第8話:逆光の羅針盤 〜46歳・真面目に生きてきた彼女の、もう一つの絶望〜2
前回のあらすじ:真美さんをスペックで切り捨て、俺の47年の純情をナメくさった恋愛市場を、地動説のペンで完全破壊したひややっこ。大岩山の山頂で無敵の覇気を放つ男の戦いから、時計の針は「1年前」へと巻き戻る。京都の片隅で、過酷な肉体労働の現場を30年間一途に守り抜いてきた46歳の女性・美咲。彼女の凍えるほどの孤独と、勇気を出して一歩を踏み出したアプリの世界で待ち受けていた罠とは――。
だが、そこに待っていたのは、大手の婚活ビジネスという名の、冷徹な「品定めと搾取のシステム」だった 。画面を開けば、メッセージを送ってくるのは、マニュアル通りの薄っぺらいセリフをコピペして、
すぐに「今から会えない?」
「LINE教えて」とがっついてくる、誠意の欠片もないモブ男たちばかり 。
あるいは、女性を「条件」や「年齢」だけで品定めし、46歳という年齢を見た瞬間に、挨拶すら返さずにブロックしていく、心の冷え切った男たちの羅針盤 。
さらにエグかったのは、世間に名前の知られていない、中小の零細結婚相談所や個人カウンセラーの罠だった 。
藁にもすがる思いで相談に足を運んだ美咲に対し、
カウンセラーの女は、アットホームな笑顔の裏で、冷酷にこう言い放ったのだ 。
「美咲さん、46歳高卒で今のスペックじゃ、普通にやってたら絶対に誰からも選ばれませんよ?
男の人は若い子が好きですから。
結婚したければ、30万円のプレミアセミナーを受けて、もっと男ウケする『偽りの綺麗めメイク』を勉強しなさい。
あと、いくら女性が働く時代だと言っても、
お金がなかったら共倒れしかしません。
男を財布だと思って、上手にあざとく転がす嘘を身につけなさい」
「……そんなの、違う。私は、嘘をついて男の人を騙したいんじゃない。
お互いの仕事を尊重し合える、本物の繋がりが欲しいだけなのに……!」 涙を流して拒絶する美咲に、相談所は「だから売れ残るのよ」と、冷たい言葉 of トゲを突き刺した 。
大金を毟り取られ、自尊心を粉々に砕かれ、成果もないのに「もっと自分を曲げて男に媚びろ」とコストばかりを要求される 。
男たちがドタキャンや拒絶に血を流していたその裏側で、美咲のような誠実な大人の女性もまた、システムとモラルの低い男たちの身勝手さによって、ダメージを食らいすぎて心が死にそうになっていたのだ 。




