Depths10~残された戦士達は~ Depths10.5~疑問者~-BanishileSide Story-
忠司達が戻って来るまでの残された兵士達。
怜治と怜奈は警備任務に就かされていた。
その時と同時刻、他国の空では巨大な戦艦が「飛んで」いた。
これはまた別の追放された者の世界を描く物語。
中央・都市部、丁度イタリアでの戦闘が終わった頃とほぼ同時刻。
軍服を着た霧島兄妹が街中を歩く。向こうの戦線がどうなったか、それも知らされずに。
警備任務に就かされたが、周囲の景色に気を取られ、警備どころではない。
何故なら「大戦が起きる前」と同じような景色だから。
大地が枯れ、荒れ果てた外側、そこからまるで「隔離」されたかのように、都市が栄えている。
「・・・めんどくせえと思ったけど・・・すげえな、これ」
「うん・・・本当に・・・」
「・・・しかし、得な任務だよなぁ、歩いてるだけで食い物は貰えるし、景色は見て回れるし・・・」
「かなり中央支部基地が都市を守ってきた、って事だよね」
「ああ、俺達もしっかりしないとな。」
自らの顔を叩き、気合を入れる怜治。
だが高層ビルを眺めながら歩いてしまう。
「まるで楽園だよね・・・ここ」
「・・・ああ、ここが楽園だとするなら、ノルニルはどんな所なんだろうな・・・」
「追放する者達の楽園と、追放された者達の楽園・・・か」
空を見て、思い耽る怜奈。
空の向こうには巨大な空中都市が存在している真実。
そこには自分達、地上で戦いを続けている人間を見下し、傲慢な生活を送る追放者が居る。
攻撃されなければ、攻撃することも聞いた事が無い、そんな空中都市が存在している。
「・・・しかしよ、ここはよく敵軍やら野盗が来るってのに何でノルニルは攻撃されないんだろうな。」
「噂だと、攻撃はされていても「どんな攻撃でも迎撃し、消滅させる」とか「円形の中央に存在する地上数千メートルの「柱」の加護」とか噂だらけだよ」
「・・・数千メートルの柱?」
「・・・千メートルかどうか、柱かどうか、分からないけど、何かが中央にあるから攻撃されない、とか。」
「それも・・・攻撃した奴が消滅えちまってるなら分からない事だな。」
「消滅ではなく、正しくは融解と聞いていますよ」
二人の横から歩いてくる少年。
倉敷大河だ。
薄緑を演習で破壊してしまい、今は警備任務中らしく、軍服だ。
「倉敷・・・だっけか、お前。」
「倉敷大河です。」
「・・・んで、融解っての・・・何だ?」
「兄さん・・・」
二人は怜治を哀れむ目で見つめる。
「な、なんだよ、お前等・・・まるでバカを見るような目で見やがって・・・」
「い、いえ!そんな事は・・・」
「・・・いいんだよ、大河君、兄さんバカだから。見ての通り。」
「へいへいバカですよーっと」
完全に拗ねてしまった。
大河は何とか機嫌を取ろうとしているが、それを怜奈が止める。
「そ、それで融解、ですけれど、近づいた機兵が超高熱の熱波を受けて溶けた、という報告がドイツの支部から・・・」
「つまり、氷がお湯に突っ込まれたみたいな感じか!」
「・・・融解は合ってるけど・・・」
「EEn変換による高エネルギー波を常時あのノルニルから放射してる、って説が有力らしいですよ。」
「コウエネルギー?イーイーエヌ?なんだそりゃ」
完全に呆れる怜奈。
必死に分かりやすい例えを考える大河。
そして、頭を抱えている怜治。
3人全員考える事は別だ。
一人は呆れ果て、もう一人は助けようとし、そして最後はもう放り投げている。
「そうですね、例えば太陽があるでしょう?」
「・・・ん、ああ。あるな。」
「あの太陽に近づいたロケットはどうなりますか?」
「どうなるんだ?」
大河は完全に困りきっている。
今度は此方が頭を抱え始めていた。
「えーっと・・・えーっと・・・そ、そうだ!炎の中に氷が自分から入っていく、これでどうなるか分かりますね。」
「溶けるな。」
「・・・兄さん、その答えが最終結論だよ。」
「ハァ!?ちょっとバカにされすぎだろ!?」
「現にバカだから!バカだからね!」
「ふ、二人共・・・喧嘩は良くないですよ」
「んで・・・ノルニルからずっと炎が出てる、って事か?」
「簡単に考えてもらうと、そんな感じですね。機兵を一瞬で溶かすほどの炎が出てて、そこに入ると1秒も保たない・・・」
これでは完全に都市ではなく、「兵器」だ。
エネルギー波を発したノルニルが地上へと接近すればどうなるだろうか。
もしくは、地上の軍隊がノルニルを撃墜したとして、地上は無事だろうか。
「それでよ、いーいーえぬ?だっけ?それ何だ。」
「EEn、エレメントエネルギー。数年前に発見された万能素子です。怜治さんは、映画とかは好きですか?」
「ん、好きだけど、それとどう関係しているんだ?」
「たまに「光を纏った剣」とか「レーザーを撃つ銃」とか出てくる映画、ありますよね。」
「あぁ、あるな。それとどう関係があるんだ?」
「それが作れるようになる、その素子が「EEn」です。」
「なんだと!?」
「ひっ・・・」
突然大声を上げる怜治。
それに驚き、竦む大河、まるで小動物だ。
震えてしまっている。
「兄さんがごめんね。」
「は、はい・・・」
「マ、マ、マジ・・・マジかよ・・・それを機兵に搭載すれば・・・」
「レーザー武装はまだ実験段階で、どの国も完成していないんですよね、残念です。」
「んで、どうしてそのレーザーを作るEEnから火が・・・」
「兄さん、そこまで来たら分かるでしょ。」
「ん・・・全く分からん。」
「万能素子、ですよ。何にでも変化する、そういう気体だったり、液体だったりするんです。」
もはや説明する二人は呆れ返っていた。
その時だった。
目の前を歩いていた女性に、男性が激突し、鞄を奪い去って行った。
引ったくりだ。
「大丈夫ですか!?」
「大河、だったか?ちょっとその人の様子見とけ、怜奈もだ!」
「う、うん!」
引ったくりを怜治が全速力で追いかける。
片手を軍服のポケットに入れ、拳銃を取り出す。
「止まれ!」
スライドを引き、威圧を掛ける。
周囲の一般市民はその行動を行った怜治に注目している。
怯える様子も無く、市民はその行動を黙って見ているだけだ。
「悪いが軍のカンカツカ・・・だっけな、だから発砲許可は下りてるんだ。鞄を返してこっちに・・・うおっ!?」
引ったくりも拳銃をすばやく抜きだすと、怜治の頭の横に向け、撃ち、すぐに逃げる。
この行動には市民も驚き、散り散りに逃げだす。
「逃がすかよ!」
「うっ・・・」
脚へと向け、銃を撃つ。
直撃したが、流血も無く、そこにはただ、一本の長い棒が張り付き、拳銃の銃口とワイヤーで結ばれていた。
テーザー銃、相手を殺さず、電流によって無効化する武器だ。
所謂「中距離まで届くスタンガン」だ。
「さぁ観念しろ!」
腕を叩き、引ったくりのリボルバー拳銃を奪い取る。
そしてテーザー銃のワイヤーを腕に巻きつけ、手錠代わりにする。
「動いたら引き金引いて電流流すからな。基地まで着いてきてもらうぞ」
鞄を片手で拾い上げ、歩き出す。
途中に居た怜奈と、ひったくられた女性に鞄を返す。
「あー、引ったくりに頭に来ると思うけど殴らないでくださいね、殴ったらアンタも裁かなきゃならなくなる。」
「兄さんにしては物覚えが・・・」
「うるせえ、連衡してくるから倉敷と任務続行してろ。」
引ったくりの尻を蹴りながら、基地へと戻っていく怜治を二人は見ていた。
「・・・怜治さんって」
「正義の味方気取り、っていうか・・・行動が早いっていうか・・・まぁ、バカね。」
「カッコいいですよね」
「はぁ!?」
目を輝かせている大河。
それを見て驚きのあまり、引き笑いをしてしまう。
あの「がさつで脳足りんの喧嘩っ早い怜治をカッコいい」などと言いだすから。
ただ、怜奈は「正義感」だけは認める事が出来た。
「まぁ、頭が足りてるならマネしてもいいんじゃない?ただ・・・間違えても・・・」
「・・・勉強を怠っちゃダメ、って事ですね。」
無言で頷く怜奈。
そして二人はまた、任務に戻るのであった。
Height10
同時刻・イタリア上空
超弩級レベルの飛行戦艦が飛んでいた。
連合の「一角鯨」など目ではない大きさだ。
その巨大な鉄の塊が、瞬間的に消える。
戦艦下部からは釣り糸のように透明だが、太いワイヤーが2本、垂れている。
ワイヤーを巻き上げて、下部のハッチに回収されていく機兵。
その機兵の一機は「忠司達を襲った機兵」だ。
もう1機の機兵はシュヴァルツベースで、手首から指の先以上まである巨大な篭手、その先から巨大な爪を生やしている。
巨大な「影」はこの戦艦の仕業だ。
内部では、回収された機兵の手足を鉄の輪で拘束し、動けなくしていた。
「ご苦労」
「クソが!!放せ!!」
ドッグでは日本人だろうか?日系の顔をした巨漢が、機兵に対し敬礼をしている。
その横にも日系人の好青年だ。黒い髪に、軍帽、黒い軍服を着て、腰には軍刀をぶら下げている。
「艦長、ここは僕がやります」
「頼んだぞ、「明」・・・」
軍刀を持った日系人の名前は「明」。
その明は忠司達へと襲い掛かった機体のハッチを外す前に、横にある「動力停止」のボタンを押す。
すると内側から声は何も聞こえなくなる。
そしてハッチを開けると、そこには「緑髪の男が頭から目に掛けて巨大なコードが大量に付いたヘルメットを被っている。
これでは視界が見えない。
おまけにそのコックピットの中には「操縦桿」も存在していなかった。
もう1機の機兵のハッチを開くと、中から黒い癖下の男が、同じ様な状態で露見する。
此方の男は少し口元を笑わせながら、ヘルメットを外す。
緑髪の男もその音を聞き、自分の頭に付けられたヘルメットを外す。
「・・・これで983機目だ。あと17機・・・」
「よく冷静でいられるな!カルド!!こちとら完全にブッ壊し損ねて機嫌が悪・・・」
カルド、と呼ばれた男は手刀を緑髪の男の首元へと叩き込み、気絶させる。
気分が悪そうに目を閉じ、艦長から黒いコートを受け取ると着て、口角を下げ、歩き出す。
「アズラはまだ不完全・・・か。悔しいよ、俺も不完全になりたかった。」
「・・・」
そう明の横を通りかけ、呟く。
緑髪の男はアズラと言うらしい。
「ティエはまだ帰っていないのか・・・?」
「任務の真っ只中、恐らく今はアフリカ辺りだろう。」
「・・・燃料は保つのか?」
「まさかカルド、君があの機体の特性を忘れたのか?」
「そういえば・・・そう、か。では今日はいつもの四人では集まれないのか。」
階段を登り、2階、3階と上がっていく。相当巨大な戦艦だ。
そして最後の階段だろう、上にハッチがある。
そのハッチを開けてその上へと上がる。
そこは、風が吹き抜ける「屋上」のような場所だった。
最先端光学迷彩により透明化しており、足元は完全に何もない。
空中を歩いている間隔で、何もないところへと体重を預ける。
手すりか、壁か、何かがあるようだった。
「・・・龍・・・あの機体を扱えるのはティエだけ、か・・・」
「そうでもないんじゃね?」
タバコを1本箱から抜くと、現れた緑髪の男、アズラは火を付けた。
先程までの狂乱状態ではなく、冷めた瞳の奥に凶暴さを秘めた目をした、長い緑髪を後ろで縛っている男だ。
カルドへと近寄ると、一本タバコに火をつけて渡す。
「・・・俺は煙は苦手なんだ」
「そうだったな。悪ィ。」
二本纏めて吸うアズラ。
その煙を手で払うカルド。
「・・・お前は言われてるだろ?カルド。」
「何をだよ」
「最適化。お前は済んでるって。海龍や怒れる蛇に乗れるだけの「頭脳(CPU)」は出来上がってるんだ。」
「・・・最適化、ねぇ。」
空を見上げ、小声で呟く。
「最適化」。
その単語について、溜息を吐いてから話し出す
「・・・あんなの面白くも何とも無い、人間として、何かを失う。」
「・・・どうせ、俺らはそれでいいんだろ?結局はこの箱舟を使って制圧する為の駒でしかないんだ。俺らは。」
「そうだな。・・・それで、迦具土はどうだった。」
カグツチ、それがあの熱波を放った機体の名前だ。
高温の熱波を扱う機体には相応しい名前ではある。
「・・・ダメだ、熱波砲にカグツチ自体の装甲が耐え切れてねえ、それに完全に敵機兵装甲は消し飛ばせない。」
「・・・やはりムリかもしれないな・・・」
「ムリでもやるしか無いんだろう。上の命令だ・・・」
階段を上がり、ハッチを開けて出てきたのは明だ。
軍刀を抜き、天へと掲げている。
そして一振りすると、鞘へと収める。
「明、遅かったね。」
「熱波砲の整備、カグツチ自体の見直しでね、欠陥が多くて手間取ってしまった。」
「どの辺だったんだよ?」
「まず耐熱装甲、あれでは溶けて当然だった。」
「じゃあどうするんだよ!?」
「カグツチには「熱波砲と一体化」してもらう必要性が出た。」
「・・・どういう事だ、教えてくれ、明。」
明の肩を叩くカルド。
砲台と一体化、どういう事なのだろうか。
「熱波砲と同じ構造で装甲を作り、砲塔のエネルギーと機体のエネルギーを直結させ、同調・外側にEEnで作られた防護シールドを張る。」
「随分と積極的だねぇ、上は!楽でよぉ!いいよなぁ!」
「・・・乗りたくないなら、僕が変わってもいい。」
「明・・・」
意外な発言だったらしく、二人は唖然としていた。
「お前は適正外だろ?あの機体。俺がやるしかねえんだ。だから俺にやらせろ。」
「・・・すまない。君にムリをさせるようなマネをして。」
「ムリ?バカ言うなよ、俺は最適化が済んでないだけで嫌じゃないんだよ」
明の背を叩き、笑顔を見せる。
伸びをすると、アズラはハッチを開け、階段を降りていく。
完全に降りた事を確認すると、明を軽く、カルドは睨みつける。
「・・・カグツチを改修するのは熱波砲との一体化だけじゃないんだろ?」
「・・・・・・どうしてそう思うんだい?」
「・・・お前には、ティエの事がある。言え。」
首根っこを掴み上げ、左手で拳銃を持ち腹部へと突きつける。
明は両手を挙げ、降参をジェスチャーする。
「流石カルドだよ、最適化の真実も知っていれば考えている事まで・・・」
「御託は良い、さっさと教えてくれ。俺は・・・撃ちたくないから。」
「分かった。」
拳銃を仕舞い、首根っこを掴んでいた手を放す。
そして後ろを向く。
「カグツチに「擬似第三世代航空戦艦エンジン」を搭載する。」
「・・・擬似?第三世代・・・?」
「ああ、箱舟に積まれた第三世代エンジンに似せた、半永久機関エンジンだよ。」
「・・・狙撃、爆撃型の機体に必要・・・なのか?」
「現在の熱波砲の改修案を思い出してみてくれないかな」
熱波砲の改修案。
それは機体エネルギーと砲台から放たれるレーザーエネルギーを同化させる。
そのエネルギーの一部を機兵の装甲の上からシールドとして張る。
この2つの改修案だ。
「・・・まさか」
「そのまさか。第三世代エンジンの技術を転用し、エネルギーコアを作る。」
「エネルギーシールド案は?」
「・・・取り入れない。全てのエネルギーを砲塔と排熱の熱波に集中させる。」
「それじゃあ・・・アズラは・・・!」
手で目元を拭う明。
それで全てを察する。
「・・・すまない、命令なんだ・・・この戦法で次のカグツチの出撃する戦で「虎神連合」を滅ぼす。それが上の指示・・・」
「・・・そう・・・か。一人の犠牲で一陣営を消す。そうする事により戦いを一つ減らす・・・って事か」
「そろそろ僕は改修に取り掛からなければいけない、今の話、アズラには言わないでくれると、助かる。」
「・・・分かってるよ。」
去っていく明。
一人残されたカルド。
突然降りだした雨に打たれながら、壁へと寄りかかる。
「・・・俺を騙し、ティエを騙し、そしてアズラも・・・」
片手に拳銃を持ち、自分の頭に突きつける。
そして引き金を引く。
空気が抜けるような音が銃口から鳴り、スライドが下がる。
空の銃をホルスターに戻し、涙を流す。
「・・・偽りの最適化・・・騙されたけど気づけた俺、気づけず、戦い続けるティエ、真実さえ見出せず死ぬアズラ・・・」
雨空を見て小声で呟く。
ずっと雨空を見ていると、ハッチが開き、兵士が現れる。
「カルド殿、出撃要請です。」
「・・・この雨で、か?」
「・・・の、ようです。凄いですね箱舟は、もうアフリカです。」
「分かった、ティエの支援だな。スリングはあるのか?」
「それは私には・・・」
コートを着なおすと、階段を降りていく。
兵士もその後ろを付いていく。
ドッグ、シュヴァルツに似た機体に乗り、頭にコードが大量に繋がれたヘルメットを被る。
無線通信が入る。
「カルド、今回はスリングはない。ティエの削ったアフリカの戦力を完全に0にし、箱舟を一時的に着陸させる。」
「・・・戦力・・・一体どの程度削れているんですか?」
「70%だ。君とその「ファフニール」ならば30%くらい余裕だろう?機体適正Aシステム最適化100%。」
「・・・出ます。」
コックピットには当然操縦桿などない。
目は見える。
聴覚は聞こえる。
刺客・聴覚、全ての感覚をヘルメットが制御している。
五感や精神、全てをヘルメットと同調させて、機体は動き出す。
何もしていない。
だが、ファフニールと呼ばれたシュヴァルツを改造した、篭手の上から巨大な爪を持った機体は歩き出してる。
「脳内で操作」しているのだ。
「動きをイメージ」すればある程度、そのイメージ通りに動く、それが「脳理想動作システム(イデアシステム)」
使用者の精神が乱れれば勿論、機兵の動きも悪くなる。
逆に安定していれば、イメージ通り、完全な動き、人間のような動きを機兵が行える。
このシステムで精神の同調・乱れ、これによって決められているのが「適正」だ。
「行くぞ!ファフニール!」
ドッグから飛び降りる。
空中で爪を展開させ、伸ばす。
その内側にある腕と手、そこには焼夷弾を使用するショットガンを両手に持っている。
そして、着地。
着地した場所は大雨の市街。
まだ街の原型は残っている。
「・・・正面に街、どうしますか」
「焼け」
「・・・はい」
ショットガンを構え、市街地へと焼夷弾を放つ。
当然対機兵用のショットガンだ、穴をあける、ガレキの山を作るだけでは済まない。
建物や木に燃え移り、炎によって街が滅ぶ。
勿論民間人など、知った事ではない。
「我々の目的は戦いの根絶」「世界の強制平和化」「世界統一」
そう頭の中でずっと、言い聞かせる。
炎により走りこんでくる三十、四十機の機兵。
ショットガンを地に置くと、一気に駆け込む。
「達成、か・・・」
突っ込んだ先で一瞬にして17機が爆発する。
ファフニールは両腕を広げ、爪を見せ付けるように立っている。
そこにライフル弾が当然撃ち込まれるが、全く効いていない。
よく見れば爪先が赤く発光し、その光が広がり、機体全身を包み込んでいる。
「・・・ジャマだよ!」
両腕の爪で一機、また一機と引き裂き、全滅させる。
そして走る。
銃声のする方向へ。
戦いの存在する、方向へ。




