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金貨の娘  作者: 之#u4e4b
第9章 薄闇の嵐

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第9章 第3節 薄暮の星

(やま)(すそ)(がん)(ばん)(けず)って(つく)られた(きゃく)(せき)

(さい)(じょう)(だん)(せき)までは、100()(じょう)もある(かい)(だん)

(のぼ)らなければならない。



――(しゃ)(めん)()かって、(まっ)(すぐ)(のぼ)るのは、

  (こう)(りつ)(わる)いのよ。



(やかた)()たばかりの(ころ)(くら)べれば、

(たい)(りょく)()いても(きん)(にく)()いてない。



(だん)()むごとに(ふと)(もも)(おも)たくなり、

()(きゅう)(つづ)かず、(ひざ)(けい)(れん)()こした。



「もう()()ぃ。」



(かい)(だん)を8(わり)ほど(のぼ)って、

わたしは(ちから)()きた。



(ちか)くの(きゃく)(せき)(すわ)って

(はく)(よう)(もう)のコートをクッションにし、

そのまま(あお)()けになった。



(みぎ)()()れた(いし)(きゃく)(せき)(つめ)たくて、

身体(からだ)()やすのに(てき)している。



わたしに(はこ)ばれて(らく)をしていたイオスが、

身体(からだ)(うえ)()ってベッド()わりにする。



「イオスー。」



()(まん)(あら)わに()(まえ)()んでも、

こちらに(かま)わず(のど)()らし、

(まえ)(あし)(なん)()(むね)()みつける。



(ふく)(おく)(きん)(ぞく)(どう)()(こす)れる(おと)(みみ)()でる。



わたしから()りる(よう)()もないので、

(りょう)()(かお)だけを()(まわ)すことにした。



(かわ)()ったり()びたりすると、

()には(しろ)(しゅん)(まく)()せて

()(みょう)(かお)がいくつも(つく)れる。



「ニクスー。

 いい景色(けしき)でしょー。」



(さい)(じょう)(だん)から()びかけてきたスーとレナタは、

ずっと(げん)()だった。



レナタはマルフとアイリア(たち)(わか)れて、

わたし(たち)(ごう)(りゅう)した。



(しゅう)(かく)(さい)今日(きょう)は、

わたし(たち)(いっ)(しょ)(やかた)(もど)って

そのまま()まる()(てい)らしい。



(ひど)景色(けしき)ね。」



わたしより(した)(だん)()たトリンは

()()いでここまで(のぼ)り、

(つぶや)いて(ふか)()(いき)()く。



(たい)(しゅう)(よく)(じょう)(えん)(とつ)から(のぼ)(ふと)(じょう)()()え、

()(さん)(がい)にはいくつかの(すい)(えん)()つ。



()(かたむ)き、その(けむり)()(かげ)()まれる。



(まち)(かわ)(きょう)(かい)にして、

(じょう)(りゅう)(てい)(たく)()から()()(みどり)

(ひん)()()(めい)(かく)にした。



(あか)(つち)(おか)()(よる)(やかた)は、

(しん)(にゅう)(しゃ)(こば)(へい)(さき)(とげ)(かがや)いて()えた。



――(ざい)(にん)(おう)(かん)ね。



(さい)(じょう)(だん)まで()ったスーが、

(きゃく)(せき)()()りて(もど)ってきた。



(かの)(じょ)(あたま)()っていたアルは

(はげ)しく()られて()()()(のど)()らし、

(きゃく)(せき)()りると()(なか)(けい)(れん)させ、

()()(もよお)している。



(こう)(えん)(たの)しかったねっ。


 トリンは? (たの)しめた?」



(きょう)()ない。」



退(たい)(くつ)でもなかったよね。レナタ?」



()ってスーっ! わぁっ!」



レナタもスーの真似(まね)をして(かい)(だん)()り、

(いきお)いづいて(はし)ってくる。



まだ(ちい)さな身体(からだ)(きゃく)(せき)()(はば)()わず、

レナタは(あし)(もつ)れさせると(ちゅう)(たお)れ、

わたしは(あわ)(かの)(じょ)()()めた。



(きょう)()身体(からだ)(ふる)わせるレナタは

(あい)(いろ)(ひとみ)(わら)っている。



あと(いっ)()でも()(ちが)えれば、

(おお)きなケガを()うところだった。



レナタの()わりに

イオスが()(せき)(あし)(もと)()ちていた。



レナタの()がわたしの(むな)(もと)()たり、

(かる)(きん)(ぞく)(おん)身体(からだ)(つた)わる。



「スーの真似(まね)なんてしたら(あぶ)ないわ。」



()()けないとね。」



()(けん)(こう)(どう)をしたスーが()う。



「ふふっ。(たす)かりました。

 ありがとうございます。


 ニクスは(のぼ)らないんですか?」



「もう(いき)(くる)しいもの。」



わたしはレナタのケープの頭巾(フード)(かぶ)せた。



(かの)(じょ)(ぎん)(かみ)には(しろ)頭巾(フード)がよく()()う。



(たか)()(しょ)(くう)()(うす)いからだよね。」



スーが()(みょう)なことを()うと、

レナタが(うし)ろを()()く。



(かみ)(りょう)(おお)いので、

頭巾(フード)(うし)姿(すがた)(ふく)らんでいる。



「でもわたし(たち)(のぼ)りましたよね?」



「スーも(ひさ)しぶりだからって

 レナタに(てき)(とう)なことを(おし)()まないで。


 スーは()(えん)()(まわ)しで

 胡乱(うろん)()(ちょう)をしたのよ。


 (てん)(がい)(さん)(さん)(ちょう)(のぼ)るでもしなければ

 (へい)()よ。


 ゼズ(さん)(みゃく)だって(たか)()(しょ)には

 (おお)きな()()えないものね。」



(うそ)だったんですか?」



(うそ)でもないよね。」



()ったスーは(わら)っていたし、

(からか)われたレナタも(おこ)ってはいない。



(やかた)()ない二人(ふたり)(ため)に、

 (いち)()でお(まも)りを()ったのよ。」



(むな)(もと)(おさ)めた(かわ)(ぶくろ)から、

(ふた)つの(そう)(しょく)(ひん)()()した。



「わぁ。()(れい)。」



(ゆび)(さき)ほどの(おお)きさの、

(あわ)いピンク(いろ)のリボンの()(ひろ)げ、

(ちい)さな(てい)(てつ)(かたち)をした(ぎん)(そう)(しょく)(ひん)

レナタの(くび)()けた。



(ゆび)(さき)ほどの(ちい)さく(うす)(てい)(てつ)は、

(いち)()()られていたお(まも)り。



ムネモス(たち)(いち)()()った(とき)()つけて

ずっと()になっていた。



(てん)(しゅ)()けば、このカヴァの(そう)(しょく)(ひん)は、

(ひがし)(がわ)(りょ)(かく)(たか)()りつけていたらしい。



リボンは(かの)(じょ)身体(からだ)にはまだ(なが)かったので、

(くび)(うし)ろで(むす)んで(なが)さを調(ちょう)(せつ)する。



(わたし)にも?」



(きん)(てい)(てつ)はスーに(わた)す。



「うん。

 サンサに()()けられたお(きゅう)(きん)の、

 使(つか)(みち)(かんが)えてたの。」



レナタが(だま)ったままトリンを()ると、

(かの)(じょ)()(けん)(ちから)()れて(くび)(よこ)()る。



二人(ふたり)にはこれまで(いろ)(いろ)

 (たす)けて(もら)ったから、その(れい)。」



(いち)()でカヴァを(けん)()していたトリンには、

どんな(もの)でも()()るはずはないので

(よう)()はしなかった。



「でもスーには(おう)(ごん)(ほう)

 ()()うと(おも)ったけれど、

 (いち)()だと鍍金(めっき)しか()かったの。」



スーのお(まも)りは鍍金(めっき)がされた(どう)(せい)で、

とても(かる)いものだったので

(てん)(しゅ)(あい)()()()(こう)(しょう)()()た。



「ううん。ありがとう。


 鍍金(めっき)でも(かま)わないよ。


 ニクスが(わたし)(ため)に、

 (えら)んでくれたものだから(うれ)しいよ。」



スーは(きん)()(しょく)(しょ)(おな)(ひも)のお(まも)りを、

()(くび)()けてわたしに()せてくれた。



()()う?」



その姿(すがた)(そう)(ぞう)(どお)りで(わら)った。



わたしの(ふと)(もも)(すわ)って(はな)れないレナタは、

イオスの(りょう)(まえ)(あし)(つか)んで()()げる。



(かの)(じょ)()(かた)()()らなかった(ため)に、

イオスはミャオと(みじか)()いた。



挿絵(By みてみん)




 ◆




「スー。

 あんたって(ほん)(とう)()(ぞく)よね?」



ずっと(しず)かだったトリンが、

(とつ)(ぜん)そんな(しつ)(もん)をした。



(わたし)はトリンと(おな)()()(いん)(しゅっ)(しん)だよ。


 あなたと(おな)じで、

 (べっ)(かん)()ばれる()(なん)(じょ)()んでた。」



「それは(うそ)だね。

 今日(きょう)のあいつらはなんなのさ?


 ()(ぞく)(れん)(ちゅう)はあんたに(あたま)()げてっ。

 あいつら(ぜん)(いん)(えら)(やつ)らよね?」



(はなし)(だま)って()いているレナタが

(こん)(わく)してわたしの(かお)()るので、

こう()っているようだった。



(しゅつ)()(たず)ねない。ですよ。』



レナタが(やかた)()まりを(まも)っていても、

トリンはその()まりを(まも)らない。



わたしはレナタの(かんが)えに(しゅ)(こう)して

(こと)()(えら)ぶ。



「スーを(うたが)ったところで、

 ()られるものはないわよ。


 この(まち)では(えら)いひとほど、

 (あたま)()げるものだからね。」



「あんたの(こと)()(しん)じない。」



ユヴィルの(よう)(へい)(たち)(ゆう)(かい)された()(けん)()(らい)

わたしは(かの)(じょ)(しん)(よう)(しん)(らい)もされていない。



()(かた)がなく(くち)()ざす()りをする。



わたしの(かお)()たレナタが(くち)(もと)(ゆる)めた。



(かの)(じょ)(わら)わせたいわけではない。



(わたし)()(まえ)はメリエ・ハス・スース。


 (まち)(そと)から()たトリンが、

 この()(めい)()らないのも(とう)(ぜん)だよね。」



「スー…。」



()びかけたわたしは(りょう)(くちびる)(かる)()み、

()()らした。



それでもスーはわたしの()()て、

(あご)()く。



(わたし)()まれたメリエ()は、

 この(まち)()()(ころ)から、

 (だい)(だい)(そう)(とく)をやっていたんだよ。


 トリンは()らないよね。


 あの()(たい)(じょう)

 わたしの()()(ころ)されたのを。」



スーは(とお)(ちい)さくなった()(たい)()()ろした。



わたしはその()(けん)について、

()(しょう)()(ろく)()んで()っている。



(かの)(じょ)()(てい)(たく)(どう)()(こく)(とう)(ぞく)(おそ)われ、

スーは()(ぞく)(ぜん)(いん)(うしな)った。



「…(ころ)した(あい)()は?」



()(さん)(がい)(しょう)()だよ。」



「は? なんで(しょう)()が?


 ()(てい)(こう)()でもしてたのか?」



「トリンッ。」



トリンにとっては(じょう)(だん)のつもりでも、

わたしは(ちょう)(しょう)した(かの)(じょ)(あさ)む。



「トリンが()()(いん)()んでた(ころ)

 (しん)殿(でん)()れて()かれなかった?」



「なに? (かわ)()こうの?


 わたしは()かなかったわ。」



ネルタで()まれ(そだ)った(かの)(じょ)は、

()()()()(べつ)(かみ)には(いの)らない。



(むかし)はあの(しん)殿(でん)

 (あか)()()れた(しょう)()(はい)って、

 ()まって(だん)()()いていったんだよ。


 (なん)(にん)もの(わか)(しょう)()

 (つき)()(がみ)セリーニに(いの)って、

 (えい)(えん)(いのち)(あた)えられることを(ねが)い、

 ()(ども)()()りにする。」



「…それが、なんの(はなし)?」



トリンは()(けん)(ちから)()れて、

()(えん)(はなし)(いら)()ちを(あら)わにする。



()(がみ)セリーニは()れた(おとこ)(たい)し、

(にん)(げん)寿(じゅ)(みょう)があることを(なげ)き、

(おとこ)()(ろう)()()(あた)えたとされる。



しかし()(ろう)()()(だい)(しょう)に、

(おとこ)(えい)(えん)(ねむ)りについてしまう。



()(がみ)セリーニの(しん)()


 (しん)殿(でん)(ほう)()された(だん)()

 (しん)(かん)から『(おう)(ごん)(しゅく)(ふく)』を(あた)えられ、

 (えい)(えん)(ねむ)りに()く。


 そして(ちか)くの()()()()てられる。


 (はは)(おや)からすれば(だん)()

 ()(ぶん)(たち)(おな)(しょう)()にはなれないからね。


 (じょ)()なら(けん)(こう)()はすぐに()られる。


 その()()はトリンも()かるはずだよ。」



「それにあんたの(りょう)(しん)と、

 なんの(かん)(けい)があるのさ?」



トリンは(うで)()み、(あし)()み、(かい)(だん)(たた)く。



「ハミウス(ほう)(げん)(あん)よ。」わたしは()った。



トリンには()(かい)されず、

(かの)(じょ)(くび)(よこ)()る。



(しず)かな(こえ)でスーが(つづ)けた。



(しょう)()()きていけるだけの

 (さい)(てい)(げん)(ほう)(しゅう)(ほう)(さだ)め、

 ()(ども)(ばい)(ばい)(きん)()する(ほう)(あん)だよ。


 (わたし)()()()()(いっ)(そう)し、

 ()()(いん)()(ども)()()(じん)(りょく)してた。


 でもこの(げき)(じょう)(かん)(せい)して

 すぐに(ころ)された。


 (まも)ろうとした(しょう)()(あい)()

 (ころ)されるなんてね…。


 (こう)(にん)のハミウスは(わたし)(ちち)(おや)(ほう)(あん)を、

 ()(ぶん)のものにして(せい)(りつ)させた。


 でも(かれ)(そう)(とく)にするべきではなかった。」



「なんでさ?


 あんたの(おや)(わす)(もの)が、

 (せい)(しき)(ほう)になったんだろ?」



スーは()()じ、(くび)(よこ)()る。



「トリンにとっては

 きっと(しん)じられない(はなし)


 (そう)(とく)になったハミウスは

 ()()()(よう)して(とく)(しょく)し、

 ネルタに()(ども)()ってたんだよ。」



(うそ)()わないでっ!」



トリンは(たか)(こえ)(げき)(こう)した。



「スーの(はなし)(うそ)ではないわ。


 ()()(いん)(ふく)(まち)(ひがし)(がわ)では、

 ハミウスの()()()されている。


 ハミウスの()(しょう)()(ろく)(のこ)っているのよ。


 ()(すう)()()が、

 ()(さん)(がい)からネルタに()れてこられた。」



「は? …そんなの()るわけない。」



わたしの(こと)()(しん)じてはくれない。



「トリンはゴレムを、

 ナルキック・ゴレムを()ってる?」



挿絵(By みてみん)



「…()ってる。


 けれどなんでっ、なんであんたが

 その()(まえ)()ってるのさ?」



「ゴレムとわたしは()()いだもの。


 ネルタの(さい)(こう)()(しょ)(かん)

 (おう)(みぎ)()とも()ばれた(かれ)は、

 (おう)のケイロウに(ころ)された。


 あなたの()(ぞく)がケイロウを(おそ)れ、

 ネルタから()()した(ねん)のことよ。」



「だからなんで、

 あんたがそんなこと()ってるのよ!」



トリンが()りたいことは、

その(しつ)(もん)には(そん)(ざい)しない。



「わたしは()(ぶん)()(しん)が、

 なにも()らないということを

 ()っているからよ。」



その(こた)えに

トリンはわたしから()()らした。



――ナルキック・トリン。



(おう)(たい)(りつ)したゴレムの()で、

トリンの()(ぞく)、ナルキック(ぞく)

ネルタから()(はん)する(けい)()になった。



ゴレムの()、トリンの(ちち)

ナルキック(ぞく)(おさ)となったカパネは、

()(ぞく)()()れてネルタを(はな)れても、

()(さん)(がい)(なん)(みん)にはならなかった。



カパネは(どう)(ぞく)(あつ)めると、

()(ぞく)(たん)()()(しき)(けっ)(せい)して、

(かい)(どう)(たい)(しょう)(おそ)っていた。



ネルタとカヴァの(せん)(そう)での(こん)(らん)(じょう)じて、

かれらの(りゃく)(だつ)(なが)(あいだ)(つづ)けられた。



しかし(せん)(そう)()わり、

(ぶん)(すい)(がい)調(ちょう)()(へい)(つか)まると、

カパネは(きょう)(せい)(ろう)(どう)(しゃ)になった。



()(しょう)()(ろく)にはその(けい)(ばつ)(しる)されている。



(とう)()まだ15(さい)だったトリンと、

(おさな)いクイナは(おん)(しゃ)()けて、

(とも)()()(いん)()れられた。



(しん)じなくてもいいよ。


 わたしは(かみ)()(しん)(かた)鍍金(めっき)(おう)と、

 お(じょう)(さま)(さい)()()てきた。


 どんな(こと)()(ろう)しても、

 あなたには(しょう)(めい)できない。」



「この(うそ)()きっ!」



(かの)(じょ)はサンダルを()いで

わたしに()げつける。



レナタに()かって()んだサンダルは、

(はん)(しゃ)(てき)()ばしたわたしの(みぎ)()

(ぐう)(ぜん)()たって()ちた。



トリンはそれで(あきら)めたのか、

もう(いっ)(ぽう)のサンダルを()げはしなかった。



「わたしの(せい)(しき)()(まえ)は、

 ネルタ・ネク・ニクス。


 ネルタの(おう)、ケイロウの(むすめ)


 お(じょう)(さま)()ばれた(そく)(じょ)

 ラミーの異母妹(いもうと)がわたしよ。」



「あのお(じょう)(さま)異母妹(いもうと)なんて…。」



「わたしが(らく)(いん)だからよ。


 (つき)(やかた)()ばれた(べっ)(かん)()たあなたなら、

 西(にし)(とう)()らすニースという()(まえ)(むすめ)

 (みみ)にしたことはあるわよね。」



この(べっ)(しょう)(こころ)()たりのある(かの)(じょ)は、

()()()り、(くち)(ひら)いてなにか()いかけた。



――ニースよね。



ネルタでは『()(つう)ではない』という()()で、

(つつし)みを()らない()()(たち)

(かげ)でわたしをニースと()んだ。



「あなたの()(とお)り、

 わたしの(こと)()(こん)(きょ)はないわよ。」



(かの)(じょ)()(ほこ)ろうとするも、

()(しょう)()()(ぜん)になり、(かお)()()らせる。



「あなたはなにを(こん)(きょ)()(ぶん)(しん)じるの?」



(しつ)(もん)(しつ)(もん)(かえ)すトリンのように、

わたしは(かの)(じょ)()(しん)()(かた)()う。



――(ずる)いやり(かた)だわ…。



(かの)(じょ)(あと)退(ずさ)りして(かい)(だん)()(はず)すと、

(ころ)()ちかけて姿()(せい)(くず)した。



(かの)(じょ)()っていた()(しん)()(ぞく)()(とき)の、

ネルタの()(ぞく)という()まれついてのもので、

(すべ)ては()()のものでしかない。



(いの)りを(ささ)げていた(かみ)()(しん)も、

(つか)えていた(おう)(じょ)も、

いまの(かの)(じょ)(みちび)きはしない。



(さい)(こう)()(しょ)(かん)をしていた()(まん)()()も、

(とう)(ぞく)(だん)(しゅ)(どう)する(ちち)(おや)もすでに()ない。



トリンは()(ぞく)(とも)()(そう)(うしな)い、

(かの)(じょ)()(しん)()(ねん)()たなかった。



「あっ…わたしは…っ…。


 (うば)っ、(うば)われたんだっ!


 (ぶん)(すい)(がい)に、あいつらにっ!」



トリンは(こん)(らん)し、スーを()()する。



「スーはなにも(うば)ってない。


 そんなこと、トリンだって

 ()かってるわよね?」



(かん)(しゃく)()こした

()(ども)(あい)()にしている()(ぶん)で、

わたしは(かの)(じょ)(あさ)む。



(ちが)うっ! (うば)ったっ!


 だから(ぶん)(すい)(がい)のやつらから!


 (うば)うんだっ! (かえ)してよ!」



()くに()えない(こと)()(なら)べる(かの)(じょ)に、

わたしは(くび)(よこ)()る。



(みずうみ)から(あふ)()(みず)は、

 (みずうみ)には(もど)らないのよ。」



(にら)み、(なみだ)(こぼ)(かの)(じょ)()けられる(こと)()は、

ゴレムから(おそ)わった(こと)()しかなかった。



「…ニクス、()てください。」



スーもわたしも(だま)っていると、

(ささや)いたレナタがわたしの()(にぎ)って、

(みなみ)(そら)()()げて(ゆび)(さき)()ける。



レナタの()(やわ)らかく、(あたた)かい。



(くも)()(そら)には、

(ほし)(ぼし)(うす)(ひか)って()(はじ)める。



(あか)(むらさき)(いろ)(そら)から(ひがし)()(ぞら)()かって、

(よわ)(よわ)しく(たよ)()(こう)(てん)(なが)れる。



「あれ、(なが)(ぼし)ですか?」



レナタに(たず)ねられたものの、

なにか(めい)(かく)(こた)えられないうちに

(こう)(てん)はすぐに()えてしまった。



()()()(ひかり)なら(ほん)()んだ()(おく)がある。



(かみなり)(もと)になる(らい)()(あつ)まり(きゅう)(じょう)になって、

(たか)(ねつ)()って(ひかり)った(じょう)(たい)のまま(そら)()う。



(きゅう)(でん)()かれたそれを()()すれば、

そのひとに()かって(かみなり)()ちる

とネルタでは(おそ)れられている。



スーは()ていなかった(よう)()で、

()ったままトリンを()()ろしていた。



トリンは(かい)(だん)(うずくま)り、

(こえ)(おさ)えて()いている。



(くる)しむ(かの)(じょ)にわたしはなにもできない。



(かえ)りましょうか。わたし(たち)(やかた)に。」



()(ぞく)(うしな)いフランジになったトリンに、

わたしはこう()()けることしか

できなかった。




 ▶

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