第23話:古都の心理的決壊 〜傲慢な聖女(シンデレラ)の進軍と、偽りの熱狂(アイドル)が抱く羨望~3
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の地名、団体、神社、酒蔵、映画館などとは一切関係ありません。また、作中に登場する科学的・医学的描写には一部フィクション(創作)が含まれており、特定の地域や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、エンターテインメントとしてお楽しみください。
神は、汚れた世界の中で私を『正しい側の人間』として選んでくださった!大岩山のデジタルウイルスにより、日本全土の主要都市が地獄の業火で焼き尽くされる中、呪いの針はいよいよ歴史と因習の古都・京都の心臓部を抉り抜く。映画館の座席を乗り越えて観客たちが互いの裏ログを暴き合い、血みどろの殺し合いを演じる新京極通の阿鼻叫喚。その地獄の真ん中を、スマホを拡声器代わりに掲げて、上品かつ圧倒的な狂気を孕んだ高笑いとともに堂々と進軍する43歳の音楽教師・真理子。完全に脳波をバグらせ、究極の全能感に酔いしれる大人の女。その姿を、かつてクズ男の前でおしっこを漏らして泣くことしかできなかった地下アイドル・ゆきが涙の目で見つめた瞬間、マニュアルの枷をぶち壊した「本物の強者」への、歪みきった一方的な羨望が脳髄に突き刺さる――!
そのえげつない映像を目撃した瞬間、ゆきの脳裏に、1年前にマッチングアプリのクズ男にバーのバックヤードの死角へ追い詰められ、衣服を強引に剥ぎ取られそうになって尊厳を失った「あの夜のトラウマ」が激しくフラッシュバックした。
恐怖のあまり我慢していた猛烈な尿意が這い上がり、足がすくんで動けない。周囲の観客たちが互いの裏の顔を知って発狂し、座席を乗り越えて殺し合いを始める中、ゆきは這う這うの体で新京極通の路上へと這い出たが、そこもまた暴徒と化した群衆で埋め尽くされていた。
「もう嫌……なんで私ばっかり、こんな目に遭うのよ……っ!!」
泣き叫び、雑踏の隅で蹲るゆきの耳に、パニックの喧騒を切り裂くような、凛とした、そして圧倒的な狂気を孕んだ高笑いが響き渡った。
「おーほっほっほ! ざまあ見なさい! 私をナメたバカ男どもの末路よ!」ゆきが涙に濡れた目を恐る恐る上げると、そこには、阿鼻叫喚の地獄と化した新京極通の真ん中を、スマートフォンを拡声器代わりに掲げて堂々と突き進む一人の大人の女性がいた。
名前は、真理子――43歳、音楽教師。
彼女は、自分から金を毟り取っていた美人局・筒井が、自らの罪が作り出した幻覚の檻の中で脳を内側から爆発させて死ぬ様を特等席で目撃した女だった。
「神は、神様は、この汚れた世界の中で私を『正しい側の人間』として選んでくださった!」
完全に脳波の認知システムをバグらせ、究極の全能感(全能の聖女)へと脳内変換した真理子は、実家の温室を飛び出し、周囲の発狂した群衆を「バカ男ども、神の裁きを受けなさい!」と一喝しながら、上品な笑顔のまま進軍していた。
その姿を見た、地下アイドル・ゆきの胸に、あまりにも的外れで、あまりにも切ない感情が去来した。
(うわぁ……あの女の人、凄い……。カッコいい……)
普段、マニュアル通りのシステムの中で笑顔を売り、裏ではクズ男の支配に怯えておしっこを漏らして泣くことしかできなかった受け身な自分。
それに引き換え、目の前の女性は、世界が滅びゆくこの極限のパニック下で、誰の目も気にせず、自分の虚栄心と個性を100%爆発させて強く生きている。
(個性って、きっとああいうことなんだ……。私だって、あの人みたいになれたらよかったのに……っ!!)
お互いの「裏の顔」や惨めな現実を一切知らないからこそ生まれる、地獄の中の一方的な羨望。
真理子の高笑いと、ゆきの歪んだ羨望の視線が交錯する後ろで、伏見の酒蔵から流れ出した濁流が京都の街をさらに深く浸食していく。
大岩山のウイルスの手の平の上で、古都・京都を包み込む「静かで、最も陰湿な二次災害」の幕が、今完全に上がろうとしていた。
(第24話へ続く)
ご一読ありがとうございます!生身の現実から目を背け、地獄の真っただ中で交錯する傲慢な聖女の進軍と、アイドルの惨めな羨望。だが、大岩山のウイルスの手のひらの上で、京都を包み込む「静かで、最も陰湿な二次災害」はここからさらにエグさを増していきます。次回、【第24話 古古都の心理的決壊 〜因習の神域に流れる血の美酒と、盲信の従者〜】。呪いの波動は、伏見の由緒正しき老舗酒蔵群、そして神社仏閣の神域へ容赦なく牙を剥く! 「伝統を守る」とメディアで微笑んでいた当主どもの、安物アルコール水増しの強欲と、先代への毒殺計画ログが音声付き超高画質で伏見中に大放送される――!?格式高い暖簾が血の粛清で切り裂かれる次話を、全裸でお待ちください!




