番外編41:市場価値ゼロの夜を濡らす聖母の放流パルス~人間の脳内天動説(マーキング)を完璧な餌シグナルへと反転チェックメイトする、解剖学的暴虐アナコンダの這い寄り~1
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の寺社、教会、特定の宗教団体、結婚相談所、およびマッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の信仰や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。
チ、チ、チ、チ……。
とっくに夜の帳が下り、放課後公園の路地裏は光を拒絶するような、どす黒い漆黒の闇に包まれていた。アスファルトの熱を吸って増殖した、数千、数万のウジ虫たちが、幼児の腐敗死体の粘膜を咀嚼し、カサカサと微細な摩擦音を立てて這い回る「地動説(自然界の分解システム)」の不快な生体ノイズだけが、夜の静寂をねっとりと侵食している。
九条彩香(45歳)は、脳内最深部のバグ――『インセクトフィリア(昆虫愛好症)』がもたらす極上の皮膚感覚に脳を焼かれ、完全に時間を忘れていた。すでに二、三時間もこのヘドロの臭気が満ちる路上にしゃがみ込み、ウジ虫の這う幼児の死体を抱いて「おままごと」の上演を継続している。
物陰の死角、自動小銃の銃口を向けたまま配置に就いている元警察幹部や元エリート機動隊員たち――彩香を聖母として奉る男たちは、その異様な上演を冷徹な網膜プロセッサでじっと監視していた。【感情の完全隠蔽】によって呼吸をシステム化し(吸って5秒、止めて5秒、吐いて5秒)、ウイルスのハッキングをスルーし続けている彼らの知性を持ってしても、この凄惨なおままごとには強烈な不気味さと呆れを抱かざるを得ない。
(一体、聖母は何を始めているんだ……。あの非モテの男に下ネタを叫ばせて、ウジ虫を弄ぶなんて、完全に脳のプロセッサがイカれている……)
しかし、その一方で彼らの抑圧されたオスの本能には、歪んだ羨望が静かに明滅していた。
自分たちは一切の感情の動揺を許されず、冷酷なマシーンとして物資を貢ぐ下僕に甘んじているというのに、あの貧弱な非モテの男は、聖母の最も生々しい排泄ファクト(湯気を立てる放尿の儀式)を特等席で観測することを許されているのだ。
その非対称な特権に対する、ドロドロとしたインモラルな羨ましさが、銃口を握る男たちの指先にじっとりと冷たい汗を滲ませていた。
一方、父親役を強制され続けている狗飼幽二の摩耗も限界に達しつつあった。
引きつった理想の父親の笑顔のまま、何度も何度も幼児の死体に向かって「わーい、うんこ、ちんちん、ま〇こ……」と叫び、ウジ虫を撫でる肉体的・精神的な去勢の苦痛。
(ふざけるな……この頭のおかしいババアが……。いつまでこんな汚いゴミ相手におままごとを続けさせる気だ……。足腰がガクガクだ……)
だが、その幽二の限界の脳内プロセッサを完膚なきまでに叩き潰す、最悪の肉体的ハッキングが起動する。




