第23話:古都の心理的決壊 〜傲慢な聖女(シンデレラ)の進軍と、偽りの熱狂(アイドル)が抱く羨望~1
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の地名、団体、神社、酒蔵、映画館などとは一切関係ありません。また、作中に登場する科学的・医学的描写には一部フィクション(創作)が含まれており、特定の地域や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、エンターテインメントとしてお楽しみください。
神は、汚れた世界の中で私を『正しい側の人間』として選んでくださった!大岩山のデジタルウイルスにより、日本全土の主要都市が地獄の業火で焼き尽くされる中、呪いの針はいよいよ歴史と因習の古都・京都の心臓部を抉り抜く。映画館の座席を乗り越えて観客たちが互いの裏ログを暴き合い、血みどろの殺し合いを演じる新京極通の阿鼻叫喚。その地獄の真ん中を、スマホを拡声器代わりに掲げて、上品かつ圧倒的な狂気を孕んだ高笑いとともに堂々と進軍する43歳の音楽教師・真理子。完全に脳波をバグらせ、究極の全能感に酔いしれる大人の女。その姿を、かつてクズ男の前でおしっこを漏らして泣くことしかできなかった地下アイドル・ゆきが涙の目で見つめた瞬間、マニュアルの枷をぶち壊した「本物の強者」への、歪みきった一方的な羨望が脳髄に突き刺さる――!
東京という国家の心臓部が完全灰滅し、大阪の御堂筋が血の海に沈み、那覇の青い海が自決の叫びで染まる――。
日本全土の主要都市をドミノ倒しのように破壊し尽くした大岩山のデジタルウイルス。
その災厄の針が次に向かったのは、何百年もの間、「建前」と「本音」の文化を洗練させてきた古都・京都であった。
近代的な強欲を剥き出しにする他都市とは違い、京都の決壊は極めて陰湿で、そして身の毛もよだつほどグロテスクな形で幕を開けた。
キィィィィィィィィィィィン!!
鴨川の等間隔に並ぶカップルたち、そして四条河原町の雑踏を行き交う群衆のスマートフォンが一斉に赤黒く明滅する。
洗練された雅な言葉遣いで談笑していたお嬢様風の女の画面から、『気楽な立場の観光客(地方出身者)の分際で私に色目使ってんじゃねぇよ、都合の良い財布のくせに(笑)』『キャアキャアうるせえんだよ、外人どもがよ!!』という、腹の底に隠していた凄まじい見下しの本音データが音声付きの超高画質で大放送された。
隣では、老舗の暖簾を守る格式高い旦那衆の、ドロドロとした親族間の遺産略奪計画や、誰が誰の種を宿しているかという「血統の性のタブー」が一瞬にして白日の下に晒されていく。
「な、なんやこれ……! お前、裏ではそんなこと考えてたんかッ!!」「触るなクズ! 脳みその中身ごと消えちまえッ!!」
上品な仮面を強制的に剥ぎ取られた瞬間、人間のプライドは一気に狂暴化する。
四条河原町の美しい街並みは、一瞬にして最もプライドを傷つけ合う罵り合いと、互いの顔面を掻きむしり、殴り合う陰湿な地獄絵図へと変貌した。その被害は、京都の歴史そのものへと伝播していく。




