おまけ:『500万の鎧を脱ぎ捨てた夜 〜深夜二時の大岩山で、システムにハックされた魂を完全救済(ロスカット)してやった〜』2
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の寺社、教会、特定の宗教団体、結婚相談所、およびマッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の信仰や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。
ひややっこは、ゆっくりと拓也の前に歩みを進めると、どすっと地響きを立てるような低い声で吐き捨てた。
「500万のロスカット(損切り)か。えげつない鎧を着せられたな、お前」
「……っ」
「勘違いするな。お前が買ったのは『マニュアル』やない。あいつらが六本木でシャンパン飲むための『お布施』や。お前が歯を食いしばってダブルワークのバイトで命を削っとる間、あいつらはお前の血金で肥え太ってたんやぞ。だがな、拓也。お前が本当に絶望してるんは、500万を失ったことやない。500万かけて『自分以外の誰か』に変装しても、誰も中身のお前(生身の人間)を見てくれんかったこと……それが一番、凍えるほど寒かったんやろ」
その言葉は、冷徹でありながら、かつて47歳まで同じように深夜勤を続け、世間の自己責任論に押し潰されそうになっていたひややっこ自身の「血の記憶」そのものだった。
拓也の傷を、ひややっこは完全に「自分ごと」として捉えていた。
「ひややっこさん……俺、どうすれば……もう死ぬしか……」
「ガタガタ抜かすな。死ぬ度胸があるなら、その前に社会のシステムをハックし返せ」
ひややっこはアローズのジャケットの襟をバシッと立て、拓也の眼前に指を突きつけた。
「まず、その払ってしもた500万や。今すぐスマホを取り出して、消費者ホットライン『188』へ電話しろ。消費者生活センターへ駆け込むんや。あいつらはな、法律のグレーゾーンという名の結界の中で商売しとる。払ってしもた金を完璧に回収できると思うなよ。だが、『これを買えば100%確実に美女と付き合える』という不実告知(嘘の説明)や、クレカを無理やり切らせた困惑行為のログが残っとるなら、契約取消を主張して毟り取れる可能性はゼロやない。これ以上あいつらに1円たりとも『追証』を払うな。授業料として完全損切りするか、泥沼の戦いをするか、お前がケジメをつけて選べ」
「消費生活センター……そんなところに、俺みたいな相談をしてもいいんですか……?」
「当たり前や。お前は被害者や。堂々と声を大にして訴えろ」ひややっこはフッと冷たい笑みを浮かべ、さらに言葉を続けた。
「それから、お前が血眼になって縋ろうとしとる、そのペニス増大クリニックの話や。
耳かっぽじってよく聞け。
あいつらの言う『切らずに永久肥大化』なんてな、まともな医学的検証結果は一度も出とらん。ただの詐欺や。
ヒアルロン酸やら何やらの異物を亀頭に注入して、一時的に大きく見せることはできてもな、そんなもんはいつかは体内に吸収されて元に戻るか、最悪の場合は注入物が中で移動してペニスがいびつに変形するだけや。
下手をすれば血流が止まって組織が壊死するリスクすらある。若者の不安と劣等感をあえて煽り、脳をバグらせて金を毟り取るただの集金トラップや。そんな記号の呪いにこれ以上1円もドブに捨てるな」




