろそろリビングへ行こうか私の可愛いお嫁さん」


「う、うさぁ……」


 真っ赤になった顔を隠すように俯きながら、私の服を掴むユキユキ。見ると、耳も垂れ下がっており、相当照れているようだった。

 リビングに着くと、もう準備は出来ているようであとは私たちを待っていたようだ。


「遅いですよホシミさん、ユキユキ……ってユキユキ? どうしたんですか、そんなに顔を真っ赤にして」


「うさっ」


 ココノハに顔を見られそうになったユキユキは私の身体に顔を押し付けて隠す。その様子を見てリアは笑った。


「ふふふっ、ユキユキちゃんもホシミ様の虜になってしまわれたみたいですわね」


「何よそれ。ユキユキもリアみたいになるってこと?」


「まあ、わたくしみたいとはどの様なことを指すのでしょう? お教え下さると嬉しいですわ」


 シィナの突っ込みにリアが笑顔で問い詰める。シィナは一歩下がってヤバイという表情を浮かべた。


「そ、それは……」


「それは?」


 じりじりとにじり寄って、シィナを壁際に追い詰める。


「年中発情していつでも何処でも誘惑するんじゃないかって、思う……ん、だけど……リア? ねえリアさん!? 何でそんなに近寄って近い近い近いからリアちょっとんむっー!!!!???」


 リアは慌てるシィナを無視して自身の唇でシィナの唇を塞ぐのだった。


「リアっ……ひょっ、待って、中、舌入れな……あっ……」


 リアの舌はシィナの口腔内に入り込み、シィナの中を舐め回す。最初は抵抗していたが、そのうちなすがままにされるシィナだった。


「ふぅ……。わたくし、異性はホシミ様以外受け付けませんけれど、同性なら別ですのよ? 特に、ホシミ様の寵愛を受けた女性なら尚のことですわ。ねぇ、シィナ」


「ふぁい……」


「あんまり酷いこと言いますと、ホシミ様と一緒に滅茶苦茶に愛して差し上げますわよ」


「ごめんってば……。もう丸一日足腰が立たなくなって寝たきりになるのは勘弁だから……」


「分かればよろしいですわ♪」


 壁にもたれかかったままへたり込むシィナ。スカートから水色の下着が見えているのだが……。リアは対照的に上機嫌で、ステップを踏むかのような軽やかな足取りで席に着席したのだった。


「私たちも座ろうか」


「分かったウサ」


「えっ、あれをスルーですか? スルーして良いんですか?」


「おーいシィナー、水色のおぱんつ丸見えウサよー。えっちな匂いがこっちまで漂ってくるウサ」


 ユキユキの声で自分の体勢に気付いたシィナはばっと素早い動きで見えていた下着を隠す。その後ゆっくりと立ち上がった。


「ちょっとユキユキ、そんな匂い発してないわよ。変なこと言わないの」


 少しだけ頬が紅潮しているが、単に恥ずかしいだけだろう。全員にリアとのキスを見られてしまったのだから。


「御主人様に見られて興奮しちゃったウサ?」


「だからしてないってば!! ほら御飯時にそういう話題は禁止よ禁止!!!」


 シィナは声を張り上げて、少しだけ乱暴に椅子に座る。


「えー……これわたしがおかしいんですかね」


 ココノハは納得いかないといった表情でポツリと呟いた。全員が着席したので、誰からともなく手を合わせる。


「いただきます」


 全員で声を揃えてからリアが作ってくれたシチューを堪能する。鶏肉が柔らかく煮込まれており、人参などの野菜にしっかりと味が染み込んでいた。かなり手が込んで作られている。


「美味しい、かなり手間をかけて作ったのだな」


「そうですの! 具が柔らかくなって味が染み込むまでしっかり煮込みましたのよ」


 リアは頬に手を当てながら嬉しそうに微笑む。


「リアったらそこまでやる必要あるの? ってくらい凝りだしちゃってさ。昨日の夜から準備していたのよ」


 シィナは肩を竦めてからシチューをひと掬いして口に運ぶ。


「どうせやるなら徹底的に、ですわ。それが愛しい方のお口に入るものなのですから、気合いも入りますの」


「それにしても美味しいです。リアさんがお姫様だってことを忘れてしまいそうですよ」


「えっ、リアってお姫様ウサ?」


 ココノハの発言にユキユキが反応する。そういえば伝えていなかったような気がする。


「そうですわ。わたくしだけじゃなくてシィナもお姫様ですのよ」


「リアみたいにお淑やかじゃないけどまあ一応ね」


「へーそうだったウサか……。あれ、ひょっとして私は不敬罪で死んじゃうウサ?」


 リアとシィナの言葉にユキユキは納得してから徐々に顔を青くする。二人に対してやってきたことを思い出したのだろう。かなりセクハラをしてきたのだ。そうなるのも頷けた。

 しかしリアとシィナは笑ってそれはないと手を振る。


「ここにいる間のわたくしたちは姫ではなくただの一人の女ですわ。ここではそんな権限なんてありませんし、それに同じ殿方の寵愛を受けている人を罰するなんてあり得ませんわよ」


「そうそう、だから気にしなくていいわよ。そりゃ悪戯されたら怒るけど、怒るだけで何かするなんてないんだし」


「……シィナは信用出来ないウサ。お尻ぺんぺんの恨みは忘れてないウサよ」


「それはあんたが悪いんでしょうがっ!! 自業自得じゃないのよ!」


「まあまあシィナさん落ち着いて」


 シィナは立ち上がり、隣のココノハが宥める。その後も談笑しながら食事を続け、夕食は和やかな雰囲気で進むのだった。

 食事が終わると、今日起こった出来事を全員に伝える。ユキユキは申し訳なさそうな表情をしていたが、リアたちは真剣に聞いてくれた。


「だからしばらくはユキユキを一人で外出させないようにしようと思う。基本的には私が付いているが、皆も気に掛けてもらえるとありがたい」


「承知致しましたわ。もしわたくしが付いていた時に遭遇してしまった場合は、魔術を展開してもよろしいのでしょうか?」


「ああ。ユキユキの安全が最優先だ、なるべく周りに被害は出さない方が良いが、理想論だな」


 リアが魔術を使用すれば周囲へある程度の影響が出るだろうが仕方ない。それでユキユキに何かあったら目も当てられないことになる。


「あたしは一緒に出掛ける時は槍でも持っておこうかしら。得物があればユキユキも守れるしね」


 そう言ってシィナは笑った。ココノハは真面目な顔で考え込む。


「それならしばらくユキユキには塔にいて貰えば良いじゃないですか。それなら万が一も起こりませんよ」


「たしかにココノハの言う通りだが、ただでさえユキユキは冥界に篭っていたのだ。一人で自由に……とは状況が許してくれないが、あまり束縛してやりたくはないのでな」


「それはそうかもしれませんが……。ユキユキ、あなたはどうなんです?」


「私は……。私は、また街に行きたいウサ。大きくなってから初めて見る街はどれも新鮮で、とても楽しかったウサ。もちろん、みんなが私のことを考えてくれてるのが凄く分かって、ありがたいウサ。だから御主人様の言い付け通り、絶対一人にはならないウサ。約束するウサ」


「はぁ……絶対ですからね! 何かあってからじゃ遅いんですから!!」


「分かってるウサ!」


 ユキユキの願いを聞いて、真剣な表情を見て、ココノハは折れた。


「ココノハ、ありがとウサ」


「あなたに何かあったらみんなが悲しむんですからね。それだけは覚えておいてください」


「うん……分かったウサ」


 全員とユキユキの事情が共有できたので、方針を決めてからそのまま今日はお開きとなった。ユキユキは何度も何度も感謝の言葉を口にしていた。その瞳から一粒の涙が溢れていたが、誰もそのことには触れなかった……。


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