番外編33:生存データ(水)の調達システムが招いた完璧なドミノ倒し 〜羞恥と経血に濡れたワンピースをロックオンする狂気のレーダー、そして窓なき密室で執行される歪んだ救済ロジック(ノアの方舟)〜4
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の寺社、教会、特定の宗教団体、結婚相談所、およびマッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の信仰や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。
「ひっ……う、あ、あ……っ……!」
少女の脳内プロセッサが強制再起動(覚醒)したとき、彼女の視界をジャックしたのは、世界から完全に切り離された圧倒的な暗がりだった。
コンクリートの壁に囲まれた、どこかも分からない無機質な小屋のような密室。窓はすべて分厚い木板で塞がれ、外の略奪の声も、死体の腐敗臭という自然界のリアルな分解システム(ファクト)のノイズも、ここには一切届かない。
ただ、自身のガチガチと震える歯の音と、荒い呼吸音だけが、不気味な静寂の中に響いていた。
ガチャリ、と重苦しいドアのロックが解除される。
「あぁ、目が覚めたんだね。よかった。生体データのバイタルも安定しているようだ」
暗がりの向こうから、血の匂いと冷徹な悦びをまとった狗飼幽二が静かに帰ってきた。
恐怖に震え、涙を流して壁際に身をすくめる少女を見つめる彼の瞳には、完全にシリアルキラーへと調教された狂気の神の輝きが宿っていた。
「怖がる必要は一ミリもないよ。あの外の世界を見てごらん。誰もが他人の嘘や本音ログに泡を吹いて殺し合う、市場価値ゼロの荒野(地獄)だ。昨日まで君を崇めていたあのおばちゃんたちだって、あと数日すれば、飢えに負けて君の肉を食い破る狂暴な獣に変貌する。生身の人間なんて、そういう醜いノイズで満ち溢れているんだ」
狗飼は、まるで壊れやすい高級な美術品を愛でるような手つきで、少女の頬にそっと冷たい指先を這わせる。
その異常な温度に、少女は声にならない悲鳴をあげて身を縮めた。
「だけど、僕たちの防衛線は完璧に死守された。この狂った世界で、今や君と僕は二人きりなんだから。確信したよ。人類が社会性と呼んでいた建前が完全に焼き切れ、すべてが更地になったあのウイルスの崩壊は、神がこの僕に与えてくれた完璧な『エデン(楽園)』だったんだ」
狗飼はポケットから、鈍い光を放つカミソリをゆっくりと取り出した。
その刃を、先ほど路地裏で少女自身が経血で汚していた、あのワンピースの下の、細く瑞々しい首筋にピタリとあてがう。「君はとても美しい。お淑やかで、清楚で、無償の誠実さを持っている。だからこそ、その美しい祈りのポーズのまま、僕の手で『永遠に嘘をつかない完璧な物質(死体)』へとロスカット(処分)してあげなきゃけない。生理の血や、新世界の泥、そして排泄という生身のノイズにこれ以上塗れて汚される前に、僕が救ってあげる。……この場所こそが、汚物どものエゴから君の純粋さを隔離した、僕たちの『ノアの箱舟』なんだよ……」
「いや……嫌ぁぁぁぁっ!!」
少女の絶叫が、窓のない密室に虚しくこだまする。歪んだ救世主気取りの男の笑い声と、カミソリの冷たい感触が、新世界の夜の深淵へと静かに溶けていく。
番外編34へ続く




