番外編34:生体拒絶(ノイズ)を引き裂く狂気の一刺しと、絶命の瞬間に噛みつく解剖学的ファクト、そして偽善の果樹園へデリバリーされる最悪の救済1
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の寺社、教会、特定の宗教団体、結婚相談所、およびマッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の信仰や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。
チカッ……チカチカチカッ……!
窓をすべて分厚い木板で塞がれ、外の世界の略奪の声も、死体の腐敗臭すらも一切届かない暗黒の密室。しかし、その絶対的な静寂(防衛線)の内部で、狗飼幽二の脳内プロセッサは、これまでにないほど暴力的な生体ノイズによって激しくハックされていた。
「っ、が、う、あぁぁぁ……ッ!! んぐ、んんんーーーッ!!!」
手首を麻縄で赤黒く鬱血するほど縛り上げられ、口に分厚い布の猿ぐつわを噛まされた少女の喉から、押し潰された獣のような拒絶の絶叫が漏れる。
狗飼は、彼女が「嘘をつかない、僕をスペック値で格付けしない完璧なエデンの人形」として、お淑やかに祈るようなポーズで自分を受け入れるものと信じ込んでいた。
脳内の天動説(美しいファンタジー)のなかでは、彼女はすでに生身の穢れを削ぎ落とされた「綺麗な記号」であったはずだった。
自分のペニスを受け入れるときも、まるでお姫様が救世主に傅くように、無垢なままでいるはずだと。
だが、生身の人間として生きようとする少女の執念は、狗飼の都合の良い妄想を完膚なきまでに引き裂いた。
ドガッァッ!!
「――ぶっ!?」
自由な両足が、挿入の姿勢をとっていた狗飼の貧弱な腹部を容赦なく蹴り飛ばす。
泥に塗れた白いワンピースの裾が激しく翻り、細く瑞々しい太ももが、なりふり構わぬ生命の躍動となって狗飼の肉体を激しく拒絶した。
生々しい肉のぶつかる衝撃が、狗飼の肋骨を軋ませる。
「おい……っ! 掴みかかるな……暴れるなよっ……!! 僕の完璧なエデンを汚すな!!」
狗飼の口から、怪物の仮面を剥ぎ取られた、非モテ特有の独りよがりな逆ギレの叫びが迸る。
少女は縛られた両手を必死に動かし、爪の間に狗飼の表皮を削ぎ落とすほどの勢いで、狗飼の情けない顔、貧弱な鎖骨へと爪を立ててかきむしろうとする。皮膚が裂け、じんわりと血が滲む。
涙と鼻水、そして恐怖の汗でグシャグシャに汚れた彼女の顔は、さっきまで上野の図書館跡地でおばちゃんたちの前で見せていた「聖女」のそれとは程遠い、ドロドロとした生体データ(醜悪な生存への執着)に満ち溢れていた。
(なんだこれは、これじゃあ、あの現実の汚い女どもと何も変わらないじゃないか! 僕を拒絶するな、僕を汚いものでを見るような目で見るな!!)
「何すんだよお前……ッ!! 僕が、僕が君を救ってあげるって言ってるんだろォォッ!!」
完璧な楽園をノイズで汚された怒りと焦燥。少女の身体から放たれる圧倒的な拒絶のエネルギー(生体ノイズ)を前にして、狗飼のペニスは、恐怖と精神的去勢感から急速に萎縮しかけていた。
このままでは、またあの「解剖学的ファクト」に敗北する。現実の女の生々しさに圧倒され、無様にロスカットされる。




