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心優しい元歌姫は逆境に耐える騎士  作者: 陽菜


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エピローグ 幸せな日常

 あれから、シャルル達は国を再建していった。帝国も手伝ってくれたおかげで、再建するまでに時間はかからなかった。

 カミツレも、王女として騎士として、兄を支えながら民のために尽くしていた。


 戦争から三年後、シャルルとシェーンの結婚式が行われた。民はようやく結ばれた二人に祝福と感謝の声をあげた。

「おめでとうございます、兄様」

「ありがとう、カミツレ」

 いつもはドレスなど着ないカミツレも、この時ばかりは祝うために身にまとっていた。

「シェーン様も、おめでとうございます」

「ありがとう。私のことも義姉様って言ってくれないのかしら?」

「うっ……その、まだ恥ずかしくて……」

「フフッ、冗談よ。可愛い義妹が出来てうれしくてつい」

 シェーンが笑うと、それにつられるように二人も笑う。

「では、私は一度退室しますね」

「うん。最初に祝ってくれてありがとう」

 カミツレが二人の待機室から出ると、アルセーヌがスーツを着て待っていた。

「アルセーヌ殿。似合っていますね」

「そうか?あまり着ないから慣れないが……お前もドレスきれいだぞ」

「あ、ありがとうございます」

 そう言われ、頬を染める。恋人に言われてうれしくない人などめったにいないだろう。

 シャルルとシェーンの結婚式では、カミツレも聖歌隊に混ざって歌唱する。彼女の歌声は誰よりも美しかった。

 そんな、盛大な結婚式も終わり、しばらくした後。

「カミツレ、いつ結婚するの?」

 突然兄に聞かれ、「ふぇ!?」と謎の言葉を発してしまう。

「い、いきなりどうしたんですか?」

「だって、カミツレも付き合っている人いるんでしょ?」

 そう言われ、カミツレは顔を真っ赤にする。

「そ、その……」

「僕はカミツレにも幸せになってほしいな」

「……か、考えます」

 兄に言われるとは思っていなかったカミツレはそんな返答しか出来なかった。


 その夜、アルセーヌにそのことを言うと「シャルル様が……」と目を丸くしていた。

「は、早いですよね。ゆっくり考えて……」

「カミツレ」

 アルセーヌに遮られ、カミツレは彼を見る。その瞳には情熱がこもっていた。

「……結婚、してくれないか?」

「え、あ、え……?」

 突然のことにカミツレの思考は追い付かなかったが、理解すると頬を赤く染める。

「恋人らしいことは何も出来なかったが……お前を守りたいと思う気持ちは本物だ。だから、一生を共に生きてくれ」

 その言葉に、カミツレは目を丸くしていたが、やがて小さく笑った。

「……はい」

 そして、彼の手を握った。


「えぇえええ!?」

「あ、あああアルセーヌ殿と!?」

 次の日、仲間達に報告すると驚かれてしまった。

「ぜ、全然知らなかった……」

「い、いつから付き合っていたんですか?」

 アメリーとセシリアに詰め寄られ、カミツレが話すと「へぇ……」と目を丸くした。

「……聞いてもなお付き合っていたなんて信じられないんだけど……」

「あはは……私もアルセーヌ殿も鍛錬が大好きだからね……」

 ほかの人ならいざ知らず、アルセーヌとデートとなったら鍛錬ばかりだ。信じられないのも仕方ないかもしれない。

「カミツレ、どうした?」

「あ、アルセーヌ殿!カミツレと婚約したみたいですね」

「……あ、あー……そうだな……」

 シリルに笑顔で言われ、彼にしては珍しく顔を赤くした。

「孫を見れるのか?」

「早いわよ、おじい様……」

 ブラーヴが身を乗り出し、カミツレは苦笑する。

 それからは結婚式に向けて忙しかった。特にドレスを決める時が大変だった。

「こっちの方が……」

「いえ、こっちが……」

「こっちがいいだろう」

 アメリーとセシリア、それからブラーヴがカミツレをそっちのけで話し合いをしている。

「……あのー」

「カミツレ、こっちはどうだ?」

 そんな中、アルセーヌが見せてくれたのは純白のドレス。

「きれいですね。これがいいです」

「そうだろう?……結婚式本番ではこれを着て、あいつらが決めたドレスも着たらいいさ」

「さすがアルセーヌ殿!それじゃあ、一度全部着てみて」

 アメリーとセシリアに手を引かれ、カミツレはそれぞれが選んだドレスを着ることになった。


 そうして、シャルルの結婚式から一年後。二十歳になったカミツレはかつての戦友達に囲まれて結婚式が行われた。

 アルセーヌが選んだ純白のドレスを身にまとったカミツレは、彼のもとに歩いていく。

「……これから、絶対に幸せにするからな」

「はい。私も、アルセーヌさんを幸せにしますね」

 アルセーヌが花嫁を抱き上げると、全員から拍手が巻き起こった。

 そしてさらに一年後、待望の女の子が生まれた。

「カミツレ、おめでとう」

「ありがとうございます、兄様」

 シャルルが部屋に来て、カミツレの手を握る。そばには赤子を抱えているアルセーヌがいた。

「アルセーヌも、おめでとう」

「ありがとうございます。シェーン様は大丈夫ですか?」

 シャルルも、つい先月男の子が生まれたばかりだった。気になって尋ねると、小さく笑う。

「この後、すぐに向かうよ。何かあったら教えてね」

 それだけ言って、シャルルはシェーンのもとに向かった。それを見送った後、アルセーヌがカミツレの方を見る。

「……本当にありがとう」

「いえ、私も母親になれてうれしいですから」

 そんな話をしていると、ブラーヴがやって来た。そしてカミツレの子供を見ると、大泣きしてしまう。

「カミツレの子供を見ることが出来るとは……」

「泣きすぎだよ……」

 それをなだめながら顔を見合わせる。

「抱っこしますか?」

「いいのか?」

「はい。カミツレを育ててくれなかったら、こうして結婚もできませんでしたから」

 アルセーヌに赤子を渡され、ブラーヴは抱っこする。その時の笑顔は絶対に忘れないだろう。

 これからの幸福を夢見て、二人は微笑んだ。


 一か月後、シャルルとカミツレは劇場跡に来ていた。そこは更地になっており、花が咲き乱れていた。

「……母上、カミツレを守ってくれてありがとうございます。これから、この国のために尽くしていきます」

 シャルルが祈るように呟く。

 遠くで、アルセーヌとシェーンが二人を呼んだ。

「……行こうか」

「そうですね」

 その場を去る前、カミツレはもう一度振り返る。

(……お母様が守ってくれたこの命、みんなを守るために使うと誓うわ)

 そう思いながら、二人のもとに走っていく。

 その後ろ姿を、兄妹に似た二人の男女が見送っていた。

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