第11話:楽屋裏の猟犬ども 〜24歳・地下アイドルの恐怖と、歪んだ性癖の罠〜1
前回のあらすじ:男を家畜として搾取するアイドルビジネスの真ん中で、激しい孤独に身を焦がしていた24歳の地下アイドル、ゆき。肩書ではなく生身の自分を見てくれる大人の男を求め、彼女は素性を隠してアプリ『みんなでペアペア』に登録した。しかしそこに待っていたのは、コスプレ趣味の女を性的なオモチャとしか見ない、底なしに歪んだ狂気の怪物たちの群れだった――。
アニメとコスプレを愛する24歳の地下アイドル、ゆき。
彼女は、事務所の厳しい目やファンの監視の網をかいくぐり、一人の生身の女性としての出会いを求めて、マッチングアプリ『みんなでペアペア』に登録していた 。
もちろん、自分がアイドルであることは完全に隠した。だが、大好きなアニメのコスプレ写真や、オシャレをしてウィンドウショッピングを楽しむ日常の姿を、ありのままの自分としてプロフィールに載せたのだ。
「これなら、私の肩書じゃなく、中身を見てくれる大人の男の人に出会えるかもしれない」
だが、そこに待っていたのは、美咲やゆりの前に現れたクズ男どもとは全く異質の「底なしに歪んだ、狂気の怪物たち」の群れだった 。
彼女のコスプレ写真を見たアプリの男たちは、彼女を一人の人間としてリスペクトするどころか、ただの「性的な欲望を満たすためのオモチャ」としてしか見ていなかった 。
マッチングした途端、送られてくるのは、鳥肌が立つような特殊な性癖を隠そうともしない、下劣なメッセージの数々。
『そのアイドルの衣装、短いスカートが最高だね。今度、俺のためだけのプライベート写真撮影会をやってよ。スタジオ代は出すからさ(笑)』
『コスプレのまま、ホテルに来てよ。着替えるところ、じっくり見せてくれたらお小遣いあげるから(笑)』
メッセージだけなら、まだ画面を閉じれば済んだ。
だが、勇気を出して実際に会ってみた男は、さらに最悪の本性を持った「猟犬」だった。
お洒落な個室のあるバーで、最初は感じ良くアニメの話を合わせてくれていた男。だが、お酒が進むにつれて、男の目はねっとりとした、隠しきれない性欲の覇気へと変わっていった 。
男は、お酒を飲むペースを強引に煽り、ゆきが酔った隙を見計らって、テーブルの下で太ももを触り、そのまま力ずくで襲いかかろうとしてきたのだ 。
「ちょっと、やめてください……! トイレ、行ってきます……っ」
恐怖と、お酒を無理に飲まされすぎたことで、ゆきは猛烈な尿意に襲われ、身体は完全に限界を迎えつつあった 。
男の腕を振り解き、逃げるように席を立った彼女の後ろを、男は足音もなく付いてきた 。
「あ、トイレならこっちだよ。こっちのほうが空いてるから」
男に促されるまま向かった先は、華やかな客席とは一線を画した、店の目立たない薄暗い裏側の通路、バックヤードの死角だった 。
周囲には誰もいない。音も届かない。
「な、何ですかここ……トイレ、どこですか……っ」
怯えて漏れそうな身体を震わせるゆりに対し、男はフッと化けの皮を剥ぎ取った薄笑いを浮かべ、彼女を冷たい壁際へと追い詰めて退路を塞いだ。
周囲には誰もいない。退路を完全に塞ぐようにして壁際へゆきを追い詰めた男は、フッと化けの皮を剥ぎ取った薄笑いを浮かべ、悍ましい言葉を口にした。
「トイレの前にさ、ここで撮影会させてよ。その短いスカート、ちょっとたくし上げてよ。誰も見てないからさ、いいじゃん(笑)」
「いや……っ、来ないで……!」
男の手が、彼女の衣服に伸びる。
大勢のファンに囲まれ、スポットライトを浴びていたはずの24歳の少女が、アプリの裏側に潜む男たちの歪んだ性癖と、力による支配の恐怖の前に、声も出せずにただ涙を流して震えていた 。
「ゆきちゃん、お腹パンパンじゃん。ここでおしっこしてよ」
「……え……?」
耳を疑う言葉に、ゆきの身体が恐怖で凍りついた 。男の目は、完全に狂っていた。




