第7話:白き部屋の残光 〜1人で往った彼女が、最期に遺した微笑み〜3
前回のあらすじ:1999年、冬。理不尽な世界から女性としての幸せを奪われ続けた恩師・真美さんは、白血病という非情な宣告を受け、白い病室のベッドの上にいた。アニメーターの激務で最期に立ち会えなかった21歳の俺の悔しさを置き去りに、彼女は静かにその美しい瞳を閉じようとしていた。だが、その口元には優しすぎる微笑みが浮かんでいて――。
「先に行ってるね。あなたもその人生が終わったら、すぐ戻ってきてよ……」
真美さんは静かにその美しい瞳を閉じた。
1999年。彼女は、自らが望んだ「夢を見ない、最高に静かで深い眠り」の中へと、満たされた心のまま、1人静かに往ったのだ。
「……待たせてごめん、真美さん。俺は、今度こそ完璧に、あの日のケジメをつけにきたよ」
30年後の現代。47歳になった俺は、大岩山の山頂で、涙を流しながら、だが、かつてないほどの無敵の覇気を全身から放っていた 。
アニメーターの現場が忙しくて立ち会えなかったあの日の悔しさ。
1人で往かせてしまったあの白い病室の孤独。
そして、真美さんを夢を見ない眠りへと追い詰めた、この理不尽な世界のすべての質量が今、大岩山の霊的磁場をハッキングする、最大最強の『絶望の波動』へと完全変換された。
男は耐えろ、条件を満たせ、成果がなくても金を払い続けろと要求し、誠実な人間をストーカー扱いしてドタキャンを繰り返す、現代の狂ったみんなでペアペアや結婚相談所という天動説の世界 [INDEX]。
真美さんをスペックで切り捨て、俺の47年の純情をナメくさったこの理不尽な市場を、俺は1文字残らず、この地動説のペンで完全破壊してやった 。
大岩山の頂上から見下ろす世界は、低級霊のデジタルウイルスによって完全にチェックメイトされ、灰の更地と化している 。そして俺の傍らには、俺の30年間の祈りが生み出した布の娘――『真白』の着ぐるみが、真美さんの遺せなかった未来の命として、静かに佇んでいる 。
ゆるキャラブームが終焉し、かつてクライアントだった自治体から捨てるには忍びないと、まるで万有引力かのように、
10年を経た現在、娘は帰ってきたのだ。
真美さん、お前が静かに眠るその世界を脅かすクソどもは、俺が全員地上から消し去ってやった。
過去のすべての因縁は、等価交換(倍返し)の原稿の裏で完全精算された。
1人で負けずに生き抜いた俺の前に、今、暗黒の新世界の扉が、ゆっくりと開き始めようとしていた。
(第8話へ続く)
ご一読ありがとうございます。30年の時を超え、真美さんの遺した手紙の文字(覇気)を胸に、世界のクソどもを【完全破壊】した47歳のひややっこ。俺の祈りが生み出した布の娘――『真白』の着ぐるみを傍らに、暗黒の新世界の扉が今、ゆっくりと開き始めます。次回、【第8話 逆光の羅針盤 〜46歳・真真面目に生きてきた彼女の、もう一つの絶望〜1】。物語の時間は、大岩山ハッキングの「1年前」へと大きく巻き戻る。男たちがドタキャンや拒絶に血を流していたその裏側で、自立して真面目に働き、ただ本物の繋がりを求めて傷ついていた、もう一人の大人の女性の絶望とは――!?恋愛市場のもう一つのリアル戦線、お見逃しなく。




