第13話:歯車たちのプレリュード 〜半年前の群像、すれ違う5つの覇気〜2
前回のあらすじ:完璧なエリートの皮を被った闇の美人局グループにハメられ、隠し撮り動画を人質に底なしの恐喝ループに叩き落とされた音楽教師・真理子。他人の誠意をナメくさっていた傲慢な彼女の精神は、誰にも言えない暗闇の中で完全にチェックメイトされていた。物語の時間はここから、運命のハッキングの「半年前」へと収束していく――。
さらに、別の場所では、37歳のシングルマザー・ゆりが、トリプルワークの激務を終えたボロ雑巾のような身体で、スマホを見つめていた 。
かつてヤリ目のクズ男に尊厳を傷つけられてアプリを休止していた彼女が、なんとか心のエネルギーを回復させて再登録した半年前 。
彼女自身は、男に甘えて養育費を出してほしいなんてこれっぽっちも思っていない 。
ただ、夜の寂しさを分かり合えて、いつか3人の中学生の息子たちとも仲良くしてくれる優しい人がいたら嬉しい、というささやかな『母としての祈り』を丁寧に文字にしていた 。
だが、男たちは「シングルマザー、子供3人」という現実の条件を見た瞬間に、手のひらを返して無言で消えていく 。
「何で? 別に何も求めてないのに、何で何も言わずにみんな消えちゃうの……?」
反抗期の息子たちから「ババア、ほっとけよ」と言われ、我が家にも居場所のない彼女は 、アプリの無言の拒絶によって、さらに深い絶望の淵へと追い詰められていた 。
ライブを終えた楽屋裏では、24歳の地下アイドル・ユキが、鏡の前で乾いたため息を漏らしていた 。
あのバックヤードでの狂気、そしてアスファルトの上でおしっこを漏らさせられた、あの剥き出しの恐怖と屈辱 。
男全体が信じられなくなり、激しい警戒心の心の壁を作っている彼女 。
だが、彼女には天性のアイドルの素質があった。
だから、スマホを開くと、心がどれだけ悶々と傷ついていても、無意識に「明るくテンポの良いメッセージ」を打って返してしまうのだ 。文字は明るい。
だが、中身は男を1ミリも信じていない。だから、少し男が距離を縮めてくると、ひねくれたトゲのある言葉を吐き出して壁を作ってしまう 。
「この男もあの変態と同じじゃないか? 本当に大丈夫か?」と、相手を値踏みし、警戒し、自ら男を弾いては、自分の華やかな死角にある孤独にやきもきしていた 。




