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Depths11~雷光と灼熱と箱舟と-way which should connect-~

箱舟(ノア)からカルドを投下したほぼ同時刻。

その投下された戦場では一機の蒼い機兵が敵を圧倒的な強さで蹴散らしていた。


 アフリカ、戦線。砂煙、硝煙、様々な煙によって視界が遮られ何も見えない。

アフリカに戦線を張っていた機兵乗り達は煙の中、狙いも定めず、正面にただ、機銃を乱射する。

「ただ1機の機兵を仕留める為に。」

その弾の雨を掻い潜り、1機の蒼い機兵が少し前に出ていた機兵を右腕で貫く。

手には何も持っていないが、その状態から蒼い機兵が腕を後ろに引くと貫いていた機兵が宙を舞い、地面へと叩きつけられる。

よく見えないが、その蒼い機兵の手首辺りからワイヤーが伸びている。

そしてその貫かれた機兵のコックピットにワイヤーが貫通し、更にその先端には銛のような物が付けられていた。

銛を射出する為の「捕鯨砲(ハープーンガン)」のような物だ。

貫通を確認するとその機兵のパイロットは頭にカルドやアズラと同じような物を付け、小声で呟く。



「・・・次」



機兵の爆発を確認すると腕へとワイヤーを引き戻す。

更に追い討ちを掛けるが如く、両腕から捕鯨砲に似た武装を発射し、2機を貫く。

次は打上げず、驚いてる相手を翻弄するが如く、腰部に備えられていた「二振りの長剣型武装で他の数機へと斬り込む。

斬られた機兵は数秒後に爆発し、視界を煙によって更に悪くする。

銛を引き戻すと、剣を正面へとブーメランのように投げる。



「く、来るな!」

「・・・ムリ。」



口元を少し笑わせるパイロット。

戦場には不似合な少女の声色で、呟く。

蒼い機兵は素早く銛を射出すると、剣を絡めとり、すぐに引き戻す。

当然猛スピードで手元へと戻る剣、その剣は戻る前に怯える敵兵のコックピットを真っ二つに斬り落とす。



「次は誰?」

「クソ!効いてるのか!?コイツは・・・!」

「対機兵機銃が全く効かないってのはどういう事だよ!?」

「知るか!分かる事は・・・撃ち続けなきゃ殺され・・・」



無慈悲にも引き金を引き続けていた機兵は爆発する。

また「銛」だ。パイロットの少女は少し口元を不満そうにさせ、右手を握る。

そして、コックピットで横へと振る。



「そ、装甲が・・・溶けて・・・!?」

「弱すぎ。面白くない。死んじゃえ・・・死んじゃって・・・」



ワイヤーが少しずつ、装甲を焼ききっている。

「銛」ではない、「鉄線(ワイヤー)」が、だ。

銛は貫通したまま、蒼い機兵が右腕を少しずつ動かすと同時に後ろの機兵を貫いたまま、地を引き摺っている。

ワイヤー自体が何かの力によって装甲を融解させている。



「・・・はぁ・・・飽きちゃったな、私。」

「やめ・・・」



命乞いの無線。

そんなものが届く前に、鉄線はコックピットの装甲と、中に居るパイロットを焼き斬る。

真っ二つにしたことを確認すると、銛を引き戻す際に直撃させ、爆発させる。



「みんな同じ。面白くない。」

「貴様らは逃げろ!・・・ガキ、俺ならば相手になるだろう。」



後ろに居た味方を逃がすと同時、他の機体よりも目立つ、大型の大砲(バズーカ)を持った機兵。

その機兵のパイロットの髭面の男が映像無線を繋いでくる。

少女は「音声のみ」で返す。



「・・・自信過剰?」

「黙れ!」

「・・・」

「何が起きた・・・?」



バズーカを発射した機兵、その機兵の放った弾頭は空中で止まっている。

蒼い機兵は左手の平を開いたまま、左腕を真っ直ぐに突き出し、もう片手で脚部の武装ラックを開き、ハンドガンを取り出す。

左腕を引き戻すと同時に弾頭を撃ち抜く。

その引き戻した時、蛇が這うような音がしていた。



稲妻(エクレイル)。・・・指先から放つ光速の鉄線(ワイヤー)。稲光の先駆放電(ステップトリーダー)のように目で見るのは難しいかもね。」

「・・・面白ェ!その腕をブッ千切って俺の武器にしてやる!」



次弾を装填すると同時、ダガー型武装を手元に持ち、突っ込んでくる機兵。

それに対し、少女は口元を笑わせる。



「・・・先駆放電、だよ?」

「それがどうし・・・た!?」



次は両手の指先からワイヤーを飛ばし、両足を縛り、転倒させる。

ワイヤーを引き戻し、自機と相手の距離を10mほどに縮める。



「・・・ここに撒いたEEnを使って、反応を起こしたらどうなるかな。」



少し地面にワイヤーを垂らし、接着させると、コックピット内で、次は両手を握る。

一瞬だった。

青白い爆発がワイヤーに沿って発生する。

勿論巻き付けられていた敵兵はボロボロだ。

残った部位から火花(スパーク)が出ている。



「・・・雷の原理と同じ、私の機体「海龍(リンドヴルム)」はEEnを変換して、擬似的に雷を発生させる。」



敵兵が逃げていく戦場でそう呟く。

「雷の原理」、それは雲から地に放たれた先駆放電に反応し、地から線条放電がそれに向け、伸びる。

2つが接触する事によって落雷が発生する。

それを鉄線(ワイヤー)海龍(リンドヴルム)のEEn変換によって擬似的に引き起こしたのだ。



「鬼ごっこは好きじゃないんだけど」



手を地に付け、火花を散らす蒼い機体(リンドヴルム)

地面から数センチ、足が浮き、背部からは蒼白い光が放たれている。



「点火。」



この一言で、真っ直ぐに稲光を走らせながら滑るように移動する。

一気に敵機の背後を取ると、光を収め、足を地に着けてからの蹴り。

蹴り倒した後は腕部からコックピットへ向けての捕鯨砲(ハープーン)射出。

だが、一機に気を取られていると頭上から5機の敵機が大斧のような武装を持ち、飛びかかる。



「・・・間に合わない・・・!?」

「ちょっとビビったが間に合ったようだな!隊長の仇・・・」

「へ・・・?」



逃げていた敵兵の一人は勝利を確信していた。

だが、乗っていた敵兵の表情は「勝利の確信」から「敗北の恐怖」へと変わる。

その飛びかかった5機の機兵は空中で爆発を起こし、木っ端微塵に消し飛んだのだ。

逃げていたが、呆然と立ち尽くしている機兵のコックピットを赤く輝く「猛獣の爪のように並んだ5枚の刃」に貫かれ、爆発する。

爆発した機兵の残骸を投げ捨てると、ゆっくりと蒼い機兵へと近づく「黒い機体色の大爪の機兵」。

篭手のようなものを手首に取り付け、その篭手の先端からは爪のような刃。赤い光を失い、銀色に輝いている。

篭手と手首の間には「小型の榴弾砲」が3つ並んでいた。

その機兵はゆっくりと篭手を下ろし、榴弾砲を隠す。



「カルド・・・!」

「・・・上出来だよ。ティエ。ただ・・・EEnの使いすぎじゃないか?」

「・・・ごめんなさい」

「幾ら「無限エネルギー変換」を出来るとしても、供給元が居なくなったらティエも、リンドヴルムも動かなくなるだろ?」

「うん・・・」

「だから限りなく少ない消費で、「突き殺す」といいさ。」



海龍(リンドヴルム)に搭載された能力は2つである。

1つはワイヤーを扱った武装に搭載された「敵機エネルギーの吸収」。動力源はガソリンでも石炭でも何でも構わない。

それは2つ目の能力でどうとでもなる。

そして2つ目の能力、エネルギーの「EEn変換」。指から放たれるワイヤー、ハープーンなどで吸収したエネルギーをEEnへと変換する。

「例え吸収した燃料(もの)が未知の物質」でも構わず、変換する機構を搭載している。

この2つの能力を扱うには「生体CPU」として少女ティエを扱う。

ティエにしか扱えない機体、それが「リンドヴルム」。



「そうだ!カルドは何人殺したの?」



唐突にカルドに尋ねる。

声色は兵士を殺している時とは違い、とても楽しげだ。



「君から言ってごらん、ティエ。」

「・・・500・・・?うーん・・・?600機・・・?もっとかなぁ」

「よく何日間も戦えたね、偉い偉い。」

「えへへ・・・カルドは?」

「覚えてないかな。大体はティエが倒しちゃったから残りだよ。」



爪を振り上げ、旗艦に合図する。

強烈な風圧を起こしながら、箱舟(ふね)が着陸する。

光学迷彩を解除し、銀色の船体を露見させる。



「さぁ、帰ろう。」

「うん!」



 ドッグ内、二人はヘルメットを外して降りる。

念の為機体に拘束具は装着される。

艦長曰く「万が一でもパイロットの精神状態が狂い、暴れ出したら手をつけられない」との事らしい。

ゆっくりと降りてくるカルドと青い髪の少女、ティエ。



「EEn吸収量は・・・ふむ、これだけあれば十分だ。ご苦労、ティエ。」

「カルド褒めて!」

「ティエは偉いなー」



ティエの頭を撫でるカルド。

外から見れば兄と妹のような身長・年齢差だ。



「艦長、これでここは・・・」

「第二ステップで終了だ。とりあえずしっかりと手すりに掴まっていてくれ。」

「了解。ティエも分かったかな?」

「うん。」



二人はその場の手すりへと掴まる。

艦長も手すりへと掴まり、軍帽を被りなおすと、無線機を取り出す。



「EEn供給率!どうだ!?」



艦内のスピーカーから反応が来る。

ノイズ音の後、返答が聞こえる。



「此方アズラ。100%。いつでもいけるぜ。」

「艦内全員に告ぐ!全員振動に耐えられる様、準備をしろ!」

「まさか・・・」

「ここにも「アレ」が存在する。ここを焼き払い、奪いに行く。」

「そう・・・ですか。」



目を伏せ、艦長の言葉を聞き入れる。

「アレ」というのは恐らく「箱舟(ふね)のパーツ」だろう。



「アズラ、やれ!」

「高出力熱波砲・・・放射!!」

「うわっ!?」



足元が揺れ、バランスを崩す。

その後も地震のように少し、揺れが残る。



「アズラ、無事かね?」

「何とかな・・・機体はボロボロだけど。」

「アズラ!!」



衝動的に走るカルド。

向かうは2階、船首近くの主砲だ。

 船首、誰も使う事の無かった「外部主砲」、そこへのドアへと手を掛ける。



「熱っ・・・」

「やめるんだ!カルド!!」

「明!」

「今外に出れば君も溶けるぞ!?・・・いや、君だけじゃない、艦内が大変な事になる!」

「でもアズラは・・・」

「大丈夫だよ、耐熱装甲を内部・外部共に装着している。熱波が収まればすぐに出れる。」



安心からか、その場で座り込む。

安堵の息を漏らす、が、外部主砲がどうなっているか、それだけが気になる。

目線で気づいたらしく、明は口元を笑わせ、肩を叩く。



「安心するんだ、あくまで「戦艦主砲」に「機兵武装」を接続しただけだ。それに対機兵戦艦用の装甲だ。排熱に難は出るが、パイロットは問題無い」

「・・・つまり、どういう事なんだ?」

「この箱舟に積載されていた船首主砲「タウルス」。あれに熱波砲を接続、そして元の砲弾用EEnエネルギーをその熱波砲と同調。つまり・・・」

「・・・超弩級熱波大砲「タウルス」として運用した訳か。」

「そう。元からタウルスは機兵での発射を前提としていたから・・・」

「確かに、あのバカデカい筒を生身の人間がスイッチ一つで撃てる気はしないな。」



そう、対要塞戦艦主砲「タウルス」はとんでもない大きさだ。おまけに発射スイッチは外側からタウルスの砲手席に入らなければ押せない。

勿論、そんな所にあるスイッチを生身の人間が押し、撃てば一瞬で反動によって木っ端微塵だろう。

その為、タウルスの砲手席は「機兵サイズ」に作られている。

機兵であれば多少の反動で済む。

今回のケースは別だが。



「外が気になるな。」

「間違えても「いつもの場所」へは行っちゃダメだよ。」

「分かっている。・・・しばらく待つとしようかな。」



「いつもの場所」、恐らく甲板だろう。

あの場所は外に露見している。

 ドッグ、アズラが戻るまでドッグで時間を潰す事にした。

明は「タウルスの調整をモニターで行う」との事で残った。



「カルドか。」

「艦長、どうかしましたか?」

「君に任務を連続ではあるが、出したい。」

「・・・回収、ですか?」

「・・・ああ、だが熱波で非常に危険な場所だ。この周辺は機兵で歩く分には問題は無い。だが、着弾点付近となれば・・・」

「やりますよ、俺の任務は・・・」



艦長と呼ばれている男は後ろを向く。

そして、話し出す。



「・・・今回ばかりはとても厄介だ。回収対象は「EEn加速カタパルト」の試作型。それは3基存在している。」

「3基全部の回収ですか?」

「・・・それは出来ない。」

「何故?」

「まず、「残っているかどうか」。運が良ければ3基が損傷で済んでいる。悪ければ・・・」

「全滅、ですか。」

「着弾点から少しは外れているが、爆風の範囲ではある。」



ゆっくりと歩き出すカルド。

勿論、目指すは自分の使う「ファフニール」のコックピット。



「・・・もう1つ、厄介な点がある。」

「何です?」

「今の高EEn反応で「検索者(サーチャー)」の出撃が有り得る」

検索者(サーチャー)・・・」



検索者(サーチャー)、ノルニルの所有する無人兵器だ。

機兵のような形をしているが、下半身に足は無く、常に代わりに取り付けられたブースターで飛んでいる。

頭にはカメラ、両腕には機銃、胸部にはコックピットではなく、バッテリー。

「地上で大規模なEEn反応が感知された場合発進する」

「そのEEn反応の(もと)を発見、撮影出来た場合ノルニルへと帰投」

「攻撃をされた場合のみ攻撃を仕返す」

検索者(サーチャー)とはこの3つのプログラムで動く、無人偵察兵器だ。



「攻撃はするんじゃないぞ、見つけても君に課せられた任務は「カタパルトの回収」だ。」

「了解しました。」

「・・・それと」

「はい?」

「もし検索者(サーチャー)が熱波で故障し、システムダウンしていた場合、持ち帰って来てくれ。」

「・・・了解、ですが・・・何故?」

「此方の偵察技術として使えるかもしれないから、だ。」



カルドに艦長の発言は理解できた。

何故ならノルニルの技術力は既存の軍隊では有り得ない物ばかりだ。

検索者(サーチャー)もそうだが、ノルニルの存在自体がとんでもない物だ。

「巨大な要塞都市を空中に飛ばし、周囲には接近できない様、現在の技術では耐え切れないほどの熱波を放ち続けている」

これだけで十分、信じられない話だ。

その技術力の一部を仮に、手に入れたとすれば、他の軍隊よりも頭一つ、二つ、飛びぬけた技術力を有することとなる。

運が良い場合、戦争の根絶に値する代物を手に入れる事が出来る。



「では、行って来ます」

「・・・武運を祈る。」



コックピットに飛び乗り、頭にヘルメットを被る。

そして、ハッチを閉める様、脳内で指示を出す。



「ファフニール、出るぞ・・・!」



 カルドが出た後だ、明が降りてきて、艦長に話しかける。



「・・・検索者(サーチャー)の部品が手に入れば、(ヤツ)の居場所も分かると思います」

「そうか、だが明、お前なら私と同じ事を考えているだろう?」

「既に(ヤツ)はノルニルに投降し、新日本軍は「存在しない皇」を信じ、軍上層部の命令に従い、永遠に戦い続ける、ですね?」



無言で頷く艦長。

この箱舟(ふね)の人間はほぼ全員が「皇の圧力」、「虚偽の安息」、「軍」からの脱走者だ。

「ノルニルを落とし、ノルニルの真下に有り、ノルニルに守られていた「(いしずえ)」と呼ばれている物質を確保する」

それがこの、箱舟勢力(ノア)の目的だ。



「・・・最近僕は思うのです、ノルニルを落とす事、それは平和に繋がるのでしょうか?」

「ノルニルの追放した人間(Banisher)を消す、それは地上へ追放された人間(Exile)への救いだろう?」

「・・・それが我々、追放し追放する人間(Banishile)に出来る事、ですか。」



また、無言で頷く艦長。

その頷きに、明は疑問を抱く。

「自分達はノルニルだけではなく、次はこの箱舟(ノア)に踊らされてるのではないか?」と



「ノルニルを落とせば戦いは必然的に終わる。我々が世界を「礎」により纏め上げて、だ。」

(あの空中要塞都市(ノルニル)は変換・濃縮・増幅、様々な加工を受けたEEnの塊のようなもののはず、あんなものの欠片でも地上に落とせば・・・)



明の考え通り、恐らく熱波砲の数百倍近くはある熱波バリア、更に浮力に使っているEEn、砲台のEEn

そしてカルドが「持ち帰ってこれたならば分かる兵器のEEn」、それらが全て地上に落ちる。

海が荒れ、地が再度焼かれ、「平和」どころではなくなる。

変換途中で落ちてきたらどうなるのだろうか?EEnは未だに研究途中であり、全ての科学者・人類にとって未だ未知の存在だ。

何が起きるかは分からない。



(・・・まだ時間はある。ノルニルを落とす方法は無いはず、熱波砲では打ち消される。タウルスを使っても然り。)



ただ、祈る。

回収予定のカタパルトが全て砲撃によって破壊された、という想定を。

願わくば、検索者(サーチャー)の回収失敗を。

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