番外編34:生体拒絶(ノイズ)を引き裂く狂気の一刺しと、絶命の瞬間に噛みつく解剖学的ファクト、そして偽善の果樹園へデリバリーされる最悪の救済3
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の寺社、教会、特定の宗教団体、結婚相談所、およびマッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の信仰や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。
「これだ……!! これだよおぉぉッ!!! これが僕の生きがいんだ!!! 見つけた、僕が生まれてきた意味を、やっと、やっと見つけたよぉぉぉォォッ!!!」
暗黒の密室に、狗飼の恍惚に満ちた、耳を劈くような高笑いが響き渡る。
腕の中の少女は、すでに白目を剥き、猿ぐつわの隙間からダラリと溢れる泡と血を流した「ただの物」に過ぎない。さっきまで生命のパルスを宿していた瞳は、濁ったガラス玉のように虚空を見つめている。
だが、狗飼にとっては、これこそが新世界で唯一、自分をスペック値で格付けせず、永遠に嘘をつかない「本物のクリーンな芸術」だった。
人生最高の全能感。脳内麻薬でプロセッサを極限まで焼き切った狗飼は、しばらくの間、死体の奥でピクピクと震える快感の余韻に浸り、涙を流して喜んでいた。
やがて、完全に冷たくなり、ギチギチときしみ始めた「エデンの人形」から、自身のペニスをヌルリと引き抜く。
衣服を整え、カミソリについた血を少女の白いワンピースで無造作に拭い去ると、狗飼の口元に、さらに歪で、冷徹な企みの笑み(エミ)が浮かび上がった。
狗飼はよく理解していた。
あのおばちゃんたちは、この少女の「クリーンな優しさ」に依存し、お互いを慰め合うことで、辛うじて人間としての体裁を保っていたに過ぎないということを。
少女というたった一つの神聖なライフライン(システム)によって、彼女らのコミュニティはかろうじて維持されていたのだ。
「フフッ……、アハハ……」
狗飼は、暗がりの床にぽつんと横たわる、冷たい物質となった少女を見下ろした。
「あなたたちが生きる希望だった少女は、もう死んだんだ。……だったら、あなたたちも行かないとね。あっちの世界に」
少女という拠り所を失い、これから新世界の泥の中で飢えに負け、お互いの肉を食い破るような醜い獣に退化してしまうくらいなら。
この自分が「綺麗な思い出」のまま、あの子のいる完璧な世界へロスカット(救済)してあげるのが、真の優しさというものだ。
狂った脳内ロジックを完成させた怪物は、再びポケットにカミソリを滑り込ませ、ガチャリと重苦しいドアのロックを解除した。
その足が向かうのは、少女の帰りをエゴに満ちた建前で待ち続けている、あの図書館跡地の救護エリア。
生いた獲物を品定めするように、最悪の企みを孕んだ笑みをコンクリートの砂漠に滲ませながら、狗飼幽二の足音は、老婆たちの待つ暗闇の奥へと静かに消えていくのだった。
番外編35へ続く




