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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第三章【静寂を裂く足音】
54/159

【影の訓練場2】

ごめんなさい!更新予約一日ずれてました(´;ω;`)

遅れてごめんなさい・・・

【第三章:静寂を裂く足音/影の訓練場】


ネザリア城・第四層・影訓練区画――


「全員、列を整えろ。五列横隊、標準距離維持」


グレンの指示が響くと、兵たちは即座に動いた。

王国式の訓練で培った“型”は確かに残っており、整列・動作ともに乱れは少ない。


「腕の振り、確認しろ。脚の運びは三拍。魔力感応、構え……」


だが、その中に――微かな“温度差”があった。


(……緊張が緩んでいるな)


グレンの目が、列の端にいる二人の兵を捉える。

ひとりは動作が雑になり、もうひとりは模擬武器の手入れを“形だけ”で済ませている。


転移の緊張が解けたせいか、それともこの城の静けさが“敵地”としての実感を薄れさせているのか。


「……」


グレンは何も言わず、ただ見ていた。

まだ“見せ場”ではない。だが、その温度差は確かに気になっていた。


少し離れた柱の影――


じゅぴは肘に頬を預けながら、まどろむような視線で訓練の様子を眺めていた。


(ふ〜ん、全体的には統率も取れてるし、隊長の声も通ってる。

でも、こういう“表面だけ揃えた精度”って、実戦じゃポロポロ崩れるんだよねぇ……)


彼女の視線が、例の“手を抜いている二人”に静かに向く。


(あのへんの子たち……ちょっと“ぬるい”っすね)


じゅぴの口元が、ほんのわずかに吊り上がる。


(さて……隊長さんは、どこまで見えてるかな?)


「抜刀、間合い五歩、肉体制限なし。――模擬戦、開始」


グレンの号令で、対人演習が始まる。


兵たちは声を上げ、剣を交差させ、魔力の基本展開を確認しながら動いた。


だがその中に――やはり、明確な“温度差”があった。


演習に臨む者と、形だけ合わせる者。


声に張りがある者と、疲れたフリをする者。


それを、グレンは静かに見ていた。


(この場所で、“いつもの訓練”が通用すると考えている――それ自体が、油断だ)


そして――


(“あいつ”は、この場を見て、どう判断する……)


ちら、と視線をじゅぴに送ると、ちょうど彼女もこちらを見ていた。


にこり、と笑う。


だがその笑みの奥では――すでに“試験の採点”が始まっていた。


こうして、王国式の基礎訓練は進行する。

だがその中に、確かに存在する“緩み”と“油断”が――


やがて、じゅぴの手で“整え直される”時が来ることになる。





王国式の基礎訓練が、最後の模擬戦をもって終了した。


兵たちの額には汗。だが、その多くは“やりきった”というより――

“なんとかこなした”といった表情をしていた。


その空気を断ち切るように――


「は〜い、みんな、お疲れさまっす〜♡」


じゅぴの甘ったるい声が、場に響いた。


兵たちが顔を向けると、彼女は軽やかに歩み寄ってくる。

相変わらず、笑っていた。楽しそうにすら見える。


「いや〜、ちゃんと見させてもらったっすよ。

“王国式の基本”、なるほどなるほど〜って感じっす♡」


にこにこと、指を軽く立てながら。


「で、総評。まず“隊長”は百点っす。声も通るし、統率も完璧。

“隊”としての形も綺麗。ちゃんと“鍛えられてる”ってのは分かるっす」


そこまで言って、じゅぴの笑みが――少し、鋭くなった。


「ただし。中身の一部が――腐ってるっす♡」


空気が変わる。


「たとえば、そこの《第三列左から二番目》と、

《模擬戦の時に刃を出さなかった子》、あと《あくびしてたの、見えてたっすよ?》」


名指し。しかも正確。

兵たちの背筋が一斉に伸びる。


「ふふっ、こっちは“全部見てる”っすからね〜?」


「楽なとこだけ合わせて、見られてないと思って気抜いた人。

一人でも“そういうの”がいるとね、こっちはまとめて“処理”することになるっす」


笑顔で、じゅぴはくるりとターンする。


「だから、次――」


声が止まった。


そのまま、じゅぴはピタリと止まり、振り返ることなく言い放った。


「次に手を抜いたら、その場で殺すっすよ」


甘い声に、殺気が混じる。


その瞬間、部屋の温度が一段下がったような錯覚すら走った。


じゅぴは振り返り、再び笑顔に戻る。


「でもまぁ、今日は“初日”だしね〜? 許すっす♡」


「……じゃ、次は“うちらのやり方”いってみよっか♡」


魔導柱のひとつに、じゅぴが手をかざす。


瞬間――


訓練区画の床が沈み込み、漆黒の魔方陣が静かに起動した。


「“影の導線走行”と“殺意感知実演”っす。

このネザリアでは、“殺されないこと”が最低条件なんで♡」


にっこり笑ったじゅぴの背で――

巨大な“影の手”が、音もなく、天井から降りてきていた。


次なる訓練。

それは、兵たちにとって、“異界の秩序”への本格的な第一歩だった。

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