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VRドームの家畜になり損ねた30代独身カフェマスター、心拍数188の限界突破ドライブが全世界に生配信され、愛車のペダリングデータだけで国家予算級のおちんぎんを稼いでしまう  作者: 蒼波8
第11章(第2部第1章)【結愛の愛車】

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第50話:【防犯対策!】

「ふぅ……これでボトルもケージもセット完了です! 健矢さん!大将! 本当に長時間の買い出し、お疲れ様でしたーっ!」


愛機であるチェレステカラーの『Mirano7(ミラノ・セブン)』に取り付けられた、レトロな白いボトルケージと保冷ボトルを愛おしそうになでながら、結愛(ゆあ)は晴れやかな笑顔で深々と頭を下げた。


ウェア、ヘルメット、最高級のイタリアンカーボンシューズ、最先端のスマートライト、高機能サイコン、スマートウォッチ、そしてボトル。


これだけ買い揃えれば、誰がどう見ても完璧な「ロードバイク女子」の完成である。カウンターの奥で中嶋の大将も、お茶を啜りながら疲れた顔でうなずいていた。


だが——。

スパルタ鬼師匠・山崎健矢は、カウンターの椅子から重々しく立ち上がると、ニヤリと底意地の悪い笑みを浮かべた。


「おいおい、勝手に締めくくってんじゃねぇよ。まだ一番重要な『鍵(ロック)』が残ってんだよ」


「へ……? か、鍵……?」


結愛は目を丸くし、ハッと気づいたように手を振った。


「ちょっと待ってください健矢さん! 鍵なんて、そんな重くて頑丈なやついります!? だって……『ドーム型居住区収容政策』によって、旧市街を闊歩する国民は盗っ人も含めて全員ドームへホイホイ吸い上げられて、今や治安悪化の元凶なんて絶滅危惧種になったってニュースで言ってましたよ!?」


「甘い。甘すぎるぞお前は」


健矢は呆れたように頭を振り、店内の一角にあるセキュリティ・鍵コーナーへ結愛を連れて行った。


「確かに泥棒自体の数は激減した。だがな……今の時代には、人間以上の脅威が存在するんだよ。街中を24時間巡回してる『行政清掃ドローン』だ」


「ドローン……? 清掃ドローンがどうしたんですか?」


「鍵もかけずに路肩にポツンと置いてあるロードバイクをな、あいつらは『放置ゴミ』あるいは『不法投棄物』と誤認して、そのまま回収・即時解体処分に回すリスクがあるんだよ」


「放置ゴミ扱いして解体ぃぃ!?」


結愛の顔から一瞬で血の気が引いた。せっかく選んだ愛車が、見知らぬドローンにプレス機まで運ばれ、押しつぶされる光景を想像し、思わず自分の抱き枕のように車体を庇い込む。


「嫌すぎます! 私のMirano 7がゴミ箱行きなんて耐えられません!」


「だろ? だから施錠をしておくに越したことはねぇんだ」


健矢は棚からゴツい金属製の鍵をいくつか手に取った。


「盗っ人対策もドローン対策も基本は一緒だ。固定物に繋ぐ『アースロック(地球ロック)』、衝撃を感知するデカいアラームの設置、そして追跡機能の付与。この三原則が必須なんだよ」


「手間取らせて遅滞させる間に、俺たちが駆けつけて犯行なり誤回収なりを阻止する。これがロードバイク乗りの防犯の基本だ」


健矢はズシリと重い、ドイツの老舗専門メーカーA社の折りたたみ式『ブレードロック』を結愛の目の前に提示した。


「特にこの時代なら、2個目のカギはホイール個別にかけるより、同型錠での『2点止め(ダブルアースロック)』の方が効果的だと思う。構造が同じ鍵なら解錠の手間を増やさず、物理的な切断作業にかかる時間を単純に二倍に引き延ばして遅滞させられるからな」


「なるほど……解体ドローンや泥棒に『面倒くさ!』って思わせるんですね」


「とはいっても、ブレード2本は流石に重い。ドローンのグラインドカッター相手でも1分は耐えてくれるとは言ってもな。だから俺の場合は切断しにくい特殊形状の軽量ロックをサブで使ってる。」


ブレードロック2本と聞いてげんなりする結愛に助け船を出す健矢。


「それだけじゃねぇ」


健矢は自信満々に鼻を鳴らした。


「こうやって実績のある老舗専門メーカーのブレードロックでガチガチに守っておけば、万が一盗まれたり破壊されたりして泣き寝入りすることになっても対策になってくれるんだよ。タダじゃ転ばんように手厚い『盗難補償』を受け取れるようにしておくのも大事なんだ」


「補償……! 確かに、お金が戻ってくるなら精神的なダメージは減りますね……。でも、行政ドローンが誤って持っていっちゃった場合も、ちゃんと法律的に解決できるんですか?」


不安そうに尋ねる結愛に対し、イズミが結愛の視界に素早く青い法務グラフィックを展開した。


『お任せください、結愛ちゃん! 法務補足いたします! AI時代であっても、個人の資産に対する許可なき誤没収は、たとえ行政AIによる自動業務行動であったとしても【窃盗罪】が適用されます! 行政側の有罪となり、完全な補償義務が発生しますので、追跡タグ(スマートタグ)の装着は極めて有用なんですよ!』


『追加データを提示します』


結愛たちのVR端末越しに、シオンが無機質な音声を発する。


『スマートタグと行政データベースを連携させることで、清掃ドローンのアプローチ時に警告信号を発信し、誤回収率を99.8%カットすることが可能です』


「すごーい! AIの世界でも、間違えて持っていったら犯罪になるんですね! 追跡タグ、絶対つけます!」


結愛のMIRANO 7に、同型の頑丈なブレードロック1本、特殊形状の軽量サブ錠が1本、追跡機能とアラーム付きのスマートタグが完璧に組み込まれた。


「ふぅ……鍵だけで結構なお値段と重さになりましたけど……これで愛車が完璧に守られるなら安いものです!」


結愛は額の汗を拭い、晴れ晴れとした笑顔で万歳をした。


「健矢さん! 大将! ウェア、ヘルメット、シューズ、ライト、サイコン、ウォッチ、ボトル、そして完璧な防犯グッズ! ショップで買い揃えるものは、今度こそ『完全に』以上ですよね!?」


健矢と中嶋は顔を見合わせ、満足げに頷いた。


「ああ。買い出しはこれにて『完全終了』だ!」


「やったーーー!! 本当の本当に終わったぁぁぁ!!」


店内で跳びはねて歓喜する結愛。しかし、健矢はニヤリと口角を上げると、店裏のピットを親指で指さした。


「よし。じゃあ店裏のピットに移動して、この鍵を使った『正しいアースロック施錠講習』と、公道実走前の『最終車体点検』を始めるぞ。完璧に鍵がかけられるようになるまで、公道には出さん」


「また講習があるのーーーーーー!?(絶叫)」


老舗『サイクルショップGIRO中嶋』のピットに、結愛の悲鳴がどこまでも虚しく響き渡るのだった。

老舗鍵メーカーのA社のブレードロック。


ちょっと値が張りますが、ちゃんとアースロックとツーロックするなどして運用し、それでも盗まれた場合は20,000円以上の盗難補償金が降りるんです!


買い切りの保険がついてくると考えるとなかなかムネアツな商品。


ブレードの関節部も切断されにくい工夫が凝らされています。

補償を申請するときも便利なので、物理鍵タイプがおすすめです。

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