番外編35:完璧なエデンを汚す生存のノイズと、死の痙攣(ファクト)がもたらした至高のエクスタシー、そして希望を失った老婆たちへのロスカット〜2
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の寺社、教会、特定の宗教団体、結婚相談所、およびマッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の信仰や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。
「それじゃあ、いただきまーす」
何も知らない一人の老婆が、笑顔でお椀を口元に運び、煮物を口に含んだ。
「うん、美味しい。やっぱりあの子の味付けは――」
その言葉が完全に紡がれるより早く、わずか5秒もしないうちに、老婆の脳内プロセッサが強制フリーズを起こした。
「うっ……うわっ、うわああぁっ!?」
老婆の顔面が、一瞬にして土気色を通り越してどす黒く変色する。胃壁を一瞬で融解させる強力な神経毒が、彼女の生体を内側から破壊したのだ。老婆は激しく身悶えし、手にしたお椀を地面に叩き落とすと、喉の奥から黒黒とした血の反吐を「ぶおーっ!」と派手に噴出し、そのまま前のめりに地面へと倒れ伏した。
ピクピクと両足が痙攣し、そのまま動かなくなる。即死だった。
「え……? え、何々!? どうしたの!?」
「ちょっと、大丈夫!? 冗談でしょ!?」
周囲の老婆たちの脳内プロセスがパニックで大暴走を起こした。血を吐いて絶命した老婆の身体を揺さぶるが、生体のパルスは完全に消失している。
「死んでる……死んでるわよこれ!! なんで!? なんでお鍋の料理を食べたら死んじゃったのよ!?」
阿鼻叫喚のノイズが救護エリアを埋め尽くす。その時、一人の老婆が鍋の中の異変に気づき、悲鳴を上げた。
「嫌ぁぁぁッ! 見て、お鍋の中に、あの子の髪留めが浮いてるわ!! 血がついてる……!!」
「そんな……じゃあ、あの子がやったの!? あんなに優しかったあの子が、私らを殺そうとしたの!?」
「馬鹿言わないでよ! 今まであの子が作ってくれた料理で、こんなこと一度もなかったじゃない!!」
極限の恐怖ファクトを突きつけられた老婆たちの精神は、瞬く間に崩壊し、醜悪な疑心暗鬼(内ゲバ)へとドミノ倒しに突入した。
「誰かが入れたんだわ……! 本当は、私たちのことを心の底で憎んでる犯人が、この中にいたんでしょ!?」
「あんたね!? あんたさっきあの子が遅いって怒ってたじゃない!!」
「何言ってるのよ、あんたこそいつも余分に食料を掠め取ってたじゃない!!」
「生きる希望」だった少女というシステムを失った瞬間、偽善のメッキは完全に剥がれ落ちた。
老婆たちは血走った目を剥き出し、お互いの髪を毟り合い、顔を爪で激しくひっかき合う、凄絶なとっかみ合いの大騒動を始めた。服を引きちぎり、泥と血に塗れて狂ったように罵り合う老婆たち。体力を消耗し、冷静な判断力など一ミリも残っていない地獄絵図。
その醜悪なノイズが響き渡る中、瓦礫の影からゆっくりと、狗飼幽二が姿を現した。
その手には、鈍く光るカミソリが握られている。
「な、何……? あんた誰よ……!?」
血塗れの顔を上げた老婆たちがカタカタと震える。パニックと過呼吸、そして高齢ゆえの衰弱で、彼女たちは狗飼が現れても、まともに立ち上がることすらできなかった。




