第5話 最強になって戻って来やした
ダンジョンの扉が開かれるたびに。
ロイフルとルボック、3兄弟ゴブリンの無双が始まる。
「いいかてめーら殺すなよ」
「魔王様御意でございます」
暴れに暴れたと思う。
2階層ではゴブリンが10体に増えた。
全員屈服させて、配下にした。
3階層ではミノタウロス2体。配下にした。
4階層ではオーガ10体。配下にした。
5階層ではオークが100体出てきたので、死闘の末配下にした。
6階層ではリザードマンが200体出たので全て配下にした。
7階層では……
その繰り返し。
気の遠くなる戦い。
殺さないという過程はとてつもなく難しい。
だが、戦う程にロイフルと配下達が強くなっていく。
どうやらダンジョンでは配下が死ぬと、1階層で蘇るらしい。
その度に配下は鬼気として階層を登ってくる。
そうして、何度も何度も繰り返した。
戦略はルボックが練る。
後はロイフルと配下達が暴れる。
ダンジョンの地形を利用し。
四方が岩だったり、四方が海だったり、四方が山だったり。
階層を登るにつれて見た事も無い景色が広がっていく。
ついに99階層に辿り着いた時。
後ろには尋常ならざる軍勢を引き連れていた。
モンスターの数100万体。
「よーし」
「おめーすげーな」
ルボックの感嘆の声に。
お風呂に数か月入っていない。
そのせいで、頭が物凄くかゆい。
飯は基本的に森系の階層に辿り着く度に木のみとかを回収したりした。
モンスターはダンジョン内では空腹になる事は無いらしい。
ロイフルは100万の軍勢を引き連れて最後の階層に辿り着いた。
闇色の玉座。
そこに座っているのは骨の鎧を身に纏った。
人間のような炎の魂の塊だった。
大きさは巨人くらいあるだろう。
そいつは、2本の剣を引きぬきざま、10万のモンスターを両断して蒸発させていた。
「うわっと」
「うわっとじゃねー少しずれてたら死んでたぞ」
背後の扉が両断されて逃げられなくなる。
死んだモンスターの配下の蘇り増援も期待出来ないだろう。
「よし、90万の配下よ突っ込んでくれ」
【御意】
90万の蟻、ではなくて、モンスターが突進していく。
「よし、ルボック作戦頼む」
「わかってるよ、あいつはどうやら両断した後動きが遅くなる。その隙に懐に入って、お前の特異なバカ力宝剣で鎧を叩き割れ」
「おうよ」
走り出す。
生きてるって楽しい。
こんなに戦う事が楽しいとは。
たぶん11か月も戦い続けたと思う。
外に出れば、きっと1時間くらいしか経っていないのだろうけど。
「うわああああああああ」
命を懸けるってこんなに楽しいのか。
ロイフルは跳躍する。
宝剣を振り。
思いっ切り簡単に鎧を破壊。
ロイフルの力はもはや普通ではなくなっている。
自覚はある。
「うぉあああああああああああ」
そのまま、炎のような肉体に宝剣をぶち当てる。
何度も何度も。
その度に、ヒビが入る。
殺したい訳ではない。
物凄く楽しくて、楽しくて。
これが世界一最強だった父上が見ていた世界。
そして優しさの世界。
「なぜ止まった」
それはその化物からの声だった。
「止めは刺せただろうに、お前戦うのが楽しいのか」
「なら、殺せばよかろうに」
連続で問いかけられる。
だが、ロイフルは宝剣を鞘に仕舞う。
剣は刃が潰れており、生き物を殺せない。
だが、何度も叩きつければ、殺せることは知っている。
「お前は強いよ、ぜひとも配下に欲しい」
「御意、魔王様、我が名はヅゲルドン」
「じゃあ、ヅゲルドン、頼むよ」
そうして、その鎧と魂の姿のヅゲルドンは左肩に乗った。
まるでミニチュアの魂のような姿になり、魂の骸骨の剣士。
それがルボックとは対照的に座っている。
その時だった。
配下100万のモンスターの軍勢が頭を垂れている。
「皆聞いてくれ、俺はこのダンジョンをクリアした」
全員が沈黙している。
「これから俺は八個の世界の王となる。だからこのダンジョンも一つの国だと認識したい。だから、皆にはこのダンジョンを守ってもらいたい。軍勢が必要なとき、いつでも呼ぼう」
その時、100万の軍勢のモンスターが沸いた。
声が至る所から沸き上がり。
1体1体が泣き叫ぶように喜んでいる。
「こりゃーたまげたわ」
ルボックが頭を押さえている。
「お前まじで八個の世界の王になるな、こりゃ」
「よーしてめーら俺は戻るぜ」
そう呟きながら、巨大な扉を開く。
外に出ると。
ジョド村長がこちらを見ている。
ロイフルはもう16歳になろうとしている。
この村に15歳になって来て、数日で16歳になるという謎の修行。
1年間髪の毛も髭も剃らずに、もじゃもじゃ姿になりながらも。
ジョド村長とドーマスとピエロトとチャニーはこちらを見て笑い。
「おめーバカだろ」
それがジョド村長の第一声。
「全て見ておったぞ、わしはどこでも見る事が出来るからのう」
意味深な事を呟きながら。
「さぞや疲れたろう、どうやらわしから教える事はあまりないようじゃ、ハルニレムもまぁまぁ教え込んでおったようだしな、さてお風呂入って、髪の毛を整えて、髭を剃って。世界を統一する話をしようじゃ」
そうして、俺の人生、いやロイフル・ゴッド・エルレイムの物語が動き出した。




