第2話 強者の記号のハッキング、そしてストリートの完全崩壊1
2. 大岩山のハッキングとセーフティネットの破壊(第1話)
深夜2時、京都の心霊スポット・大岩山で、主人公の怨念が低級霊たちの覇気とシンクロ。マッチングアプリ『みんなでペアペア』のコードを書き換え、霊的デジタルウイルスを通信網へ流します。翌朝、現代社会の最後の砦である「男性向け性被害相談室」の電話をジャック。救いを求める男たちへ呪詛を逆流させ、自尊心を破壊するトラップに変貌させました。
マッチングアプリの同時多発ドタキャンによって、日本中の誠実な男たちの自尊心が粉々に砕け散り、街が絶望の悲鳴に包まれてから3日。
だが、この理不尽な世界は、まだ本当の終わりの始まりに気づいていなかった。
YouTubeの恋愛アドバイザーや、SNSの自称モテ男、モテ女どもは、画面の向こうで未だにこう宣っていた。
「ドタキャンされたくらいで凹むな男たち!
鎧が足りないんだよ!
服装を綺麗めアローズに変えて、シャネルの香水でもまとって、強者の余裕を見せつければ女なんか一発だ!」
相変わらずの、自己責任論。
相変わらずの、中身のないステータス信仰。
傷ついた人間の心の血に目を背け、ただ表面だけを着飾って「耐えて勝て」と煽り続けるクソみたいな記号の世界。
大岩山の山頂、奇妙な幾何学模様が刻まれた大岩神社の境内で、俺は不気味に明滅する携帯端末を手に、冷たい鼻笑いを漏らした。
「そうか。お前らがそこまでその『鎧』を信じるなら、その鎧そのものを、お前らを内側から肉体的・精神的に腐らせる『呪いの棺桶』に変えてやる」
俺はアローズのジャケットの襟を正し、ブルーシャネルの香水を一吹きした。
その瞬間、俺の身体から放たれたドス黒い覇気が、大岩山に渦巻く特級の怨念たちと共鳴し、衣服の繊維、そして空間に漂う香水の粒子へと溶け込んでいく。
「大岩山の霊的磁場よ、京都の街、いや全国の『強者の記号』をハックせよ」
俺の影が引き戸を静かに開けるように地面へと伸び、大岩山の四方八方へと広がっていった。
霊的ウイルスは、電波だけでなく、現実の物流ネットワークをも侵食し始めたのだ。
ご一読ありがとうございます。服の繊維に、香水の粒子に、大岩山の冷気と怨念が溶け込んでいく。次回、【第2話 強者の記号のハッキング、そしてストリートの完全崩壊2〜3】。週末の四条河原町、着飾った男女の『鎧』が一瞬にして『呪いの棺桶』へと変わる。肉体を締め上げ、脳を狂わせる絶望の毒ガスがストリートを埋め尽くしたとき、かつて俺を切り捨てた「隠れブックバー」夜を旅する本棚バー・ノクターンのオーナーのルナから、ガタガタと震えるLINEが届き――。次回の地獄絵図も、どうぞお見逃しなく。




