第19話:大空の性癖開帳と霞ヶ関崩落 〜おばちゃんの悲鳴と仮面夫婦の血みどろ殺し合い〜2
綺麗事で塗り固めていた偽りの仮面は、すべて剥ぎ取ってやる。地上波テレビ局を狂気の発狂部屋へと変えた大岩山の電磁波ウイルスは、光の速さで大気圏を駆け昇り、逃げ場のない大空の密室をも完璧にチェックメイトしていく。高度数百メートル、東京上空を飛ぶ報道ヘリのフロントガラスに、突如として血のような赤黒いデジタルノイズが出現した。操縦士・ゴローの胸ポケットでスマホが怪異の振動を始めたその瞬間、東京の全空に投影されたのは――世間には愛妻家で通っている男の、あまりにもグロテスクで幼児退行した「赤ちゃんおむつプレイ」の裏のログだった。社会的生命を瞬時に処刑され、正気を失った男が操縦桿を握り潰したとき、ヘリは制御を失って霞ヶ関の官庁ビルへと急降下を始める――!
地上波パンデミックの呪いは、大人の恋愛市場だけに留まらない。
スマートフォンという悪魔の端末を持つ、高校生や大学生といった若い世代の日常をも、一瞬にして原始の地獄へと退化させていく。
「痛い……ねえ、痛いよぉ……」
都内の閑静な住宅街。一人の女子高生の女の子が、フラフラと足元をよろめかせながらアスファルトの上を歩いていた。
その光景は、あまりにも異常だった。
彼女の脳天には本物の『弓道の矢』が、深々と突き刺さっていたのだ。
彼女はマッチングアプリの裏で、誠実な男子学生を「私の引き立て役の養分(笑)」と呼び、高級な食事を奢らせては直前でブロックするドタキャンを繰り返していたクズ悪女だった。
その概要はこうだ。
この女子高生美月には、何でも言うことを聞いてくれる優しくて真面目な彼氏、同じ弓道部の拓海がいた。
しかし、美月はその一途さに退屈し、裏では別のハイスペックな大学生の男と二股をかけていた。
ある日、拓海に浮気の証拠を掴まれそうになった瞬間、美月は躊躇なく牙を剥いた。
先手を打って、自分のSNSに嘘の悲鳴を書き連ねたのだ。
『最近、拓海からの執着が狂気じみてて怖い……。毎日待ち伏せされてる。誰か助けて、ストーカーされてるの』
世界は「女性の被害者」の言葉を鵜呑みにした。
真面目な拓海の言い分には誰も耳を貸さず、彼は瞬く間に社会的抹殺へと追い込まれた。
同級生の男子からは激しい集団リンチを受けるようになり、
女子からはまるで汚い物を見るかのように、一斉に侮蔑の
眼差しを向けられるようになったからだ。
拓海にはもう、安心できる自分の居場所など、
どこにも残っていなかった。
美月はスマホの裏メモ帳に、冷酷な勝利宣言を刻んでいた。《ストーカーって騒げば、男は耐えるしかない(笑)。私の勝ち。非モテの養分は一生這いつくばってろ》
ウイルスによってその全悪口ログを世界へパージされ、低級霊の怨念の波動によって頭をハックされた拓海に弓道部の部室に置いてあった矢で狙撃されたのだ。
そして拓海もまた、この世に生きる希望など全てをなくし、
美月を狙撃した後、自分の胸に包丁を突き立てて、
壮絶な最期を遂げたのだ。
買い物帰りの見知らぬおばちゃんを見つけると、女の子は白目を剥き、血の涙を流しながら問いかけた。
「ねえ……おばちゃん……私、どうなってるの……? 裏のログ、バレてないよね……?
ねえ、でもなにかおかしい……。
私、どうなってるの?」
「キャァァァァァァッーーーーー!!! 人殺しぃぃぃ!!」 おばちゃんは買い物袋を放り出し、狂ったようにギャーギャーと絶叫しながら逃げ去っていく。
美月はその場にドサリと崩れ落ち、自分が世界から完全に見捨てられた恐怖の中で、そのままぴくりとも動かなくなり、絶命(完全処刑)した。




