おまけ第2話:『500万の鎧を脱いだ夜 〜淡々とした映し鏡と、ユニクロの打診ルート〜』2
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の寺社、教会、特定の宗教団体、結婚相談所、およびマッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の信仰や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。
「ええと……『俺も音楽好きです! ロックとかよく聴くんですけど、〇〇さんはフェスとか行かれますか? 最近の流行りだと――』みたいに、共通点を見つけて盛り上げようとします!」
「あほ、お前が自分で自分を映してどうする。お前がやるべきなのは、淡々と『どんな音楽を聞きに行かれるんですか?』とだけ投げ返すことや。
自分の話なんか1ミリも混ぜるな。お前はただの、透明な『映し鏡』になれ」
「鏡、ですか……?」
「そうや。ここからが女の最深部の深層心理の話や。耳かっぽじってよう聞け。男っちゅう生き物はな、自分にちんちんがあるから、それを視覚的に見ることで『俺は男なんや』って嫌でも自己を確認できる。
だがな、女にはそれがないんや。自分を女たらしめる、絶対的な身体のシンボルを視覚的に確認することができん。
だからこそ女はな、男以上に何度も何度も鏡を見て、『今日の自分はちゃんと整っとるか、綺麗か』って確認せずにはいられんのや。
これは女として生まれし者の業そのもの!
これはメッセージのやり取りでも全く同じやぞ。
女が求めてるメッセージはな、お前の趣味の発表会やない。
自分の仕事や趣味という生身の輪郭を、お前という鏡がどう映してくれるか、それを見て『自分』を確認したいんや。
お前が余計なノイズを入れずに『どんな音楽を聞きに行かれるんですか?』とだけ綺麗に問い返してやれば、女は『あ、この鏡は私をちゃんと映してくれる』と安心して、自分から生身の言葉で喋り出すんや」
拓也はゴクリと唾を飲み込んだ。
ひややっこの言葉は、巷の薄っぺらい恋愛テクニックを遥かに凌駕する、歪なシステムの構造を逆手に取ったハッキング論だった。
「じゃあ、ひややっこさん……そうやって鏡になって問いかけて、もし相手から『私は休みの日に、クラシックのコンサートに行くのが好きなんです』って返ってきたら……そこからどうすればいいんですか?」
ひややっこは満足そうに深く頷き、言葉を繋いだ。
「そこや。そこで初めて、お前自身の内面を公開するんや。
ここはな、見栄を張らずに、本当の自分の正直な姿でええ。
たとえば『へえ、そうなんですね。僕はアニメの楽曲やゲームの楽曲が好きで、普段はイヤホンで聴いたり、たまにそういうライブに行ったり、家でYouTubeで聴くのが好きなんです』とな。
自分のリアルな輪郭を、はっきりと真っ直ぐ相手に伝えるんや」




