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金貨の娘  作者: 美穂
第5章 混濁の庭

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第5章 第4節 四時の札(第3項)

2巡(じゅん)目(め)の後(ご)手(て)のスーが

市(し)場(じょう)に並(なら)べた貝(かい)札(ふだ)は01で、

わたしは彼(かの)女(じょ)の考(かんが)えに目(め)を疑(うたが)った。



挿絵(By みてみん)



値(あたい)の一(いち)番(ばん)低(ひく)い数(すう)字(じ)。



わたしの手(て)札(ふだ)に彼(かの)女(じょ)の並(なら)べた01よりも

劣(れつ)位(い)になる組(く)み合(あ)わせは存(そん)在(ざい)しない。



「これは『段札(ステップ)』の商品(グッズ)だよ。


 ちょっと特(とく)殊(しゅ)な組(く)み合(あ)わせだけど、

 ニクスは見(み)ただけで分(わ)かるかな?」



スーの市(し)場(じょう)には99の横(よこ)に01が並(なら)ぶ。



彼(かの)女(じょ)はわたしに教(おし)える為(ため)に、狙(ねら)って

極(きょく)端(たん)な数(すう)字(じ)の組(く)み合(あ)わせを作(つく)ってみせた。



「…段(だん)状(じょう)の数(すう)字(じ)なら9・0・1?

 これって繰(く)り返(かえ)してる…?


 10進(しん)法(ほう)の順(じゅん)番(ばん)になってるから段札(ステップ)?」



数(すう)字(じ)は9から1を足(た)せば10になり、

桁(けた)が一(ひと)つ繰(く)り上(あ)がる。



数(すう)字(じ)札(ふだ)に10は無(な)いので数(かず)は繰(く)り上(あ)がらない。



9から1を足(た)しても桁(けた)は繰(く)り上(あ)がらず、

0に戻(もど)って再(ふたた)び1から繰(く)り返(かえ)すことになる。



「うん。正(せい)解(かい)。


 双札(ペア)は同(おな)じ値(あたい)の2枚(まい)、

 十札(テン)は足(た)して10の値(あたい)の2枚(まい)で、

 段札(ステップ)は順(じゅん)になった値(あたい)の3枚(まい)で

 成(せい)立(りつ)するんだよ。


 市(し)場(じょう)に並(なら)べた異(こと)なる数(すう)字(じ)札(ふだ)の3枚(まい)が、

 一(ひと)つずつ順(じゅん)になると段札(ステップ)は成(せい)立(りつ)するよ。」



「貝(かい)札(ふだ)って2枚(まい)しか

 並(なら)べられないんだよね?」



確(かく)認(にん)するとスーは頷(うなず)く。



「双札(ペア)や十札(テン)と違(ちが)って、

 直(ちょっ)近(きん)の貝(かい)札(ふだ)との組(く)み合(あ)わせがないと

 成(せい)立(りつ)しない商品(グッズ)だね。


 それぞれ違(ちが)うけど似(に)た品(しな)物(もの)…、

 キャシュク、帯(おび)布(ぬの)、帯(おび)紐(ひも)なんかを

 ひとまとめにして売(う)る方(ほう)法(ほう)だね。


 3・4・5と一(ひと)つずつ足(た)しても、

 1・0・9と一(ひと)つずつ引(ひ)いても段札(ステップ)。


 でも2・4・6や、9・6・3は

 一(ひと)つずつではないから成(せい)立(りつ)しないよ。」



「連(れん)結(けつ)で、3種(しゅ)類(るい)全(すべ)ての商品(グッズ)を

 成(せい)立(りつ)させることもできるの?」



例(たと)えば34の横(よこ)に55の貝(かい)札(ふだ)を並(なら)べれば、

3・4・5の段札(ステップ)と双札(ペア)、十札(テン)が連(れん)結(けつ)して

3種(しゅ)の商品(グッズ)が全(すべ)て成(せい)立(りつ)する。



――ルールの通(とお)りなら。



「最(さい)大(だい)の報(ほう)酬(しゅう)は7枚(まい)だね。


 でも商品(グッズ)の作(つく)り過(す)ぎには注(ちゅう)意(い)してね。


 手(て)札(ふだ)にできる枚(まい)数(すう)は最(さい)大(だい)で10枚(まい)まで。


 手(て)札(ふだ)が11枚(まい)以(い)上(じょう)になると、

 その時(じ)点(てん)で負(ま)けになるよ。


 集(あつ)めた品(しな)物(もの)を市(し)場(じょう)に並(なら)べないから、

 商(しょう)人(にん)が品(しな)物(もの)を腐(くさ)らせるって意(い)味(み)で

 『腐(ふ)敗(はい)』って呼(よ)んだりするよ。」



――商(しょう)人(にん)としては失(しっ)格(かく)ということね。



「スーが手(て)札(ふだ)を9枚(まい)持(も)っていた時(とき)に、

 わたしが星(ほし)札(ふだ)を2枚(まい)出(だ)して課(か)税(ぜい)、

 還(かん)付(ぷ)を受(う)けてスーは負(ま)け?」



スーの手(て)札(ふだ)は報(ほう)酬(しゅう)を加(くわ)えても8枚(まい)なので、

わたしがいま星(ほし)札(ふだ)を2枚(まい)並(なら)べても勝(か)てない。



「それも課(か)税(ぜい)の使(つか)い方(かた)の一(ひと)つだね。


 星(ほし)札(ふだ)の還(かん)付(ぷ)や商品(グッズ)での報(ほう)酬(しゅう)で、

 手(て)札(ふだ)に加(くわ)える必(ひつ)要(よう)があるのに、

 土(と)地(ち)に札(ふだ)がなかった時(とき)も負(ま)けね。」



「過(か)剰(じょう)に手(て)札(ふだ)を増(ふ)やしたり、

 報(ほう)酬(しゅう)を得(え)るのは良(よ)くないんだ。


 腐(ふ)敗(はい)する土(と)地(ち)の札(ふだ)って、

 食(た)べ物(もの)から来(き)てるの?」



「それはただの比(ひ)喩(ゆ)だね。


 手(て)札(ふだ)を増(ふ)やしてばかりだと、

 楽(たの)しくないからだと思(おも)うよ。」



「確(たし)かに。」



手(て)札(ふだ)を溜(た)めれば、並(なら)べる札(ふだ)に困(こま)らない。



彼(かの)女(じょ)の説(せつ)明(めい)は遊(あそ)びの基(き)本(ほん)だった。



3巡(じゅん)目(め)でわたしが64の十札(テン)を出(だ)し、

報(ほう)酬(しゅう)で手(て)札(ふだ)を2枚(まい)加(くわ)えると、

スーは自(じ)分(ぶん)の市(し)場(じょう)の数(すう)字(じ)札(ふだ)を裏(うら)返(がえ)した。



挿絵(By みてみん)



「これは――。」「それは?」


スーの説(せつ)明(めい)に質(しつ)問(もん)が被(かぶ)ってしまった。



「これは、自(じ)分(ぶん)の市(し)場(じょう)で成(せい)立(りつ)した

 商品(グッズ)を伏(ふ)せて隠(かく)したり、

 連(れん)結(けつ)を防(ふせ)いだりする方(ほう)法(ほう)。


 ヴェールっていうんだよ。」



スーが手(て)で口(くち)元(もと)を隠(かく)し、

1の数(すう)字(じ)札(ふだ)を裏(うら)返(がえ)しにする。



「宝(ほう)石(せき)に使(つか)う布(ぬの)のこと?」



宝(ほう)石(せき)や装(そう)飾(しょく)品(ひん)を運(はこ)ぶ際(さい)に、

擦(す)れ瑕(きず)から守(まも)るパイル生(き)地(じ)の厚(あつ)い布(ぬの)を

宝飾巾(ヴェール)と呼(よ)んだ。



頭巾(フード)や宝飾巾(ヴェール)は顔(かお)を覆(おお)い隠(かく)す装(そう)飾(しょく)で、

ドレイプのサンサや街(がい)娼(しょう)が外(がい)出(しゅつ)時(じ)に着(つ)ける

透(す)けるほど薄(うす)いチュール生(き)地(じ)も同(おな)じ名(な)前(まえ)。



「頭巾(フード)も宝飾巾(ヴェール)の生(き)地(じ)も、

 宝(ほう)飾(しょく)品(ひん)を守(まも)る布(ぬの)に使(つか)われてるけど、

 実(じつ)は由(ゆ)来(らい)は後(あと)付(づ)けだよ。


 大(たい)陸(りく)の商(しょう)売(ばい)上手(じょうず)な商(しょう)人(にん)が

 王(おお)様(さま)の顔(かお)を宝(ほう)飾(しょく)品(ひん)に見(み)立(た)てて、

 擦(す)り傷(きず)から守(まも)るただの布(ぬの)切(き)れを

 高(たか)値(ね)で売(う)りつけた逸(いつ)話(わ)からだね。」



「また騙(だま)したんだ…。」



「また?」



逸(そ)れた話(はなし)を戻(もど)して、

市(し)場(じょう)に置(お)いた札(ふだ)に視(し)線(せん)を落(お)とす。



「わたしも55でそれやっていいの?」



「本(ほん)来(らい)は自(じ)分(ぶん)の手(て)番(ばん)で貝(かい)札(ふだ)を並(なら)べる前(まえ)の、

 直(ちょっ)近(きん)で成(せい)立(りつ)した商品(グッズ)のみなんだけど、

 教(おし)え忘(わす)れてたからいまやってもいいよ。


 でも札(ふだ)は25枚(まい)しかないから。


 並(なら)びで流(なが)れは分(わ)かるし、

 配(はい)置(ち)は覚(おぼ)えられるもんね。


 ニクスは初(はじ)めてだから、

 ヴェールしない方(ほう)が自(じ)分(ぶん)の市(し)場(じょう)を

 覚(おぼ)えなくて済(す)む分(ぶん)、混(こん)乱(らん)し難(にく)いかも。


 それにね。」



と、彼(かの)女(じょ)は付(つ)け加(くわ)える。



「私(わたし)がここで貝(かい)札(ふだ)に恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を含(ふく)めたら、

 自(じ)分(ぶん)の市(し)場(じょう)でヴェールした札(ふだ)を1枚(まい)、

 ニクスは手(て)札(ふだ)に加(くわ)えないと

 いけないんだよ。


 『回(かい)収(しゅう)』って名(な)前(まえ)があるけど、

 そのままだね。」



「1枚(まい)? 任(にん)意(い)の札(ふだ)?」



わたしがヴェールした直(ちょく)後(ご)に

恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を出(だ)された場(ば)合(あい)、

凡(ぼん)庸(よう)な5を回(かい)収(しゅう)することになる。



次(つぎ)に作(つく)る商品(グッズ)やヴェールする札(ふだ)、

恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を並(なら)べる頃(ころ)合(あい)いも

考(かんが)えなければいけない。



「…止(や)めておく。」



考(かんが)えが複(ふく)雑(ざつ)になり、スーの助(じょ)言(げん)通(どお)り

わたしはヴェールを控(ひか)えた。



「さて、

 いま私(わたし)が9・0・1をヴェールしたから、

 そこでニクスが恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を並(なら)べた場(ば)合(あい)は、

 この中(なか)の1枚(まい)を手(て)札(ふだ)にする。


 なにを回(かい)収(しゅう)すると思(おも)う?」



「それなら0?」



恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)が並(なら)べば優(ゆう)劣(れつ)は逆(ぎゃく)転(てん)し、

9が劣(れつ)位(い)で0が優(ゆう)位(い)な数(すう)字(じ)になる。



「それも良(い)いかもしれないね。


 恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を並(なら)べた後(あと)なら、

 運(うん)行(こう)の原(げん)則(そく)を逸(いつ)脱(だつ)した状(じょう)態(たい)だから。


 でも恐(きょう)慌(こう)状(じょう)態(たい)は星(ほし)札(ふだ)が自(じ)由(ゆう)に並(なら)べられて、

 朝(あさ)・昼(ひる)・夕(ゆう)でまたすぐ昇(しょう)順(じゅん)に戻(もど)るから、

 使(つか)い方(かた)には気(き)を付(つ)けてね。」



「そんな並(なら)べ方(かた)もあるんだ。」



ヴェールをしたところでいつ、

どの札(ふだ)を手(て)札(ふだ)にするのが最(さい)善(ぜん)か、

考(こう)慮(りょ)する必(ひつ)要(よう)があり、後(のち)々(のち)重(じゅう)要(よう)になる。



「恐(きょう)慌(こう)状(じょう)態(たい)から星(ほし)札(ふだ)が出(だ)されたことで、

 運(うん)行(こう)の原(げん)則(そく)に従(したが)う元(もと)の状(じょう)態(たい)に戻(もど)ることを、

 『秩序化(オーダー)』っていうから覚(おぼ)えておいて。」



「秩序化(オーダー)。」



その用(よう)語(ご)の由(ゆ)来(らい)に頭(あたま)を捻(ひね)る。



――恐(きょう)慌(こう)が戦(せん)争(そう)を引(ひ)き起(お)こすのなら、

  秩(ちつ)序(じょ)は戦(せん)争(そう)が終(お)わったいまの状(じょう)態(たい)?



「恐(きょう)慌(こう)が収(おさ)まって、

 高(こう)騰(とう)した市(し)場(じょう)の価(か)格(かく)を

 元(もと)に戻(もど)す感(かん)じだと思(おも)ってね。


 値(ね)段(だん)が上(あ)がったまま

 安(やす)い代(だい)用(よう)品(ひん)が市(し)場(じょう)に並(なら)んで、

 需(じゅ)要(よう)がなくなると困(こま)るもんね。」



わたしは首(くび)を縦(たて)に振(ふ)り、理(り)解(かい)を示(しめ)す。



「ついでにこれも覚(おぼ)えておいて。


 数(すう)字(じ)札(ふだ)の0と恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)で得(え)た商(しょう)人(にん)札(ふだ)の0で

 双札(ペア)を成(せい)立(りつ)させると、

 逆(ぎゃく)順(じゅん)の時(とき)は昇(しょう)順(じゅん)に戻(もど)るよ。」



「0の双札(ペア)で?


 9の双札(ペア)は逆(ぎゃく)順(じゅん)にならなかったのに?」



「99で双札(ペア)が成(せい)立(りつ)しても、

 逆(ぎゃく)順(じゅん)にはならないよ。


 宝(ほう)石(せき)のような高(こう)級(きゅう)な商品(グッズ)

 ってだけだね。」



「公(こう)開(かい)してる0の商(しょう)人(にん)札(ふだ)は、

 恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を並(なら)べないと

 手(て)に入(はい)らないから?」



単(たん)なる数(すう)字(じ)の組(く)み合(あ)わせではなく、

遊(あそ)びの仕(し)組(く)みで考(かんが)えると解(かい)釈(しゃく)しやすかった。



「商(しょう)人(にん)札(ふだ)はその条(じょう)件(けん)があるからだね。


 0を二(ふた)つも並(なら)べても

 0に値(あたい)は無(な)いから不(ふ)思(し)議(ぎ)だよね。


 四(しい)時(じ)における0って

 発(はつ)明(めい)における知(ち)識(しき)とか閃(ひらめ)き、

 物(もの)以(い)外(がい)で土(と)地(ち)からしか得(え)られない品(しな)物(もの)、

 才(さい)能(のう)、人(じん)材(ざい)みたいな扱(あつか)いの札(ふだ)だね。


 革(かく)命(めい)とか食(しょく)とか、

 色(いろ)々(いろ)な解(かい)釈(しゃく)があるね。」



「食(しょく)?」



「日(にっ)食(しょく)、月(げっ)食(しょく)の食(しょく)だね。」



スーは母(ぼ)指(し)と示(じ)指(し)で輪(わ)を作(つく)ると、

両(りょう)手(て)で輪(わ)を並(なら)べ、二(ふた)つを重(かさ)ねていく。



0の価(か)値(ち)は

値(あたい)のある他(ほか)の数(すう)字(じ)とは別(べつ)になる。



「夜(よる)の星(ほし)札(ふだ)の時(とき)の逆(ぎゃく)順(じゅん)でも、

 恐(きょう)慌(こう)状(じょう)態(たい)でなくても、00の双札(ペア)で

 運(うん)行(こう)の原(げん)則(そく)は開(かい)始(し)時《じ》の状(じょう)態(たい)に戻(もど)るよ。


 これを『平(へい)衡(こう)状(じょう)態(たい)』っていうんだよ。」



「平(へい)衡(こう)って…、

 船(ふね)が湖(みずうみ)に浮(う)かんでいるのと同(おな)じ?

 その平(へい)衡(こう)?」



同(おな)じ言(こと)葉(ば)の意(い)味(み)らしく、スーが頷(うなず)く。



船(ふね)が水(みず)を押(お)し退(の)けて沈(しず)む力(ちから)よりも、

水(みず)が船(ふね)を押(お)し上(あ)げる力(ちから)が勝(まさ)って、

水(すい)面(めん)に浮(う)いた状(じょう)態(たい)をそう呼(よ)ぶ。



「これは恐(きょう)慌(こう)状(じょう)態(たい)でない時(とき)の呼(こ)称(しょう)だね。


 次(つぎ)に並(なら)べられる星(ほし)札(ふだ)は

 勝(しょう)負(ぶ)の開(かい)始(し)時(じ)と同(おな)じで、

 過(か)去(こ)の星(ほし)札(ふだ)に関(かん)係(けい)なく並(なら)べられるよ。


 それに0の使(つか)い方(かた)は他(ほか)にもあるよ。


 説(せつ)明(めい)が長(なが)くなったから、

 もうちょっと進(すす)めようか。」



スーが市(し)場(じょう)に並(なら)べた札(ふだ)は88で、

また大(おお)きな値(あたい)にわたしも困(こん)惑(わく)して

彼(かの)女(じょ)に直(ちょく)接(せつ)確(かく)認(にん)する。



挿絵(By みてみん)



「貝(かい)札(ふだ)で出(だ)せる数(すう)字(じ)って、

 00から99だよね?」



「最小は00。最(さい)大(だい)は100だね。

 商(しょう)人(にん)札(ふだ)があるからね。」



「100? …100?」



わたしは思(おも)わず繰(く)り返(かえ)した。



「手(て)札(ふだ)が残(のこ)り3枚(まい)の時(とき)に限(げん)定(てい)して、

 100を並(なら)べることができるよ。


 それ以(い)外(がい)だと

 2枚(まい)一(ひと)組(くみ)でしか並(なら)べられないよ。


 いつでも100が並(なら)べられたら、

 遊(あそ)びにならないもんね。」



「100なんて出(だ)せるんだ…。」



100を作(つく)って勝(か)つ方(ほう)法(ほう)と共(とも)に、

01や00、90などの用(よう)途(と)が思(おも)い浮(う)かぶ。



――やってみようかしら。



わたしは昼(ひる)の星(ほし)札(ふだ)を並(なら)べて相(そう)殺(さい)で凌(しの)ぐと、

スーは77の双札(ペア)を作(つく)る。



挿絵(By みてみん)



これで彼(かの)女(じょ)は66より上の貝(かい)札(ふだ)は作(つく)れないし、

すでに0の数(すう)字(じ)札(ふだ)を並(なら)べていた。



逆(ぎゃく)順(じゅん)ではもう12より下(した)の数(すう)字(じ)も作(つく)れない。



その為(ため)、スーは必(かなら)ず星(ほし)札(ふだ)か、

恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を並(なら)べて商(しょう)人(にん)札(ふだ)を手(て)にする。



「手(て)札(ふだ)が残(のこ)り3枚(まい)で相(あい)手(て)より優(ゆう)位(い)なら、

 100の値(あたい)が並(なら)べられるんだけど、

 これは『雷(らい)霆(てい)』っていう特(とく)殊(しゅ)な勝(か)ち方(かた)。」



「雷(らい)霆(てい)…?」



「これもソーマが由(ゆ)来(らい)だね。


 この由(ゆ)来(らい)は歴(れき)史(し)の勉(べん)強(きょう)になって、

 サンサに『話(はなし)が逸(そ)れてる』って

 お小(こ)言(ごと)を貰(もら)うからまた今(こん)度(ど)ね。」



スーがここに居(い)ないひとを真似(まね)して言(い)った。



わたしが一(ひと)つ優(ゆう)位(い)な78の貝(かい)札(ふだ)を並(なら)べて、

直(ちょっ)近(きん)の札(ふだ)との並(なら)びで十札(テン)を成(せい)立(りつ)させた。



挿絵(By みてみん)



スーは前(ぜん)巡(じゅん)で成(せい)立(りつ)した市(し)場(じょう)の

商品(グッズ)をヴェールして、

ようやく夕(ゆう)の星(ほし)札(ふだ)を市(し)場(じょう)に並(なら)べた。



彼(かの)女(じょ)は前(ぜん)巡(じゅん)の77と繋(つな)げない為(ため)に、

ヴェールを行(おこな)ってから3を後(あと)札(ふだ)に並(なら)べ、

十札(テン)の商品(グッズ)を成(せい)立(りつ)させない。



スーは当(とう)然(ぜん)、自(じ)分(ぶん)の作(つく)った報(ほう)酬(しゅう)で、

手(て)札(ふだ)が10枚(まい)を超(こ)えてしまう

腐(ふ)敗(はい)での負(ま)けを防(ふせ)ぐ。



次(つぎ)の手(て)番(ばん)で彼(かの)女(じょ)は21の貝(かい)札(ふだ)を並(なら)べれば、

3・2・1の段札(ステップ)が成(せい)立(りつ)する。



星(ほし)札(ふだ)で還(かん)付(ぷ)を受(う)けたわたしは、

土(と)地(ち)から加(くわ)える札(ふだ)を選(えら)びながら

先(さき)の展(てん)開(かい)をしばらく考(かんが)える。



「相(あい)手(て)が100の雷(らい)霆(てい)で勝(か)った時(とき)、

 自(じ)分(ぶん)の手(て)札(ふだ)が0の2枚(まい)しかない場(ば)合(あい)、

 00を市(し)場(じょう)に並(なら)べることで

 相(あい)手(て)の勝(しょう)利(り)を無(む)効(こう)化(か)できるんだよ。


 これを『解(かい)除(じょ)』っていうよ。

 契(けい)約(やく)の破(は)棄(き)を意(い)味(み)する解(かい)除(じょ)だね。」



100の説(せつ)明(めい)は続(つづ)くので、

そこで疑(ぎ)問(もん)が浮(う)かぶ。



「100で手(て)札(ふだ)を全(すべ)て無(な)くした後(あと)でも

 00が並(なら)べられたら負(ま)けになるの?」



わたしは商(しょう)人(にん)札(ふだ)の0を狙(ねら)っている。



次(つぎ)に並(なら)べる札(ふだ)を考(かんが)えながら、

続(つづ)く彼(かの)女(じょ)の説(せつ)明(めい)に耳(みみ)を傾(かたむ)けた。



「相(あい)手(て)が先(さき)に手(て)札(ふだ)を無(な)くしているから、

 相(あい)手(て)の負(ま)け扱(あつか)いでもないんだよ。


 解(かい)除(じょ)を狙(ねら)ってみると上手(じょうず)に行(い)かないし、

 出(で)来(き)ても勝(か)ちの扱(あつか)いでもないからね。


 利(り)点(てん)はほとんど無(な)くて、成(せい)功(こう)率(りつ)も低(ひく)い。


 これが出(で)来(き)たら気(き)持(も)ちでは勝(か)ちかな。


 やられたら負(ま)けを認(みと)めるかもね。」



「負(ま)けでもないんだ。」



「ただの札(ふだ)遊(あそ)びだもんね。」



札(ふだ)を見(み)ていたアルが横(よこ)で欠伸(あくび)をした。



わたしの太(ふと)腿(もも)の上(うえ)で、

退(たい)屈(くつ)にしているイオスの欠伸(あくび)が

伝(でん)播(ぱ)した様(よう)子(す)だった。



6巡(じゅん)目(め)でわたしは

数(すう)字(じ)札(ふだ)の9と夜(よる)の星(ほし)札(ふだ)を並(なら)べて、

78に続(つづ)いて段札(ステップ)を成(せい)立(りつ)させた。



挿絵(By みてみん)



「あ、さっそく使(つか)ってきたね。」



「残(のこ)り4巡(じゅん)、だよね?

 9を含(ふく)めたのは損(そん)だったかな?」



わたしは先(さき)の展(てん)開(かい)を考(かんが)えていない

振(ふ)りをして言(い)った。



「私(わたし)が軽(かる)く教(おし)えたことでも、

 ニクスは考(かんが)えて反(はん)映(えい)してくれるから

 教(おし)えてて楽(たの)しいよ。


 ここからは逆(ぎゃく)順(じゅん)ね。」



組(く)み合(あ)わせた大(おお)きな値(あたい)は劣(れつ)位(い)に、

小(ちい)さな値(あたい)の組(く)み合(あ)わせは

優(ゆう)位(い)が逆(ぎゃく)順(じゅん)へと変(か)わる。



「後(ご)手(て)の私(わたし)が札(ふだ)を並(なら)べ終(お)えたら、

 市(し)場(じょう)に並(なら)べた6巡(じゅん)目(め)の貝(かい)札(ふだ)を

 下(した)側(がわ)に移(い)動(どう)させようか。


 市(し)場(じょう)の札(ふだ)が横(よこ)に伸(の)びると

 やり難(にく)いからね。


 折(お)り返(かえ)しの目(め)安(やす)にもなるよ。」



「分(わ)かった。」



わたしは6巡(じゅん)目(め)の貝(かい)札(ふだ)を移(い)動(どう)させて、

7巡(じゅん)目(め)で12の貝(かい)札(ふだ)を並(なら)べる。



挿絵(By みてみん)



「おぉ~。」スーが感(かん)嘆(たん)した。



恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を並(なら)べていない彼(かの)女(じょ)は、

0の商(しょう)人(にん)札(ふだ)を持(も)っていないから、

わたしより優(ゆう)位(い)な11以(い)下(か)の貝(かい)札(ふだ)を作(つく)れない。



彼(かの)女(じょ)は運(うん)行(こう)の原(げん)則(そく)に従(したが)って、

朝(あさ)の星(ほし)札(ふだ)を並(なら)べて相(そう)殺(さい)し、昇(しょう)順(じゅん)に戻(もど)す。



挿絵(By みてみん)



わたしの手(て)札(ふだ)には恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)が残(のこ)っている。



8巡(じゅん)目(め)でわたしが78の貝(かい)札(ふだ)を並(なら)べれば、

直(ちょっ)近(きん)の貝(かい)札(ふだ)の12と商品(グッズ)は成(せい)立(りつ)せず、

彼(かの)女(じょ)はついに恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を市(し)場(じょう)に並(なら)べた。



挿絵(By みてみん)



「ルールが分(わ)かってる並(なら)べ方(かた)だね。」



「えぇー。どうかなぁ。」



スーが4巡(じゅん)までのあいだに

極(きょく)端(たん)な値(あたい)の貝(かい)札(ふだ)を並(なら)べてくれたおかげで、

楽(らく)をしている気(き)がしてならない。



彼(かの)女(じょ)は公(こう)開(かい)している商(しょう)人(にん)札(ふだ)を手(て)にする。



わたしも彼(かの)女(じょ)に続(つづ)いて

9巡(じゅん)目(め)で恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を並(なら)べて、

商(しょう)人(にん)札(ふだ)の0を手(て)札(ふだ)に加(くわ)える。



挿絵(By みてみん)



と、同(どう)時(じ)にスーがヴェールされた

7枚(まい)の札(ふだ)の中(なか)から端(はし)の1枚(まい)を回(かい)収(しゅう)した。



挿絵(By みてみん)



――あれ?



わたしの手(て)札(ふだ)は2枚(まい)、0と1の数(すう)字(じ)札(ふだ)。



恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)で運(うん)行(こう)の原(げん)則(そく)は逸(いつ)脱(だつ)したまま、

優(ゆう)劣(れつ)は逆(ぎゃく)順(じゅん)から変(か)わっていない。



「これで良(い)いんだよね?」



彼(かの)女(じょ)の恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)の後(あと)に恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)を並(なら)べて、

違(い)和(わ)感(かん)を覚(おぼ)えたので確(かく)認(にん)をした。



「良(い)いよ。初(はじ)めてとは思(おも)えないね。」



彼(かの)女(じょ)は昼(ひる)の星(ほし)札(ふだ)を並(なら)べると、

『秩序化(オーダー)』で昇(しょう)順(じゅん)へと戻(もど)る。



「ニクス。報(ほう)酬(しゅう)を手(て)にしてね。」



「これで勝(か)ちだよ。」



最(さい)後(ご)の10巡(じゅん)目(め)。



わたしは狙(ねら)い通(どお)り

残(のこ)り3枚(まい)の手(て)札(ふだ)を市(し)場(じょう)に並(なら)べた。



挿絵(By みてみん)



「雷(らい)霆(てい)だねっ。おめでとう。」



雷(らい)霆(てい)を出(だ)して勝(か)ったばかりのわたしに、

スーは残(のこ)した2枚(まい)の手(て)札(ふだ)を見(み)せる。



「あっ!」



「これがさっき言(い)ってた解(かい)除(じょ)だね。」



スーが公(こう)開(かい)した手(て)札(ふだ)は0の数(すう)字(じ)札(ふだ)2枚(まい)。



挿絵(By みてみん)



わたしの恐(きょう)慌(こう)札(ふだ)で彼(かの)女(じょ)が回(かい)収(しゅう)したのは、

最(さい)初(しょ)の段札(ステップ)で並(なら)べた0だった。



端(はし)の札(ふだ)は9ではなかった。



雷(らい)霆(てい)でのわたしの勝(か)ちは、

解(かい)除(じょ)によって取(と)り消(け)される。



「こういうことだったのね…。」



「ニクスの狙(ねら)いは分(わ)かってたからね。


 0は使(つか)いやすい分(ぶん)、

 対(たい)処(しょ)もしやすくなるんだよね。」



「スーは最(さい)初(しょ)に

 大(おお)きな値(あたい)の貝(かい)札(ふだ)を並(なら)べていたから、

 勝(か)てると思(おも)ってたんだけれど。」



9巡(じゅん)目(め)で後(ご)手(て)のスーが

昼(ひる)の星(ほし)札(ふだ)の代(か)わりに01を並(なら)べていたら、

還(かん)付(ぷ)を受(う)けなかったわたしの手(て)札(ふだ)は

0と1の数(すう)字(じ)札(ふだ)のみになっていた。



恐(きょう)慌(こう)状(じょう)態(たい)の逆(ぎゃく)順(じゅん)では

同(どう)位(い)の札(ふだ)しか組(く)み合(あ)わせられず、

わたしは包(ほう)囲(い)されて負(ま)けているはずだった。



「手(て)札(ふだ)にする時(とき)の確(かく)率(りつ)と

 相(あい)手(て)との相(あい)性(しょう)だね。」



「相(あい)性(しょう)…。

 サンサとスーはよくやってるんだよね?」



この館(やかた)に来(き)た日(ひ)に、二人(ふたり)はこの庭(にわ)で

この札(ふだ)遊(あそ)びをしていた。



「いまは私(わたし)の方(ほう)が勝(か)ち数(すう)が多(おお)いんだよ。」



「サンサって弱(よわ)いの?」



「これくらい覚(おぼ)えがいいのなら

 ニクスでも勝(か)てるかもね。」



「失(しつ)礼(れい)な会(かい)話(わ)を耳(みみ)にしたわ。」



不(ふ)在(ざい)だったサンサが日(ひ)陰(かげ)の庭(にわ)に現(あらわ)れて、

西(にし)側(がわ)の椅(い)子(す)に座(すわ)ってアルを抱(かか)える。



「聞(き)かれてた。」



「サンサがスーより弱(よわ)いのは

 事(じ)実(じつ)なんだよね



「わたしは弱(よわ)くないわよ。

 スーの勘(かん)が鋭(するど)いのよ。


 それに勝(か)つことだけが

 勝(しょう)負(ぶ)ではないわよ。」



「またそれ言(い)ってる。」スーが笑(わら)う。



「四(しい)時(じ)の札(ふだ)遊(あそ)びには、

 相(あい)性(しょう)の問(もん)題(だい)もあるのよ。」



「相(あい)性(しょう)って、具(ぐ)体(たい)的(てき)にはなに?」



「四(しい)時(じ)を覚(おぼ)えたいニクスの為(ため)を思(おも)って、

 相(あい)性(しょう)の悪(わる)い客(きゃく)を連(つ)れてきたわよ。」



「え、客(きゃく)?」



サンサは玄(げん)関(かん)の方(ほう)を見(み)て、

客(きゃく)らしからぬ人(じん)物(ぶつ)に微(び)笑(しょう)を浮(う)かべる。



来(らい)客(きゃく)を知(し)らせるハンドベルは鳴(な)らされない。



近(ちか)くに立(た)っていたのは似(に)合(あ)わない髭(ひげ)の男(おとこ)。



――相(あい)性(しょう)の悪(わる)い客(きゃく)…。



相(あい)手(て)は館(やかた)の中(なか)でも剣(けん)を佩(は)いた、

騎(き)士(し)のハーフガンだった。



挿絵(By みてみん)




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