第27話:古都の心理的決壊 〜新京極の偽善と、全国から集う足軽たちの覇気〜2
【読者の皆様へ(免責事項)この物語はフィクションであり、実在の地名、団体、特定の宗教および法的システム等とは一切関係ありません。いかなる組織を誹謗中傷する意図もございません。――前回のあらすじ――大岩山の頂上から放たれた電磁波デジタルウイルスは、霞が関の官庁ビルを物理的・データ的に完全消滅させ、日本の中央制御システムを根底から【完全破壊】した。伏見の老舗酒蔵群をも血の美酒の濁流へと変えた大洪水の中、主人公・ひややっこ(47歳)は、己の誠実さを「友達ホルダー」にハメて搾取し続けた女・のんこを損切りし、無敵のチェス盤へと戦場を移した。あれから、1年――。文明の力を失い、不安と恐怖に狂う大衆の前に、新たなる巨大な「欺瞞の砦」が頭をもたげていた。
それは、元サラリーマンの現場の男たちばかりではない。
そこには、マッチングアプリの画面の奥で「いいね」の数を競い、男を年収や身長でスクリーニングしていた虚飾をすべて剥ぎ取られた、等身大の女性たちの姿もあった。
かつてアプリの海で、自分を高く売るための「市場価値」や、友達への「世間体」という薄っぺらい防衛線(天動説)に縛られていた彼女たち。
だが、生きるか死ぬかの新世界において、そんな綺麗事は1円の腹の足しにもならないことを、彼女たちは身をもって知ったのだ。
「もう、スペックがどうとか言ってる場合じゃないわ。今日食べるものを、誰と、どうやって運ぶか。それだけよ」
彼女たちは、新興宗教の甘い洗脳に逃げ込むことを拒絶した。都合のいいときだけ男の誠実さにタダ乗りし、いざとなれば被害者の顔をして切り捨てるような「甘え」を自ら損切りしたのだ。
泥にまみれた作業着を着て、男たちと変わらない力で大八車の梶棒を握り、闇市の配給を仕切る女性たち。
彼女たちの目には、かつての品定めするような冷ややかさはなく、共にこの過酷な日常を生き抜く仲間への、真っ直ぐで対等な「信頼の体温」が宿っていた。
ダメならダメで引きずらず、次の現場でまた汗を流す。
そんなタフな生存戦略に、彼女たちもまた、普通に慣れて、普通に笑い合っていた。
その中に、俺もいた。ひややっこ、47歳。
特別な神でも、超能力者でもない。俺は今、日本全国から集まったサラリーマンの仲間たち、そして同じように凛と自分の足で立つ等身大の女性たちと肩を並べ、大八車を引いて物資を運ぶ「普通の人間」として、この新世界をたくましく生きていた。
この生存戦略があれば、世界が更地になろうとも普通にやっていけるのだ。




