番外編40:二、三時間の狂気上演(おままごと)の果てに漏れ出す生体データ~去勢された快楽殺人鬼の網膜フリーズと、暗黒上野から這い出る巨大消化器官の逆ハック~2
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の寺社、教会、特定の宗教団体、結婚相談所、およびマッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の信仰や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。
一方、父親役を強制され続けている狗飼幽二の摩耗も限界に達しつつあった。
引きつった理想の父親の笑顔のまま、何度も何度も幼児の死体に向かって「わーい、うんこ、ちんちん、ま〇こ……」と叫び、ウジ虫を撫でる肉体的・精神的な去勢の苦痛。
(ふざけるな……この頭のおかしいババアが……。いつまでこんな汚いゴミ相手におままごとを続けさせる気だ……。足腰がガクガクだ……)
プロセッサの奥底で殺意のパルスを研ぎ澄まし、ポケットの中のカミソリを握る指にギチギチと力を込めながら、幽二が次の「擬似ログ(演技)」を計算していた、その時だった。
九条彩香という四十五歳の生身の肉体(有機物)の体内システムが、時間の経過とともに、避けられない生理的ファクト――「尿意」を限界まで蓄積させていた。
彩香は脳内麻薬で焼き切れたお母さん(役割)の笑みを浮かべ、完全に冷え切った幼児の死体の顔を覗き込んだ。
「あら……、かおるちゃんはおトイレ行きたくならないの? 本当にお利口さんな娘ね……。でもね、お母さん、おしっこしたくなっちゃったわ」
彼女のプロセッサにおいて、羞恥心という名のノイズはすでに百パーセントロスカット(灰滅)されていた。
世界が滅びる前には絶対に見せることのなかった、生身の排泄のファクト。しかし、今の彼女の脳内天動説では、これは娘の前で用を足す「無垢でクリーンな母親の姿」として完全に全肯定されていた。
さらに、目の前の幽二は「自分を年齢や市場価値で値踏みしてくる男」ではなく、無数の銃口の前に去勢された「父親という名の都合の良い無機質な記号(下僕)」に過ぎない。セミナーの男たちに放尿を観測させて支配してきた彼女にとって、男の前で下半身を晒すことは、むしろ女王としての全能感をデリバリーする神聖な儀式そのものだった。
「お父さん。あなた、お父さんなんだから、ちゃんと見ていなさいね」
「……は? え、お前……、こんなところで何する気だよ……っ!?」
本来は非モテの童貞であり、人間の本音を嫌悪して死体にしかクリーンな美学を見出せない幽二の脳内プロセッサが、あまりの唐突な生体ノイズに激しくフリーズ(驚愕)を起こした。
(おい、嘘だろ……。このババア、僕の目の前で、本気で出す気か……!?)




