第21話:終焉のエピローグ ~焦土と化す首都(東京)、そして因習の古都(京都)へ繋ぐ絶望の狂詩曲(ラプソディ)~2
――だが、大岩山の怨念は、これで満足したわけではなかった。東京の通信網が完全に死に絶えた直後、電磁波デジタルウイルスは日本全国のネットワークを伝って、一瞬にして地方の主要都市へと電撃移住を果たしたのだ。
【大阪・梅田・難波】
笑いと活気に溢れていた商人の街は、一瞬で「強欲の生体暴露」によって血の海と化した。
他人の不幸を笑い者にし、銭勘定の裏で他者を蹴落としていた醜悪な本音が大開帳。
御堂筋は暴徒化した車の衝突事故で完全麻痺し、道頓堀川は発狂して飛び降りた人間たちの死体で埋め尽くされていく。
【沖縄・那覇】
平穏な観光地も例外ではない。リゾートの裏に隠された、人間のドロドロとした劣等感や排他的な脳内データが一斉に開帳。青い海を背景に、スマホを握りしめた人々が互いの肉体をハッキングし合い、狂気の中で自決していく。名古屋、福岡、札幌――すべての大都市がドミノ倒しのように脳波逆ハックの餌食となり、日本全土が瞬く間に灰滅していった。
そして、世界の終焉の針が次に向かったのは、歴史と因習が深く息づく古都――「京都」。
表面上は極めて雅で、丁寧で、品格を保っている人々が、脳内ではどれほど冷酷に他人を見下し、呪い、ドロドロとした情念を抱えているか。
「建前」と「本音」の文化が何百年も洗練されてきたこの土地こそ、大岩山のウイルスにとって最高にエグい「極上の苗床」だった。
その京都の、とある豪華な一軒家の自室。実家の生ぬるい温室に守られ、プライドだけを肥大化させて他人の誠意をナメくさっていた一人の女が、ベッドの上でガタガタと震えていた。
名前は、真理子。――43歳、音楽教師。マッチングアプリの罠に引っかかり、闇の犯罪グループから「裏で男に股を開いてる動画を学校やPTAにバラまく」と底なしの恐喝ループに脅され、なけなしの貯金を毟り取られて人格を完全に歪まされていた女。
彼女が血の気の引いた顔でスマートフォンを見つめたその瞬間、画面がノイズと共に禍々しい赤黒さに明滅を始める。東京を、そして日本全土を灰滅させたあの低級霊のウイルスが、ついに真理子の歪みきった精神の檻へと、その牙を突き立てようというのか。
(第22話へ続く)




