おまけ第4話:『百合(ゆり)の散る夜 〜自己満足の承認欲求と、闇を照らす性の教育〜』2
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の寺社、教会、特定の宗教団体、結婚相談所、およびマッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の信仰や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。
「分からんか。なぜなら、あいつらの脳みそは完全にハックされとるからや。男がベッドの中で『気持ちいい?』としつこく聞いてくるんはな、お前を思いやっとるからやない。『俺のセックスは上手いって今すぐ言ってくれ』っていう、ただの浅ましい承認欲求の押し付けや。あいつらはお前が気を遣って返した『気持ちいいよ』っちゅう嘘の記号(お世辞)を真に受けて、『よし、俺のテクニックで女を満足させてやった、ゲームクリアや!』と脳内変換しとる。
お前の生身の表情も、身体の強張りも、痛みのSOSも、あいつらのマニュアル脳には1ミリも映っとらんのや。
だからお前がホテルを出て、生身の人間として『こんなエゴの塊のロボットは一瞬でロスカット(損切り)や』と消え去った時、あいつらは自分の『記号(お世辞)』と『現実』のギャップに耐えきれずにシステムエラーを起こす。
お前を切り捨ててきたクソ男も、お前が切り捨ててやった勘違い男も、どっちもシステムに脳を焼かれただけの『家畜』にすぎん。
そんな奴らのために、お前の30年間の尊い人生を1ミリもすり減らすな」
ひややっこの言葉によって、男女の絶望的な認知のズレが完全に暴かれた。
百合は、自分の身体が「愛のない、ひとりよがりな確認作業」を正常に拒絶していたのだと知り、張り詰めていた心の糸が切れたように深く息を吐いた。
「……それは、分かりました」
百合は、なおも大岩山の闇を見つめながら、途方に暮れたように呟いた。
「男の人がシステムや動物としての本能にバグってるのも、私の身体がそれを拒絶してたのも分かりました。でも……だったら、本当に満たされるセックスって、一体どんなものなんですか?
そんなの、今までの人生で一度も経験してない私に、分かるわけがないじゃないですか。
誰も教えてくれるわけでもなし、学校でも社会でも絶対に
誰も口にしません!!
もし私が、本当の生身の愛の交感を知りたい、それを望みたいと思ったら……私は一体、どうしたらいいんですか?
世間から相手にされなくて、セックスの経験がほとんどないような人間は、どこでそれを学べばいいんですか……っ!?」
46年間、実直に生きるほど「性」から遠ざけられ、切り刻まれてきた百合の、これが最後の、そして最も切実な叫びだった。
ひややっこはポケットから両手を出すと、鳥居の幾何学模様を静かに見つめ、フッと不敵な笑みを浮かべた。
「知りたいか。望みたいか。……お前がそこまで本気で『生身の現実』を取り戻したいと言うなら、あいつらのクソシステムを外側からクラッシュさせる、もう一つのハッキングルートを教えたるわ」
「もう一つの……ハッキングルート?」




