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金貨の娘  作者: 美穂
断章 絶海の孤

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断章 第3節 大塊の罪

禁(きん)足(そく)地(ち)に近(ちか)い川(かわ)の分(ぶん)岐(き)点(てん)、

治(ち)水(すい)の分(ぶん)水(すい)街(がい)は農(のう)地(ち)が無(な)くとも栄(さか)えた。



この街(まち)を統(とう)治(ち)するメーニェの氏(し)族(ぞく)に、

治(ち)水(すい)の権(けん)能(のう)が与(あた)えられた。



水(みず)が豊(ほう)富(ふ)にあり、大(たい)陸(りく)の移(い)民(みん)で溢(あふ)れ、

奴(ど)隷(れい)や罪(ざい)人(にん)が運(はこ)ばれ、娯(ご)楽(らく)に富(と)んでいた。



西(にし)のカヴァで作(つく)られたオル銅(どう)貨(か)が広(ひろ)まって、

赤(あか)土(つち)の丘(おか)では日(ひ)が落(お)ちるまで

処(しょ)刑(けい)が行(おこな)われる。



賭(と)場(ば)と娼(しょう)館(かん)は昼(ひる)も夜(よる)もなく営(いとな)まれると、

高(こう)額(がく)な税(ぜい)が徴(ちょう)収(しゅう)された。



街(まち)の北(きた)にある闘(とう)技(ぎ)場(じょう)では毎(まい)日(にち)、

無(む)法(ほう)者(もの)達(たち)が暴(あば)れ、安(やす)い命(いのち)を賭(か)けあった。



勝(しょう)利(り)した奴(ど)隷(れい)には自(じ)由(ゆう)を、

敗(はい)北(ぼく)には等(ひと)しく死(し)が与(あた)えられる。



欺(ぎ)騙(へん)を働(はたら)き、暴(ぼう)力(りょく)と欲(よく)望(ぼう)が街(まち)を支(し)配(はい)した。



無(む)法(ほう)者(もの)達(たち)ばかりの街(まち)であっても、

ソーマの死(し)によって法(ほう)ができた。



議(ぎ)会(かい)は街(まち)より南(みなみ)を禁(きん)足(そく)地(ち)と定(さだ)め、

許(きょ)可(か)のない開(かい)拓(たく)や居(きょ)住(じゅう)を禁(きん)止(し)した。



この法(ほう)で、東(とう)部(ぶ)3領(りょう)と洞(どう)窟(くつ)港(こう)は

禁(きん)足(そく)地(ち)への不(ふ)可(か)侵(しん)の条(じょう)約(やく)を締(てい)結(けつ)した。



本(ほん)を持(も)ち、法(ほう)を司(つかさど)るソーマの像(ぞう)は

この頃(ころ)になって作(つく)られたもの。



法(ほう)の街(まち)と周(しゅう)囲(い)に布(ふ)告(こく)する目(もく)的(てき)があった。



法(ほう)律(りつ)を作(つく)る者(もの)がいれば、法(ほう)律(りつ)を守(まも)らせ、

法(ほう)律(りつ)で裁(さば)き、法(ほう)律(りつ)に従(したが)う者(もの)が現(あらわ)れる。



法(ほう)律(りつ)の抜(ぬ)け道(みち)を見(み)つけ、公(こう)然(ぜん)と歩(ある)く者(もの)、

法(ほう)律(りつ)を破(やぶ)る者(もの)も、街(まち)には多(おお)く出(で)た。



商(しょう)売(ばい)敵(がたき)の殺(さつ)害(がい)を依(い)頼(らい)する貴(き)族(ぞく)。



貴(き)族(ぞく)に犯(おか)されたと嘘(うそ)をつく街(がい)娼(しょう)。



子(こ)供(ども)を誘(ゆう)拐(かい)し、身(みの)代(しろ)金(きん)を要(よう)求(きゅう)する盗(とう)賊(ぞく)。



闘(とう)技(ぎ)場(じょう)では、興(こう)行(ぎょう)主(しゅ)による

不(ふ)正(せい)な賭(と)博(ばく)が横(おう)行(こう)していた。



多(おお)くの犯(はん)罪(ざい)の中(なか)に、

法(ほう)律(りつ)に関(かか)わる議(ぎ)員(いん)も瀆(とく)職(しょく)していた。



ネルタの湖(みずうみ)周(しゅう)辺(へん)に住(す)む無(む)法(ほう)者(もの)達(たち)も現(あらわ)れ、

魚(ぎょ)油(ゆ)まで交(こう)易(えき)も行(おこな)われた。



浄(じょう)水(すい)場(じょう)の労(ろう)働(どう)者(しゃ)が、

盗(とう)賊(ぞく)に襲(おそ)われる事(じ)件(けん)も起(お)きた。



捕(つか)まえた盗(とう)賊(ぞく)は自(みずか)らをネルタ族(ぞく)と名(な)乗(の)った。



その頭(とう)目(もく)は自(じ)分(ぶん)を正(せい)統(とう)な神(かみ)の子(こ)と称(しょう)し、

英(えい)雄(ゆう)不(ふ)在(ざい)の混(こん)沌(とん)の時(じ)代(だい)にあって

ソーマの子(し)孫(そん)を詐(さ)称(しょう)する。



荒(あ)れ地(ち)を国(くに)にしたカヴァの氏(し)族(ぞく)を真似(まね)て、

ネルタの湖(みずうみ)周(しゅう)辺(へん)を占(せん)領(りょう)して国(くに)とした無(む)法(ほう)者(もの)。



南(みなみ)は天(てん)蓋(がい)山(さん)、東(とう)西(ざい)はオーブと

カヴァの山(さん)脈(みゃく)に囲(かこ)われた細(ほそ)く狭(せま)い土(と)地(ち)。



挿絵(By みてみん)



ネルタ族(ぞく)は複(ふく)数(すう)の民(みん)族(ぞく)の集(あつ)まりで

その境(きょう)界(かい)は曖(あい)昧(まい)だった。



ネルタの湖(こ)畔(はん)に住(す)み着(つ)いた無(む)法(ほう)者(もの)は

豊(ゆた)かな下(か)流(りゅう)の街(まち)、分(ぶん)水(すい)街(がい)との併(へい)呑(どん)を企(たくら)んだ。



条(じょう)約(やく)を無(む)視(し)して

土(と)地(ち)と水(みず)を占(せん)領(りょう)する無(む)法(ほう)者(もの)の横(おう)暴(ぼう)は、

周(しゅう)辺(へん)地(ち)域(いき)に軋(あつ)轢(れき)を生(う)んだ。



分(ぶん)水(すい)街(がい)は無(む)法(ほう)者(もの)の侵(しん)略(りゃく)を阻(そ)止(し)すべく、

街(まち)の南(みなみ)側(がわ)から円(えん)形(けい)に囲(かこ)む防(ぼう)壁(へき)を築(きず)く。



東(とう)部(ぶ)のエルテル領(りょう)は水(みず)資(し)源(げん)を確(かく)保(ほ)する為(ため)、

分(ぶん)水(すい)街(がい)を支(し)援(えん)して東(ひがし)側(がわ)への支(し)流(りゅう)を増(ふ)やした。



この工(こう)事(じ)の影(えい)響(きょう)で、

西(にし)側(がわ)のカヴァは干(かん)害(がい)に遭(あ)う。



分(ぶん)水(すい)街(がい)から流(なが)れてくるはずの川(かわ)が涸(か)れ、

カヴァの王(おう)子(じ)は街(まち)で偵(てい)察(さつ)を行(おこな)った。



偵(てい)察(さつ)の最(さい)中(ちゅう)、その王(おう)子(じ)は軽(けい)挙(きょ)が原(げん)因(いん)で

ネルタ側(がわ)の人(にん)間(げん)に捕(つか)まってしまった。



彼(かれ)はこの事(じ)件(けん)で

捕(ほ)虜(りょ)王(おう)子(じ)と呼(よ)ばれることになる。



この王(おう)子(じ)には腹(はら)違(ちが)いの妹(いもうと)が居(い)た。



カヴァの王(おう)と娼(しょう)婦(ふ)のあいだに生(う)まれた娘(むすめ)で、

彼(かれ)の代(か)わりに無(む)法(ほう)者(もの)の地(ち)に差(さ)し出(だ)された。



王(おう)女(じょ)の名(な)前(まえ)をサンスァラという。



『天(てん)蓋(がい)山(さん)に掛(か)かる雪(ゆき)よりも純(じゅん)真(しん)で、

 銀(ぎん)髪(ぱつ)は陽(よう)光(こう)よりも強(つよ)く輝(かがや)き、

 絶(ぜっ)世(せい)の美(び)女(じょ)であった。』



カヴァの公(こう)文(ぶん)書(しょ)にまで記(しる)されている、

妾(しょう)出(しゅつ)の王(おう)女(じょ)でも誇(こ)張(ちょう)は多(た)大(だい)に含(ふく)まれる。



サンスァラの献(けん)身(しん)により王(おう)子(じ)は解(かい)放(ほう)され、

彼(かれ)は異母妹(いもうと)に大(たい)切(せつ)な指(ゆび)輪(わ)を預(あず)けた。



ネルタに送(おく)られたサンスァラは、

政(せい)略(りゃく)で婚(こん)姻(いん)を結(むす)ぶと思(おも)われていた。



サンスァラは不(ふ)運(うん)にも、

暴(ぼう)虐(ぎゃく)なネルタの王(おう)子(じ)によって

殺(ころ)されてしまう。



当(とう)時(じ)のネルタ周(しゅう)辺(へん)で革(かく)命(めい)が起(お)き、

国(こっ)家(か)の意(い)志(し)統(とう)一(いつ)が図(はか)られた。



彼(かの)女(じょ)は革(かく)命(めい)の巻(ま)き添(ぞ)えにあったとされる。



カヴァには捕(ほ)虜(りょ)王(おう)子(じ)が預(あず)けた指(ゆび)輪(わ)と共(とも)に、

彼(かの)女(じょ)の右(みぎ)腕(うで)だけが国(くに)に帰(かえ)ってきた。



それがおよそ20年(ねん)前(まえ)。




 ◆




献(けん)身(しん)の王(おう)女(じょ)の死(し)。



カヴァの王(おう)は娘(むすめ)の死(し)を悼(いた)み、

職(しょく)人(にん)に白(はっ)金(きん)像(ぞう)を作(つく)らせた。



ネルタとカヴァとの関(かん)係(けい)は悪(あっ)化(か)する。



国(こく)土(ど)が山(さん)脈(みゃく)に隔(へだ)てられ、山間(やまあい)のカヴァには

ネルタを直(ちょく)接(せつ)攻(せ)める手(しゅ)段(だん)を持(も)たなかった。



分(ぶん)水(すい)街(がい)は堅(けん)牢(ろう)な防(ぼう)壁(へき)が築(きず)かれ、

街(かい)道(どう)を経(けい)由(ゆ)することも出(で)来(き)ず、

カヴァの行(こう)軍(ぐん)は山(やま)を越(こ)える他(ほか)に道(みち)がない。



ネルタの地(ち)で起(お)きた第(だい)1次(じ)革(かく)命(めい)では、

一(いち)部(ぶ)の民(みん)族(ぞく)が粛(しゅく)清(せい)され、

分(ぶん)水(すい)街(がい)に難(なん)民(みん)を増(ふ)やした。



防(ぼう)壁(へき)の外(そと)にあった近(きん)郊(こう)の集(しゅう)落(らく)が焼(や)かれ、

街(かい)道(どう)を通(とお)る馬(ば)車(しゃ)は襲(おそ)われ、

各(かく)地(ち)で略(りゃく)奪(だつ)が広(ひろ)まる。



分(ぶん)水(すい)街(がい)では飢(う)えた難(なん)民(みん)と、

かれらに偽(ぎ)装(そう)したネルタの兵(へい)士(し)との判(はん)別(べつ)は

困(こん)難(なん)とされた。



ネルタ族(ぞく)に近(ちか)い赤(あか)髪(がみ)というだけで

無(む)関(かん)係(けい)の民(みん)衆(しゅう)が暴(ぼう)力(りょく)を振(ふ)るわれ、

金(きん)品(ぴん)を奪(うば)われ、家(いえ)を焼(や)かれるなどの

犯(はん)罪(ざい)が街(まち)に増(ぞう)加(か)した。



社(しゃ)会(かい)は疲(ひ)弊(へい)し、民(みん)衆(しゅう)の感(かん)情(じょう)の発(はつ)露(ろ)先(さき)は

必(ひつ)然(ぜん)的(てき)に下(か)流(りゅう)へと向(む)かった。



街(まち)には大(たい)量(りょう)の死(し)者(しゃ)が出(で)て、

生(い)き残(のこ)った子(こ)供(ども)は売(う)り買(か)いされた。



こうして堆(たい)積(せき)した理(り)不(ふ)尽(じん)の代(だい)償(しょう)は高(たか)く、

責(せき)任(にん)者(しゃ)である総(そう)督(とく)が支(し)払(はら)うことになる。



――分(ぶん)水(すい)街(がい)の総(そう)督(とく)が殺(ころ)された。



総(そう)督(とく)の家(か)族(ぞく)も盗(とう)賊(ぞく)に襲(おそ)われ、

正(せい)統(とう)な後(こう)継(けい)者(しゃ)を失(うしな)った。



挿(す)げ替(か)えられた新(あら)たな総(そう)督(とく)は法(ほう)を掲(かか)げ、

民(みん)衆(しゅう)にさらなる混(こん)乱(らん)を与(あた)えた。



この新(しん)総(そう)督(とく)の悪(あく)政(せい)で、

ネルタを勢(いきお)い付(づ)かせる事(じ)態(たい)へと発(はっ)展(てん)する。



それから間(ま)もなく

ネルタに第(だい)2次(じ)革(かく)命(めい)が起(お)き、

歴(れき)史(し)が繰(く)り返(かえ)された。



各(かく)地(ち)で犯(はん)罪(ざい)と疫(えき)病(びょう)と

死(し)体(たい)が溢(あふ)れるこの頃(ころ)には、

赤(あか)土(つち)の丘(おか)での処(しょ)刑(けい)の娯(ご)楽(らく)は衰(すい)退(たい)し、

新(あら)たな高(こう)級(きゅう)娼(しょう)館(かん)が建(た)てられていた。



南(なん)西(せい)部(ぶ)のカヴァとネルタが

睨(にら)み合(あ)っているあいだに、

東(とう)部(ぶ)では疫(えき)病(びょう)が広(ひろ)まっていく。



ペタは疫(えき)病(びょう)の発(はっ)生(せい)を秘(ひ)匿(とく)し、

エルテル風邪(かぜ)と呼(よ)ばれたこの病(やまい)が

各(かく)地(ち)に恐(きょう)慌(こう)を引(ひ)き起(お)こす。



最(さい)初(しょ)の1年(ねん)で多(た)数(すう)の病(びょう)死(し)者(しゃ)を出(だ)し、

作(さく)物(もつ)の収(しゅう)穫(かく)が遅(おく)れるだけでは済(す)まずに、

疫(えき)病(びょう)は周(しゅう)辺(へん)の領(りょう)地(ち)にも影(えい)響(きょう)を及(およ)ぼした。



貴(き)族(ぞく)は武(ぶ)力(りょく)を集(あつ)めて収(しゅう)奪(だつ)を行(おこな)い、

民(みん)衆(しゅう)は組(そ)織(しき)を作(つく)って略(りゃく)奪(だつ)に走(はし)り、

泥(どろ)水(みず)を求(もと)めて殺(ころ)し合(あ)いが起(お)きた。



食(た)べる物(もの)を失(うしな)い、女(おんな)子(こ)供(ども)が売(う)られ、

盗(とう)賊(ぞく)が増(ふ)え、道(みち)に死(し)体(たい)が転(ころ)がった。



この恐(きょう)慌(こう)が原(げん)因(いん)で、エルテル領(りょう)は

メーニェの氏(し)族(ぞく)との連(れん)絡(らく)が断(た)たれる。



氏(し)族(ぞく)からの支(し)援(えん)を失(うしな)いつつあったところに

エルテル領(りょう)主(しゅ)が病(びょう)臥(が)し、新(あら)たな領(りょう)主(しゅ)の元(もと)に

南(みなみ)のオーブ領(りょう)が別(べつ)の疫(えき)病(びょう)を引(ひ)き起(お)こした。



恐(きょう)慌(こう)にあっても、

ネルタは湖(みずうみ)周(しゅう)辺(へん)の支(し)配(はい)の正(せい)当(とう)性(せい)を

主(しゅ)張(ちょう)し続(つづ)ける。



サンスァラ王(おう)女(じょ)が殺(ころ)されたカヴァは

ネルタに対(たい)する報(ほう)復(ふく)に執(しゅう)着(ちゃく)し、

変(か)わらず敵(てき)対(たい)の意(い)志(し)を示(しめ)し続(つづ)けた。



エルテル、オーブ、ペタの東(とう)部(ぶ)3領(りょう)は、

疫(えき)病(びょう)の蔓(まん)延(えん)により介(かい)入(にゅう)もしない。




分(ぶん)水(すい)街(がい)は防(ぼう)壁(へき)の中(なか)で享(きょう)楽(らく)に耽(ふけ)り、

新(あら)たな総(そう)督(とく)は法(ほう)の陰(かげ)で

ネルタを支(し)援(えん)していた。



カヴァとネルタの啀(いが)み合(あ)いは続(つづ)き、

長(ちょう)期(き)化(か)した対(たい)立(りつ)で両(りょう)国(こく)は貧(ひん)窮(きゅう)していく。



カヴァでは捕(ほ)虜(りょ)王(おう)子(じ)が復(ふく)讐(しゅう)の為(ため)、

ネルタを討(う)つ準(じゅん)備(び)を進(すす)めていた。



王(おう)子(じ)は長(なが)い年(ねん)月(げつ)を掛(か)けて

ネルタを隔(へだ)てる山(さん)脈(みゃく)を削(けず)り、

軍(ぐん)が進(すす)む道(みち)を作(つく)った。



『山(やま)をも穿(うが)つ、カヴァの執(しゅう)念(ねん)。』



こう謳(うた)われたカヴァは、

西(にし)の端(はし)から湖(みずうみ)までを繋(つな)ぐ山(さん)道(どう)を進(しん)軍(ぐん)し、

冬(ふゆ)の僅(わず)か十(じゅう)数(すう)日(にち)でネルタを破(やぶ)った。



20年(ねん)に亘(わた)る戦(せん)争(そう)は、カヴァが勝(しょう)利(り)を収(おさ)める。



戦(せん)争(そう)が終(しゅう)結(けつ)しても、

失(うしな)った生(せい)活(かつ)が元(もと)に戻(もど)ることはない。



戦(せん)争(そう)の傷(きず)跡(あと)は各(かく)地(ち)に深(ふか)く残(のこ)り、

欠(けっ)損(そん)したものは修(しゅう)復(ふく)さえできない。



戦(せん)争(そう)と疫(えき)病(びょう)の混(こん)乱(らん)が治(おさ)まりつつあると、

島(しま)に長(なが)らく干(かん)渉(しょう)して来(こ)なかった

メーニェの氏(し)族(ぞく)が踏(ふ)み入(い)った。



赤(あか)土(つち)の丘(おか)に建(た)てられた高(こう)級(きゅう)娼(しょう)館(かん)の、

美(び)貌(ぼう)と叡(えい)智(ち)に優(すぐ)れたドレイプの元(もと)に、

赤(あか)髪(がみ)の孤(こ)児(じ)が一人(ひとり)やってくる。



島(しま)にはまだ、残(のこ)り火(び)が燻(くすぶ)り続(つづ)ける。



挿絵(By みてみん)




 ◆ 断(だん)章(しょう) 『絶(ぜっ)海(かい)の孤(みなしご)』 おわり

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