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金貨の娘  作者: 美穂
第5章 混濁の庭

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第5章 第4節 四時の札(第2項)

わたしは土(と)地(ち)から数(すう)字(じ)札(ふだ)を4枚(まい)、

朝(あさ)と昼(ひる)の2枚(まい)の星(ほし)札(ふだ)を札(ふだ)立(た)てに並(なら)べる。



「ニクスが先(さき)に札(ふだ)を並(なら)べる先(せん)手(て)にしようか。


 後(ご)手(て)の私(わたし)がニクスより優(ゆう)位(い)な札(ふだ)を並(なら)べて、

 これで1巡(じゅん)。


 私(わたし)の後(あと)がニクスの手(て)番(ばん)で、私(わたし)よりも

 優(ゆう)位(い)な札(ふだ)を並(なら)べるのが2巡(じゅん)目(め)ね。」



「持(も)ってる札(ふだ)が同(おな)じ枚(まい)数(すう)なら、

 先(さき)に札(ふだ)がなくなるわたしの方(ほう)が、

 不(ふ)利(り)にならない?」



「これは先(せん)手(て)後(ご)手(て)で10回(かい)ずつ、交(こう)互(ご)に2枚(まい)の札(ふだ)を

 出(だ)し合(あ)う10巡(じゅん)ルール。


 先(せん)手(て)だからって不(ふ)利(り)にはならないよ。

 確(かく)率(りつ)を調(しら)べたらわからないけどね。


 市(し)場(じょう)に並(なら)べる枚(まい)数(すう)は同(おな)じ20枚(まい)。


 それまでに勝(か)ちが決(き)まらなかったら、

 残(のこ)りの手(て)札(ふだ)の枚(まい)数(すう)が少(すく)ない方(ほう)が、

 勝(か)ちになるよ。」



「…分(わ)かった。」



公(こう)平(へい)になるのかは疑(ぎ)問(もん)が残(のこ)った。



「手(て)番(ばん)のひとは選(えら)んだ6枚(まい)の手(て)札(ふだ)の中(なか)から、

 2枚(まい)の札(ふだ)を選(えら)んでね。


 1巡(じゅん)目(め)の先(せん)手(て)は、必(かなら)ず数(すう)字(じ)を2枚(まい)。


 2桁(けた)の数(すう)字(じ)になるように、

 2枚(まい)を並(なら)べて表(おもて)面(めん)を見(み)せて。


 2枚(まい)一(ひと)組(くみ)だから『貝(かい)札(ふだ)』っていうよ。


 この貝(かい)札(ふだ)を並(なら)べて公(こう)開(かい)、

 相(あい)手(て)と比(ひ)較(かく)する場(ば)所(しょ)が市(し)場(じょう)ね。


 あ、最(さい)初(しょ)に置(お)いた0の札(ふだ)の、

 隣(となり)に並(なら)べてもダメだよ。


 市(し)場(じょう)に置(お)いた札(ふだ)は取(と)り戻(もど)したり、

 表(おもて)にした札(ふだ)の前(ぜん)後(ご)を入(い)れ替(か)えたり、

 後(あと)で差(さ)し替(か)えたりはできないよ。」



最(さい)初(しょ)にわたしが出(だ)した2桁(けた)の数(すう)字(じ)は4と5。



挿絵(By みてみん)



正(せい)確(かく)なルールが分(わ)からないので、

様(よう)子(す)を見(み)て手(て)にした札(ふだ)の中(なか)から、

まずは低(ひく)い数(すう)字(じ)を2枚(まい)選(えら)ぶ。



「左(ひだり)側(がわ)が2桁(けた)目(め)、右(みぎ)側(がわ)が1桁(けた)目(め)で、

 左(さ)右(ゆう)に並(なら)べて、2桁(けた)の数(すう)字(じ)に

 なるように置(お)いてね。」



「こうすると、45の貝(かい)札(ふだ)でいいの?」



「組(く)み合(あ)わせて公(こう)開(かい)した札(ふだ)が貝(かい)札(ふだ)ね。


 お金(かね)の代(か)わりに貝(かい)を使(つか)った、

 なんて記(き)録(ろく)もあったよね。


 貝(かい)札(ふだ)はそこが由(ゆ)来(らい)なのかな。


 貝(かい)札(ふだ)も公(こう)開(かい)してから取(と)り戻(もど)したり、

 前(ぜん)後(ご)の入(い)れ替(か)えや、差(さ)し替(か)えは

 できないから覚(おぼ)えておいてね。


 これで後(ご)手(て)の私(わたし)は、ニクスよりも

 優(ゆう)位(い)な値(あたい)の貝(かい)札(ふだ)を出(だ)せないと負(ま)け。」



まだ1巡(じゅん)目(め)なので、

彼(かの)女(じょ)はわたしの出(だ)した45よりも、

大(おお)きな値(あたい)の貝(かい)札(ふだ)が作(つく)れる。



「私(わたし)の貝(かい)札(ふだ)は99ね。」



挿絵(By みてみん)



――え?



「確(かく)認(にん)なんだけれど…、

 大(おお)きな値(あたい)が優(ゆう)位(い)なんだよね?」



彼(かの)女(じょ)は2桁(けた)で最(さい)大(だい)の数(すう)値(ち)の貝(かい)札(ふだ)を出(だ)した。



「『優(ゆう)位(い)な値(あたい)』って言(い)ってたのは、

 つまり大(おお)きな値(あたい)だね。


 2桁(けた)なら99が最(さい)大(だい)の組(く)み合(あ)わせだよね。


 それで、これが『商品(グッズ)』の一(ひと)つ。」



「商品(グッズ)?」



耳(みみ)馴(な)染(じ)みがない言(こと)葉(ば)の表(ひょう)現(げん)。



「2枚(まい)の数(すう)字(じ)札(ふだ)を、

 条(じょう)件(けん)に合(あ)うように組(く)み合(あ)わせることで、

 商(しょう)売(ばい)を効(こう)率(りつ)的(てき)にする方(ほう)法(ほう)っていうのかな。


 市(し)場(じょう)に並(なら)べた札(ふだ)の組(く)み合(あ)わせで、

 成(せい)立(りつ)した商品(グッズ)の札(ふだ)の枚(まい)数(すう)だけ、

 土(と)地(ち)から手(て)札(ふだ)に加(くわ)えるんだよ。」



彼(かの)女(じょ)は土(と)地(ち)から2枚(まい)を選(えら)び、

札(ふだ)立(た)てに加(くわ)えて並(なら)べた。



「市(し)場(じょう)で商品(グッズ)を成(せい)立(りつ)させて、

 土(と)地(ち)から手(て)札(ふだ)に加(くわ)えることを、

 『報(ほう)酬(しゅう)』っていうよ。」



「市(し)場(じょう)での組(く)み合(あ)わせ…。

 これは同(おな)じ数(すう)字(じ)だから?」



スーが頷(うなず)く。



「同(おな)じ数(すう)字(じ)の商品(グッズ)で、

 双札(ペア)が成(せい)立(りつ)するよ。


 これで私(わたし)より優(ゆう)位(い)な貝(かい)札(ふだ)は、

 出(だ)せなくなったね。」



この組(く)み合(あ)わせで勝(しょう)敗(はい)が決(き)まっては、

遊(あそ)びが成(せい)立(りつ)しない。



先(せん)手(て)が99を出(だ)せば、

先(せん)手(て)が必(かなら)ず勝(か)ててしまう。



大(おお)きな値(あたい)の組(く)み合(あ)わせ以(い)外(がい)で、

別(べつ)の対(たい)処(しょ)法(ほう)が求(もと)められる。



「こういう時(とき)に星(ほし)札(ふだ)を使(つか)うんだよね?」



「ニクスはさっきは、

 2枚(まい)の数(すう)字(じ)札(ふだ)で貝(かい)札(ふだ)を作(つく)ったよね。


 今(こん)度(ど)は、数(すう)字(じ)札(ふだ)の1枚(まい)を星(ほし)札(ふだ)に変(か)えて。」



「スーの札(ふだ)より優(ゆう)位(い)になるの?」



「相(あい)手(て)の出(だ)した貝(かい)札(ふだ)の値(あたい)を、

 星(ほし)札(ふだ)で『相(そう)殺(さい)』できる仕(し)組(く)みだね。


 時(じ)期(き)が変(か)わったことを示(しめ)す札(ふだ)。」



「それなら、この札(ふだ)で優(ゆう)劣(れつ)が逆(ぎゃく)転(てん)する?」



わたしは土(と)地(ち)の中(なか)から、

二(ふた)つの斜(しゃ)線(せん)が交(こう)差(さ)した札(ふだ)を手(て)にとって、

彼(かの)女(じょ)に見(み)せる。



スーの猫(ねこ)の絵(え)柄(がら)と同(おな)じ意(い)味(み)の恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)。



「逆(ぎゃく)順(じゅん)になるのは、

 その恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)と夜(よる)の星(ほし)札(ふだ)もだね。


 逆(ぎゃく)順(じゅん)になるとニクスが言(い)った通(とお)り、

 組(く)み合(あ)わせた大(おお)きな値(あたい)は劣(れつ)位(い)に、

 小(ちい)さな値(あたい)の組(く)み合(あ)わせは優(ゆう)位(い)になるよ。


 開(かい)始(し)時(じ)と朝(あさ)、昼(ひる)、夕(ゆう)のいずれかの

 星(ほし)札(ふだ)が最(さい)後(ご)に並(なら)べられた時(とき)は昇(しょう)順(じゅん)ね。


 逆(ぎゃく)順(じゅん)になる夜(よる)の星(ほし)札(ふだ)と恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)は、

 もう少(すこ)し後(あと)で説(せつ)明(めい)するね。


 それから、自(じ)分(ぶん)の札(ふだ)を

 相(あい)手(て)に見(み)せたらダメだよ。」



「あっ。いまのは無(な)しね。」



わたしは恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を土(と)地(ち)に戻(もど)す。



「貝(かい)札(ふだ)に星(ほし)札(ふだ)を含(ふく)めると相(そう)殺(さい)以(い)外(がい)にも、

 『税(ぜい)』が発(はっ)生(せい)するよ。


 相(あい)手(て)、この場(ば)合(あい)に出(だ)された私(わたし)は、

 ニクスの出(だ)した貝(かい)札(ふだ)に含(ふく)まれる

 星(ほし)札(ふだ)の枚(まい)数(すう)に合(あ)わせて、

 自(じ)分(ぶん)の土(と)地(ち)からその枚(まい)数(すう)分(ぶん)、

 手(て)札(ふだ)に加(くわ)えないといけない。


 貝(かい)札(ふだ)に含(ふく)まれる星(ほし)札(ふだ)が1枚(まい)なら、

 私(わたし)は1枚(まい)だけ手(て)札(ふだ)に加(くわ)える。」



「相(そう)殺(さい)できても、

 わたしは手(て)札(ふだ)を増(ふ)やせないんだ。」



星(ほし)札(ふだ)と貝(かい)札(ふだ)にする数(すう)字(じ)札(ふだ)で、

次(つぎ)の商品(グッズ)を作(つく)らなければ、

手(て)札(ふだ)はさらに減(へ)ってしまう。



手(て)札(ふだ)を先(さき)に無(な)くした方(ほう)が勝(か)ちだけれど、

彼(かの)女(じょ)の説(せつ)明(めい)からはわたしの勝(か)ちは

まだ見(み)えてこない。



「ニクスから見(み)たら

 相(あい)手(て)に札(ふだ)を加(くわ)えさせるから課(か)税(ぜい)だけど、

 星(ほし)札(ふだ)が出(だ)された側(がわ)は

 『還(かん)付(ぷ)』とも言(い)ったりするね。」



「変(か)わった名(な)前(まえ)ばかりだね。」



商品(グッズ)による報(ほう)酬(しゅう)に星(ほし)札(ふだ)による税(ぜい)、

手(て)札(ふだ)に加(くわ)える時(とき)の見(み)かたで名(な)前(まえ)が変(か)わる。



「四(しい)時(じ)は商(しょう)人(にん)を真似(まね)た遊(あそ)びだもん。


 ルールには商(しょう)売(ばい)に関(かん)連(れん)する名(な)前(まえ)が

 付(つ)けられてるよ。


 私(わたし)は還(かん)付(ぷ)で手(て)札(ふだ)に加(くわ)え、次(つぎ)の手(て)番(ばん)では

 直(ちょく)前(ぜん)に並(なら)べられた貝(かい)札(ふだ)の値(あたい)に関(かん)係(けい)なく、

 好(す)きな数(すう)字(じ)の組(く)み合(あ)わせが出(だ)せる。」



「税(ぜい)って得(とく)なのかしら…。」



わたしの呟(つぶや)きを、スーは聞(き)き逃(のが)さない。



「税(ぜい)金(きん)は表(おもて)向(む)きには

 みんなが等(ひと)しく払(はら)うから、

 社(しゃ)会(かい)の会(かい)費(ひ)って言(い)われてるんだよ。


 物(ぶつ)流(りゅう)の道(どう)路(ろ)や災(さい)害(がい)から守(まも)る運(うん)河(が)の保(ほ)全(ぜん)にも

 税(ぜい)金(きん)は使(つか)われてるよね。


 疫(えき)病(びょう)を防(ふせ)ぐ清(せい)潔(けつ)な水(みず)、図(と)書(しょ)館(かん)に美(び)術(じゅつ)館(かん)、

 神(しん)殿(でん)や緑(りょく)地(ち)、公(こう)共(きょう)の手(て)洗(あら)い所(じょ)、

 街(まち)の防(ぼう)壁(へき)は税(ぜい)を納(おさ)めた住(じゅう)民(みん)の

 生(せい)活(かつ)保(ほ)障(しょう)だね。」



防(ぼう)壁(へき)に守(まも)られ、水(みず)と緑(みどり)の豊(ゆた)かな分(ぶん)水(すい)街(がい)は、

住(じゅう)民(みん)からの税(ぜい)収(しゅう)で成(せい)立(りつ)している。



分(ぶん)水(すい)街(がい)に住(す)むわたしも恩(おん)恵(けい)を受(う)けていて、

税(ぜい)の全(すべ)てを否(ひ)定(てい)はできない。



「星(ほし)札(ふだ)も上手(じょうず)に使(つか)えば、

 得(とく)はあっても損(そん)は無(な)いかもだよ。


 手(て)札(ふだ)が増(ふ)えれば選(せん)択(たく)の幅(はば)も増(ふ)える。


 でも手(て)札(ふだ)を先(さき)に

 全(ぜん)部(ぶ)無(な)くした方(ほう)が勝(か)ちになるのは、

 忘(わす)れないでね。」



「星(ほし)札(ふだ)を使(つか)って

 手(て)札(ふだ)が奇(き)数(すう)になるように並(なら)べられたら、

 勝(か)ちから遠(とお)のくんだね。」



漠(ばく)然(ぜん)と見(み)ていただけの四(しい)時(じ)の札(ふだ)遊(あそ)びも、

彼(かの)女(じょ)の説(せつ)明(めい)で仕(し)組(く)みが把(は)握(あく)できた。



「こう並(なら)べると、双札(ペア)になる?」



数(すう)字(じ)札(ふだ)の5と朝(あさ)の星(ほし)札(ふだ)を貝(かい)札(ふだ)にして、

わたしの市(し)場(じょう)にある45の後(うし)ろに置(お)くと

5が2枚(まい)並(なら)び、同(おな)じ値(あたい)で商品(グッズ)が出(で)来(き)る。



挿絵(By みてみん)



「察(さっ)しが良(い)いね。


 貝(かい)札(ふだ)は必(かなら)ず自(じ)分(ぶん)の市(し)場(じょう)に、

 直(ちょっ)近(きん)の貝(かい)札(ふだ)の隣(となり)に並(なら)べるんだよ。」



「だってサンサのを見(み)てたから、

 そのくらい分(わ)かるよ。」



以(い)前(ぜん)、サンサとマルフの札(ふだ)遊(あそ)びを見(み)て、

進(しん)行(こう)は覚(おぼ)えていた。



「2桁(けた)目(め)の札(ふだ)を前(まえ)札(ふだ)、

 1桁(けた)目(め)を後(あと)札(ふだ)と呼(よ)ぶんだよ。


 後(あと)札(ふだ)に続(つづ)く形(かたち)で新(あたら)しい貝(かい)札(ふだ)を

 同(おな)じ向(む)きで置(お)くようにすると、

 市(いち)場(ば)みたいになるからね。」



馴(な)染(じ)みのない名(な)前(まえ)も

由(ゆ)来(らい)を知(し)ると覚(おぼ)えやすくなるので、

スーの説(せつ)明(めい)は分(わ)かりやすかった。



「1巡(じゅん)目(め)で並(なら)べた45の1桁(けた)目(め)と、

 2巡(じゅん)目(め)で前(まえ)札(ふだ)にした5の数(すう)字(じ)札(ふだ)で、

 55の双札(ペア)が成(せい)立(りつ)したね。


 商品(グッズ)は市(し)場(じょう)に新(あたら)しく並(なら)べた貝(かい)札(ふだ)と、

 隣(とな)り合(あ)う札(ふだ)でしか成(せい)立(りつ)しないからね。」



「商品(グッズ)っていうのは、

 他(ほか)にも種(しゅ)類(るい)があるんだよね?」



「商品(グッズ)は3種(しゅ)類(るい)あるよ。


 双札(ペア)、十札(テン)、段札(ステップ)。

 この名(な)前(まえ)で意(い)味(み)はなんとなく分(わ)かるかな?


 自(じ)分(ぶん)の市(し)場(じょう)に置(お)いた貝(かい)札(ふだ)で、

 左(さ)右(ゆう)に並(なら)んだ数(すう)字(じ)札(ふだ)が

 同(おな)じ値(あたい)なら双札(ペア)が成(せい)立(りつ)だね。


 同(おな)じ品(しな)物(もの)を一(ひと)つ売(う)るより、

 まとめて買(か)ってくれるひとに

 安(やす)く売(う)る商(しょう)売(ばい)方(ほう)法(ほう)だね。」



「同(おな)じものだとサンダル?」



挿絵(By みてみん)



「あはは。サンダルは

 片(かた)方(ほう)だけでは売(う)らないよ。」



「あれ、本(ほん)当(とう)だ…。

 おかしなこと言(い)ってたね、わたし。」



またわたしは無(む)知(ち)を晒(さら)してしまった。



わたしには買(か)い物(もの)の経(けい)験(けん)すらない。



「十札(テン)は足(た)して10になる組(く)み合(あ)わせ?」



その名(な)前(まえ)から予(よ)想(そう)すると

スーは笑(え)顔(がお)を向(む)ける。



「正(せい)解(かい)。

 貝(かい)札(ふだ)で市(し)場(じょう)に並(なら)べた2枚(まい)の札(ふだ)の値(あたい)が、

 足(た)して10になった時(とき)は十札(テン)だね。


 3枚(まい)以(い)上(じょう)を足(た)して10にしても、

 成(せい)立(りつ)しないよ。2・3・5とかね。


 3枚(まい)以(い)上(じょう)の商品(グッズ)は別(べつ)にあって、

 確(かく)認(にん)が大(たい)変(へん)になるからかもね。


 あ、1と0って並(なら)べて10に見(み)せても、

 足(た)しても1だから十札(テン)は成(せい)立(りつ)しないよ。」



「分(わ)かるよ、そのくらい。」



「十札(テン)は、2個(こ)で一(ひと)つの使(つか)い方(かた)になる

 包(ほう)丁(ちょう)とまな板(いた)とか、蝋(ろう)燭(そく)と手(て)燭(しょく)みたいな

 組(く)み合(あ)わせで売(う)る方(ほう)法(ほう)だね。」



「これで成(せい)立(りつ)した場(ば)合(あい)はどうなるの?」



市(し)場(じょう)には5が2枚(まい)、左(さ)右(ゆう)に並(なら)んでいる。



双札(ペア)の商品(グッズ)が成(せい)立(りつ)し、

値(あたい)を足(た)せば10になるので十札(テン)も成(せい)立(りつ)する。



「ニクスが並(なら)べた札(ふだ)は、

 商品(グッズ)が二(ふた)つ成(せい)立(りつ)して『連(れん)結(けつ)』するよ。


 双札(ペア)と十札(テン)が連(れん)結(けつ)した場(ば)合(あい)、

 4枚(まい)の報(ほう)酬(しゅう)を手(て)札(ふだ)に加(くわ)えてね。


 報(ほう)酬(しゅう)で手(て)にする札(ふだ)は

 多(おお)くても少(すく)なくてもダメだよ。」



わたしはまた商品(グッズ)を作(つく)れるように、

土(と)地(ち)の札(ふだ)を選(えら)んで手(て)札(ふだ)に加(くわ)える。



挿絵(By みてみん)



「ニクスが並(なら)べた朝(あさ)の星(ほし)札(ふだ)で、

 次(つぎ)に出(だ)せる星(ほし)札(ふだ)は決(き)まったから、

 手(て)札(ふだ)を確(かく)認(にん)してね。」



「この次(つぎ)に並(なら)べられるのは

 昼(ひる)の星(ほし)札(ふだ)だよね。


 スーにも影(えい)響(きょう)する?」



「するよ。

 太(たい)陽(よう)の位(い)置(ち)を示(しめ)す札(ふだ)だからね。


 朝(あさ)の次(つぎ)は昼(ひる)、昼(ひる)の次(つぎ)は夕(ゆう)、夕(ゆう)の次(つぎ)は夜(よる)、

 そして夜(よる)の次(つぎ)は朝(あさ)になるよ。


 星(ほし)札(ふだ)には『運(うん)行(こう)の原(げん)則(そく)』があって、

 私(わたし)が次(つぎ)に並(なら)べられる星(ほし)札(ふだ)も

 昼(ひる)に限(げん)定(てい)される。


 星(ほし)札(ふだ)を2枚(まい)使(つか)って貝(かい)札(ふだ)にする時(とき)も、

 運(うん)行(こう)の原(げん)則(そく)に従(したが)ってね。」



星(ほし)札(ふだ)は太(たい)陽(よう)の位(い)置(ち)を進(すす)めることができ、

朝(あさ)、昼(ひる)、夕(ゆう)、夜(よる)の順(じゅん)に、規(き)則(そく)に従(したが)って

並(なら)べなければいけない。



ただし、例(れい)外(がい)がある。



「恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)はその原(げん)則(そく)を無(む)視(し)できるんだ。」



二(ふた)つの鏃(やじり)の先(せん)端(たん)が向(む)き合(あ)った形(かたち)の

恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)には、地(ち)平(へい)を示(しめ)す横(よこ)線(せん)が無(な)い。



「併(あわ)せて恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)も説(せつ)明(めい)しようかな。


 最(さい)後(ご)に並(なら)べられた絵(え)札(ふだ)が恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)の時(とき)は、

 夜(よる)の星(ほし)札(ふだ)と同(おな)じで優(ゆう)位(い)な値(あたい)は逆(ぎゃく)転(てん)するよ。


 恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を自(じ)分(ぶん)の市(し)場(じょう)に並(なら)べた時(とき)は、

 公(こう)開(かい)してある0の札(ふだ)、商(しょう)人(にん)札(ふだ)を

 手(て)札(ふだ)に加(くわ)える必(ひつ)要(よう)があるよ。」



「商(しょう)人(にん)札(ふだ)っていうの? これ。」



「市(いち)場(ば)で商(しょう)売(ばい)をする時(とき)に、

 店(みせ)先(さき)に許(きょ)可(か)証(しょう)を掲(かか)げるのと同(おな)じだね。」



「土(と)地(ち)に置(お)いてある0の札(ふだ)と同(おな)じだよね。」



「札(ふだ)の代(か)わりに、

 身(み)分(ぶん)証(しょう)を使(つか)ったりもするからね。」



「身(み)分(ぶん)証(しょう)?」



「ニクスはこれ、まだ持(も)ってないんだね。」



スーは、首(くび)元(もと)に下(さ)げていた

胸(むね)のあいだの布(ぬの)袋(ぶくろ)から、

銅(どう)の板(いた)を取(と)り出(だ)した。



挿絵(By みてみん)



彼(かの)女(じょ)はフランジの中(なか)でも成(せい)年(ねん)なので、

こうした身(み)分(ぶん)証(しょう)を持(も)ち歩(ある)いている。



わたしは自(じ)分(ぶん)の身(み)分(ぶん)を示(しめ)すものを

持(も)ったことがない。



「相(あい)手(て)に裏(うら)面(めん)を向(む)けていても

 手(て)札(ふだ)にした0の札(ふだ)だけは分(わ)かるから、

 同(おな)じ札(ふだ)の形(かたち)をしてなくてもいいんだよ。」



相(あい)手(て)から星(ほし)札(ふだ)が並(なら)べられた時(とき)に

土(と)地(ち)から選(えら)んで手(て)札(ふだ)に加(くわ)える還(かん)付(ぷ)とは違(ちが)い、

自(じ)分(ぶん)が恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を出(だ)した時(とき)には手(て)札(ふだ)の1枚(まい)が、

0だと相(あい)手(て)に知(し)られることになる。



「手(て)札(ふだ)が奇(き)数(すう)の時(とき)に

 調(ちょう)整(せい)できたりもするよ。」



「使(つか)い勝(がっ)手(て)は良(い)いのかな?」



「無(む)秩(ちつ)序(じょ)、なんて名(な)前(まえ)を冠(かん)した

 札(ふだ)だけはあるからね。


 市(し)場(じょう)を乱(みだ)す効(こう)果(か)があるよ。」



「でも小(ちい)さな値(あたい)の組(く)み合(あ)わせが

 優(ゆう)位(い)になるんだよね?」



「うん。競(きょう)技(ぎ)のルールはね。


 夜(よる)の星(ほし)札(ふだ)も恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)も、逆(ぎゃく)順(じゅん)には

 ルール以(い)外(がい)の理(り)由(ゆう)があるよ。」



「他(ほか)の理(り)由(ゆう)?」



――『広(ひろ)く、深(ふか)く考(かんが)えなさい。』ね。



サンサの言(こと)葉(ば)が頭(あたま)に浮(う)かぶ。



「商(しょう)人(にん)の商(しょう)談(だん)を模(も)してるから品(しな)物(もの)?

 それが夜(よる)に関(かか)わってくるんだよね。


 作(さく)物(もつ)とか?」



「植(しょく)物(ぶつ)は確(たし)かに影(えい)響(きょう)を受(う)けるね。


 日(にっ)照(しょう)時(じ)間(かん)が減(へ)れば、作(さく)物(もつ)も育(そだ)たない。


 昔(むかし)、日(にっ)食(しょく)が起(お)きて

 市(し)場(じょう)が混(こん)乱(らん)した時(とき)もあったね。」



日(にっ)食(しょく)は塔(とう)に独(ひと)りで暮(く)らしていた頃(ころ)に起(お)きた。



月(つき)が太(たい)陽(よう)のあいだに入(はい)って翳(かげ)る現(げん)象(しょう)に、

乳(う)母(ば)達(たち)は天(てん)文(もん)学(がく)への理(り)解(かい)を拒(こば)んで

酷(ひど)く怯(おび)えて逃(に)げ出(だ)した。



「他(ほか)にも毛(け)皮(がわ)にも影(えい)響(きょう)が出(で)たりね。」



「冬(ふゆ)毛(げ)だね。」



スーは頷(うなず)いて説(せつ)明(めい)を加(くわ)える。



「冬(ふゆ)毛(げ)の毛(け)皮(がわ)は、寒(さむ)い季(き)節(せつ)には

 買(か)い手(て)も増(ふ)えて高(たか)く売(う)れるね。


 夏(なつ)に買(か)おうなんてひとは居(い)ないから。


 宝(ほう)石(せき)や工(こう)芸(げい)品(ひん)なんかも

 恐(きょう)慌(こう)の影(えい)響(きょう)を受(う)けたよね。」



「恐(きょう)慌(こう)の?」



「恐(きょう)慌(こう)は価(か)値(ち)を揺(ゆ)るがすんだよ。


 需(じゅ)給(きゅう)の均(きん)衡(こう)が崩(くず)れるんだね。


 ある物(もの)の需(じゅ)要(よう)が極(きょく)端(たん)に高(たか)まると、

 供(きょう)給(きゅう)が追(お)いつかずに価(か)値(ち)が高(こう)騰(とう)するよね。


 天(てん)候(こう)に影(えい)響(きょう)されやすい作(さく)物(もつ)は顕(けん)著(ちょ)だね。


 水(すい)害(がい)や干(かん)害(がい)なんかで作(さく)物(もつ)の収(しゅう)穫(かく)が減(へ)ると、

 流(りゅう)通(つう)量(りょう)も減(へ)って物(もの)の価(か)値(ち)が上(あ)がる。


 食(しょく)料(りょう)は高(たか)値(ね)で売(う)り買(か)いされても、

 生(せい)活(かつ)に不(ふ)必(ひつ)要(よう)な他(ほか)のものは売(う)れなくなる。


 生(せい)活(かつ)に要(い)らない物(もの)は買(か)い控(ひか)えるよね。


 ダギラはどうなるかな?


 需(じゅ)要(よう)が減(へ)って市(いち)場(ば)に溢(あふ)れたら

 価(か)値(ち)を保(たも)つことはできない。」



「ダギラっていうのはなに?」



耳(みみ)馴(な)染(じ)みのない奇(き)妙(みょう)な響(ひび)きの名(な)前(まえ)。



「これからが旬(しゅん)でおいしい果物(くだもの)だね。


 形(かたち)はマリセスに似(に)てるんだけど。」



マリセスは、南(なん)部(ぶ)では夏(なつ)過(す)ぎから

冬(ふゆ)にかけてよく採(と)れる黒(くろ)色(いろ)の果物(くだもの)で、

氷(ひ)室(むろ)での保(ほ)存(ぞん)が利(き)く。



挿絵(By みてみん)



夜(よる)の館(やかた)では食(しょく)堂(どう)横(よこ)の貯(ちょ)蔵(ぞう)室(しつ)前(まえ)に置(お)かれ、

拳(こぶし)ほどの大(おお)きさで食(た)べ応(ごた)えがある。



厨(ちゅう)房(ぼう)長(ちょう)のヤゴウは

フランジに盗(ぬす)まれないように、

いつも警(けい)戒(かい)してわざと盗(ぬす)ませていた。



ヤゴウとフランジの

遊(あそ)びの一(いっ)環(かん)らしいけれど、

わたしは参(さん)加(か)しなかった。



マリセスを盗(ぬす)んだスーのおかげで、

わたしは毎(まい)日(にち)、ナイフで皮(かわ)を剥(む)いている。



皮(かわ)剥(む)きはレナタから教(おそ)わり、

研(けん)鑽(さん)を積(つ)んでいる最(さい)中(ちゅう)で、

刃(は)物(もの)の扱(あつか)いが危(あや)うかった為(ため)に

ナイフを持(も)つにはスーの許(きょ)可(か)が必(ひつ)要(よう)だった。



マリセスの皮(かわ)を巧(うま)く剥(む)いて、

好(す)きなだけ食(た)べられる日(ひ)はまだまだ遠(とお)い。



「ダギラは皮(かわ)まで薄(うす)黄(き)色(いろ)で、

 夏(か)季(き)限(げん)定(てい)なんだよ。


 薬(くすり)として売(う)られてたりするよ。」



「果物(くだもの)なのに薬(くすり)なの?」



「栄(えい)養(よう)豊(ほう)富(ふ)で水(すい)分(ぶん)も多(おお)くて、

 食(しょく)欲(よく)が落(お)ちる夏(なつ)でも

 食(た)べやすいからだね。」



「苦(にが)くない薬(くすり)もあるんだね。」



わたしの短(たん)絡(らく)的(てき)な考(かんが)えにスーは笑(わら)う。



笑(わら)わせるつもりのない、ただの暴(ぼう)論(ろん)だった。



「高(こう)級(きゅう)品(ひん)として売(う)る為(ため)かな。


 栄(えい)養(よう)価(か)の高(たか)いマリセスも、

 夏(なつ)にはダギラの代(だい)用(よう)品(ひん)とまで

 呼(よ)ばれちゃったりするね。」



「ダギラって、

 もしかして大(たい)陸(りく)から来(き)た名(な)前(まえ)?」



ダギラはマリセスに比(くら)べて発(はつ)音(おん)が難(むずか)しい。



「熟(じゅく)して落(お)ちた果(か)実(じつ)が

 犬(いぬ)の頭(あたま)の上(うえ)に落(お)ちた様(よう)子(す)から、

 『犬(いぬ)殺(ごろ)し』って異(い)名(みょう)が付(つ)いたんだよ。」



「大(たい)陸(りく)語(ご)で犬(いぬ)殺(ごろ)しをダギラって言(い)うんだ。」



「あははっ。言(い)わないよ。


 その言(こと)葉(ば)が訛(なま)って、

 ダギラって呼(よ)ばれるようになっただけ。


 鼠(ねずみ)除(よ)けのラッガと同(おな)じで、

 島(しま)の言(こと)葉(ば)の訛(なま)りなんだろうね。


 ダギラも大(たい)陸(りく)由(ゆ)来(らい)の食(た)べ物(もの)だから、

 ニクスはまだ食(た)べたことないんだね。


 犬(いぬ)も猫(ねこ)も食(た)べられる果物(くだもの)だよ。


 初(はつ)物(もの)は市(いち)場(ば)にもう出(で)てるかな?」



「…話(はなし)が逸(そ)れてるよ。」



言(い)うとスーが笑(わら)ってから続(つづ)ける。



「恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)の話(はなし)だよね。」



「ところで、その恐(きょう)慌(こう)ってなに?


 日(にっ)食(しょく)や水(すい)害(がい)、干(かん)害(がい)に

 そんな呼(よ)び方(かた)があるの?」



わたしは恐(きょう)慌(こう)の定(てい)義(ぎ)を知(し)らない。



「これも話(はなし)は逸(そ)れるけど、

 経(けい)済(ざい)の現(げん)象(しょう)を恐(きょう)慌(こう)って呼(よ)ぶんだよ。


 恐(きょう)慌(こう)は経(けい)済(ざい)の本(ほん)にある単(たん)語(ご)だね。


 直(ちょっ)近(きん)ではエルテル風邪(かぜ)に起(き)因(いん)するよ。


 私(わたし)達(たち)が生(う)まれる前(ぜん)後(ご)に起(お)きた恐(きょう)慌(こう)だね。


 価(か)値(ち)の変(へん)動(どう)で貴(き)族(ぞく)は資(し)産(さん)を保(ほ)持(じ)する為(ため)に、

 食(しょく)料(りょう)や毛(け)皮(がわ)、貴(き)金(きん)属(ぞく)を買(か)い集(あつ)めたんだよ。


 『あなたの持(も)っている金(きん)貨(か)に

  価(か)値(ち)はありません。』って

 突(とつ)然(ぜん)言(い)われたら、誰(だれ)だって驚(おどろ)くもんね。


 金(きん)貨(か)に価(か)値(ち)があるうちに、

 別(べつ)の価(か)値(ち)のあるものに変(か)えるんだね。


 でも資(し)産(さん)を持(も)たない民(みん)衆(しゅう)は、

 税(ぜい)金(きん)を支(し)払(はら)わなくなって、

 食(しょく)料(りょう)や水(みず)の確(かく)保(ほ)を優(ゆう)先(せん)する。


 貴(き)族(ぞく)は蓄(たくわ)えて格(かく)差(さ)を広(ひろ)げ、

 飢(う)えた民(みん)衆(しゅう)は略(りゃく)奪(だつ)を始(はじ)めると、

 やがて外(そと)に向(む)けた侵(しん)略(りゃく)が起(お)きる。


 カヴァとネルタの戦(せん)争(そう)は、

 この恐(きょう)慌(こう)も影(えい)響(きょう)してるね。」



――戦(せん)争(そう)…。



「運(うん)行(こう)の原(げん)則(そく)から逸(いつ)脱(だつ)すると、

 無(む)秩(ちつ)序(じょ)な状(じょう)態(たい)になる。


 これが恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)の由(ゆ)来(らい)だね。


 ちょっと難(むずか)しい話(はなし)だったかな?」



黙(だま)っていたわたしは首(くび)を横(よこ)に振(ふ)った。




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