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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第三章【静寂を裂く足音】
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【影の訓練場】

【影の訓練場】


ネザリア城・訓練区画――


黒光りする広大な空間には、柱のように立つ魔導装置と、幾何学的に浮かぶ“魔力の影”が静止していた。


その場に、グレン率いる部隊が整列する。

横一列に並んだ兵たちの顔には、緊張が混じっていた。


その前に立つのは――じゅぴ。


「は〜い、おっはようございますっす♡

本日から皆さんに、“ネザリア式の基礎”を教えるっすよ〜」


いつもの軽口で、じゅぴが手を振る。


だが、その雰囲気とは裏腹に――背後に漂う魔力の圧は、確実に彼らを“試していた”。


「本日のテーマは、戦闘反応と魔力制御の初歩っす。

ふつうの軍隊式とは違って、“敵を生かさず、殺し切る”が前提なんで、よろぴく〜♡」


兵たちの中から、ひとりの若い男が小声で呟いた。


「……なんだこの子どもみたいなのが、教官って……」


その言葉は――想像以上に通った。


じゅぴの笑顔が、ピタリと止まる。


足音ひとつ立てず、彼女はその兵の前まで歩いた。

表情は変わらず、微笑んだまま。だが、空気がピキリと張り詰める。


「……今、なんて言ったっすか?」


その瞬間――


「貴様ァッ!!!」


怒号が響いた。


グレンがすでに踏み出していた。

次の瞬間にはその兵の胸倉を掴み、拳を叩き込んでいた。


ズドン――という鈍い音と共に、兵が床に転がる。


「てめぇ……どこを歩いてると思ってる……!」


「この場所は――俺たちの常識じゃ通用しねぇ!

せつな殿の城に足を踏み入れた以上、一つでも侮辱すれば――それは、死だ!!」


部隊全体が凍りつく中、グレンは深く息を吐いた。


「……すまん、じゅぴ殿。こちらの指導不足だ。責任は、すべて俺にある」


直立不動で頭を下げるグレンに――


じゅぴは、しばしの沈黙のあと。


ふっと、口元を緩めた。


「……うん。オッケーっす♡」


「おーおー、ちゃんと“隊長”してるじゃん。

その調子で“影の子”たちもまとめてくれると助かるっす〜」


軽くウィンクしながら、くるりと背を向ける。


「じゃ、訓練、始めるっすよ〜♡

さっき“子ども”って言った人、特別メニューで優しく教えてあげるっすね〜?」


「ひっ……」


兵の顔から血の気が引いていくのを見て、他の隊員たちが無言で姿勢を正した。


そしてそのとき、グレンの中にも、ほんのわずかに実感が芽生える。


(これが――“影に踏み入れる”ということか)


こうして、第七調査隊の“試練”が始まった。

それは軍の訓練ではない。“ネザリアの秩序”を学ぶ、第一歩だった。





ネザリア城・影訓練区画――


緊張が残る空気の中、グレンが場を収めると、

じゅぴはまたいつもの調子で、ふわっと彼のほうへ歩いてきた。


「隊長〜、ありがとっす♡ 今の、完ッ璧だったっすよ〜?」


「……こちらの不始末だ。二度とさせん」


「ふふ、そこも“評価ポイント”っすけどね♡」


冗談のように笑うじゅぴだったが、その瞳はわずかに鋭さを帯びていた。


「で、さっそくなんだけど……一つ、お願いがあるっす」


「なんだ?」


「まずは、“いつも通りの訓練”。

王国でやってた基礎でもなんでもいいっす。軽い準備運動でも射撃でも。

“こっちの素材”、どんな感じか、ちょっと見てみたくって♡」


「……王国式の訓練でいいのか?」


「うんうん。それでいいっす。

“どこが使えて、どこが捨てるとこか”見極めるために、ね」


さらりと恐ろしいことを言いながら、じゅぴは微笑を崩さない。


「でも安心してほしいっすよ? “いきなり壊したり”はしないんで。……多分♡」


グレンはその言葉の意味を測るように、じっとじゅぴを見た。


「……いいだろう。基礎を見せる。隊員たちの“動き”と“統率”をな」


「はぁい♡ じゃあじゅぴはちょっと離れて見てるっす。

“隊長のやり方”、楽しみにしてるっすよ〜?」


そう言って、じゅぴは少し距離を取り、影の柱のそばに腰掛ける。


その目は笑っていたが――

その奥で、静かに“分析の光”が輝いていた。


(さて……どこまでが、隊長の“器”で、

どこからが“王国のガラクタ”か――見せてもらうっすよ)


隊員たちは整列し、静かに指示を待っていた。

グレンは小さく息を吸い、背筋を伸ばす。


「――では、始める」


そして、“影の城”における、最初の訓練が幕を開けた。

先日、はじめて感想をいただいて……めちゃくちゃ嬉しかったです。


もし読んでくれた方の中で「ちょっとだけでも感想書いてみよっかな」って思った方がいれば、ぜひ気軽にお願いします

ブクマだけでも本当に励みになります!

今後の展開も、どうぞよろしくお願いします!

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