第27話:古都の心理的決壊 〜新京極の偽善と、全国から集う足軽たちの覇気〜1
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語はフィクションであり、実在の地名、団体、特定の宗教および法的システム等とは一切関係ありません。いかなる組織を誹謗中傷する意図もございません。――前回のあらすじ――大岩山の頂上から放たれた電磁波デジタルウイルスは、霞が関の官庁ビルを物理的・データ的に完全消滅させ、日本の中央制御システムを根底から【完全破壊】した。伏見の老舗酒蔵群をも血の美酒の濁流へと変えた大洪水の中、主人公・ひややっこ(47歳)は、己の誠実さを「友達ホルダー」にハメて搾取し続けた女・のんこをハッキングによって完全処刑。現実の理不尽な市場リスクを冷徹に損切りした男の覇気が、更地となった世界に完全降臨した。あれから、1年――。文明の力を失い、不安と恐怖に狂う大衆の前に、新たなる巨大な「欺瞞の砦」が頭をもたげていた。
霞が関が吹き飛び、日本という国家の網の目が完全にロスカットされてから、ちょうど1年が経過した京都府京都市。
かつてスマートフォン一つで24時間いつでも物資が届き、電子マネーの数字だけで生活が完結していた「文明の力」は、この地上から文字通り100%消え去っていた。
電気も通信も、大岩山の神の電磁波が干渉しないごく一部の有線ネットワークを除いて完全に沈黙。
ガソリンの供給も途絶えた世界で、人々はかつての「歩兵」のように、己の足で歩き、大八車や自転車を引いて物資を運ぶ、泥臭い「生身のストリート」へと強制的に引き戻されていた。
昨日まで組織の看板や肩書き、システムの上にあぐらをかいていた元経営陣やエリート、そして精神的に自立できない大衆は、「明日どうなるか分からない」という極限の不安と恐怖に狂い、毎日パニックを引き起こしていた。
そんな迷える羊たちの心の隙間に、ヌッと入り込んだ巨大な影があった。
崩壊した新京極通の学校の跡地。
そこを聖地(絶対領域)として急激に肥大化した新興宗教組織――その名も、『全能聖処女の園・聖法会』。
「1年前の混沌から、私たちの調和の歌声で世界を再構築するのです。この聖法会のルールに従う者だけが、不安のない楽園へ行けるのです」
かつて実家の温室を飛び出し、夕暮れの音楽学校を支配した43歳の音楽教師・真理子は、
今や大衆の不安を栄養にして全能の教祖へと祭り上げられていた。
彼女がかつて学校のルールで生徒を縛ったように、新しい世界の「聖なる法」を配給と引き換えに大衆に刷り込む独裁体制。
そしてその横には、元地下アイドルの処女性を神聖視され、信者たちを惹きつけるための広告塔として祭り上げられた「聖処女」ゆきが、盲信の笑みを浮かべてひざまずいている。
彼女たちがやっていることは、あの世界が変わる前に女たちがやっていた「男を友達ホルダーにハメて搾取し、都合が悪くなればマニュアルの盾で弾圧するシステム」を、
そのまま宗教という形に肥大化させた、欺瞞の塊に過ぎなかった。
だが、その欺瞞の砦を冷めた目で見つめ、地上の現実をたくましく生き抜く男たちがいた。俺たちのような、元サラリーマンの現場の人間――「足軽たち」だ。




