第3話 おいお前、この角おもれーな
何かが八本の角を揺らしている。
思いっ切り引っ張られている感覚。
そうして、瞳をぱっちりと開けると。
「うわあああああああ」
と焦って意味不明な叫び声をあげて空をばたばたと飛び回る何か。
正確には小さな羽が生えており、精霊のような何か。
ジョド村長の家の屋根裏で寝ていたらなにかが飛び回っている。
「おいお前、この角おもれーな」
それがロイフルの眼の前でばたばたと飛翔する小さな小人。
ルボックとの出会いだった。
「いいかお前、間違ってもこのルボック様を踏みつぶすなよ、か弱くて小さいんだからな」
飛翔している。
ぽっちゃりとした体。
だがそいつには両腕が無かった。
「いいか、両腕が無くてもな、見えない手でこんなことも出来るんだぜ」
そう断言したルボック。
男なのか女なのか抽象的すぎて分からない。
あの滅茶苦茶重たい剣をぶわりと浮かせていた。
「この見えない手にはルールは適用されない、重たいものも、触れないものなんてない。完全なる手なんだぜ」
「君は別な世界から?」
「おうよ、第五の世界から来た。一般的には精霊の世界なんて呼ばれてるなぁ、このルボック様はな、精霊の力を使えるのだよ」
そんなことを呟きながら、ルボックはロイフルの右肩に小ぢんまりと座るようになった。
それが心の底から大事にしたいと思える最初の仲間だったのかもしれない。
「このルボック様が、おめーにまだあったことのない仲間って奴を紹介してやんよ、ただ、えーとピエロトとドーマスと、チャニーは会ったよな?」
「ああ、あったね」
「なぁんだ。もう現在いる奴等は完成してるじゃないか、さてと、このルボック様の出番はなくなった! さらば」
とか言いながら空を飛ぼうとしているルボックの羽を高速で掴みながら。
「く、人間が良い気に乗るなよ」
「そのつもりはないよ、さてと」
ルボックに色々と聞こうとした瞬間。
物凄い地響きが鳴りひびいた。
その時だった。
扉が開かれた。
ジョド村長がブラシの様な物を口に加えながら。唾を吐き出す。
「ダンジョンじゃ、さてと、お主、1人で行ってこい、今回はどうやらDクラスのようじゃな」
「は?」
ロイフルの発言を無視して、ジョド村長がいなくなる。
「まぁ、がんばれや」
「お前も来るんだよルボック」
「いやー今回はお前の修行だろ? おいら関係ないじゃん」
「八世界を統べる王が野垂れ死んだら困るだろ?」
「はぁ、まぢかよ」
そうして、ロイフルは外に出る訳なのだが。
ローゴスの中心。
まるでおへそのような底から。
まっすぐに巨大な塔が伸びている。
その塔は雲の上まで続いていた。
「あれは見掛け倒し、入ると世界が広がってるだけだから」
ルボックが教えてくれる。
入り口には橋がかけられている。
水がまるで沸騰するかのように空に向かって伸びている。
ロイフルは扉の前に立つ。
後ろを振り返ると。
いつの間にか狼化したドーマスと。
チャニーに背終わられているピエロトがいた。
3人は真っ直ぐにこちらを見ている。
視線でがんばれよという合図だったようだ。
ロイフルは父上から授かったエメラルドの宝剣が腰にある事を確認しながら。
次に視線を真っ直ぐに扉の向こうに巡らし。
ルボックが逃げないように縄で肩に固定して。
「ってか、精霊使いがひどいっすよー」
そうして、人生初めてのダンジョン。
へと入った訳だけど。




