第四話 現実
は、は、と短い息が漏れる。
胸が、まだ苦しい。
「夢、か……」
目を開けると、見慣れた天井が、ぼんやりと滲んだ。
中学生最後の夏祭り。
私は蓮に告白しようとしていた。
花火を見ながら告白しようと思った。
でもなかなか素直になれなかった。
来年からはもう一緒にいられないと思って焦ったから。
これが最後のチャンスだと思って緊張が増したから。
そう思えば思う程、告白するタイミングを失ってしまった。
だから帰り道で告白しようとした。
お互い何も言わずに帰り道を歩いていた。
何か言い出せる雰囲気でも無かった。
私はそっと歩みを止める。
蓮は気づかずに少し先を歩いていた。
靴擦れしたなんて嘘をついて蓮を引き止める。
泣きそうなくらい緊張していた。
蓮が私の方へと振り向く。
その時、初めて私と蓮の距離が空いていたことに気づいたようだった。
私の方へと歩み寄る蓮を止めて、
私は蓮に、
好き
と言った。
その時の私は自分のことに精一杯で、周りが見えていなかった。
返事を聞くのが怖くて目を瞑って待っていた。
そしたら、いきなり大きな音がして、目を開けたら。
蓮はいなくなっていた。
飲酒運転をしていた車に轢かれて、蓮は死んだ。
私は取り返しのつかないことをしてしまった。
蓮が死んだら告白したって意味ないのに。
蓮のことが好きなのに、肝心な時に蓮を見ていなかった。
蓮はいつも私のことを見てくれて、考えてくれていたのに。
私があの時、蓮を呼び止めなければ。
私があの時、蓮が歩み寄るのを止めていなければ。
私があの時、目を瞑っていなければ。
——蓮は、死ななかった。
馬鹿だ。
どうしようもない。
最低だ。
あの瞬間、自分のことしか見えていなかった。
自分が死ねばよかったのに。
そう思っても何も変わらない。
胸が、また苦しくなる。
じっとしていられない。
ベッドの上にいるのに、足元がぐらつくみたいに落ち着かない。
行かなきゃ。
そう思ったのか、体が勝手に動いたのかは分からない。
気づけば、私は家を飛び出していた。
蓮に会いたい。
会えるはずも無いのに、私の足は蓮が亡くなった場所へと向かっていた。




