第14話:天動説のからくり 〜仲人の嘘と、磨り減る女たちの自尊心〜1
前回のあらすじ:半年前の日本中の電波の海の中で、お互いの存在を知らないまま、それぞれの思惑と絶望を抱えてすれ違っていた5人の男女。男たちのナメくさった態度に耐えながらシステムのクソルールを骨の髄まで学習するひややっこと、誠実であるがゆえに無言のフェードアウトを食らい自室で泣いていた美咲。歪んだ世界のレールは、静かに加速していく――。
大岩山の頂上から低級霊のウイルスが放たれる、半年前の恋愛市場 。
そこは、綺麗事の裏で男と女の血肉をすり潰し、金と尊厳を毟り取る『歪んだ巨大な監獄』だった。
特に「結婚相談所」という名のシステムは、アットホームな救済の仮面を被った、最悪の搾取機関(天動説)だった。
そこに入会した男女は、仲人から徹底的なマニュアルで調教される。
男に課されるのは『耐えろ』という絶対のルールだ。
「初デートの店はバチッと決めろ」「食事代は10円単位まで男が全額奢れ」「女性の我が儘は器の大きさで全肯定しろ」 。
男のなけなしの給料や血の滲むようなコストを、当然の義務として搾取していく 。
一方、女に教え込まれるのは『男を値踏みするあざとい盾』だった。
「男の年収や実家暮らしのスペックを天秤にかけなさい」
「少しでも気に入らなければケジメをつけて、注意人物として切り捨てなさい」 。
そして、このビジネスの最大の闇は、仲人の「取り持ちの嘘」にある。
男女のデート中、仲人は裏でこう動く。
男には「彼女、アナタに凄く好意を持ってますよ! もっと投資(プレゼントや高額コース)しましょう!」とがっつかせ、
女には「彼は経済力があるから、多少の不満は我慢して籍を入れちゃいなさい」と耳元で囁く。
別れる話が出れば、「アナタの努力が足りないから、50万円の追加心理セミナーを受けなさい」と男にペナルティを課して更に毟り取る 。
そうして作られた「偽りの歯車」は、大金(成婚料40万円)を分捕るための『スピード成婚』へと無理やり誘導される。
だが、互いの生身の人間性や「本音の深い対話」をすべてマニュアルで隠蔽されたまま成婚した男女を待っているのは、婚姻届を出した瞬間に化けの皮が剥がれる残酷な現実だ 。
スピード成婚した夫婦ほど、価値観の不一致でソッコーで破綻し、離婚率が異常に高いという冷酷なからくり。
結婚相談所とは、成婚料さえ回収できれば、その後の男女の人生がボロ雑巾のように破滅しようとも知ったことではない、ただの「合法的な詐欺ビジネス」だったのだ 。




